原始宇宙はブラックホールで過熱状態
ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 10月12日(火)18時40分配信
いまから117億〜113億年前、中心に超大質量ブラックホールを備える巨大な銀河「クエーサー」から放出された紫外線によって、宇宙空間のヘリウム原子から電子が分離したという。ちなみに、私たちの住む宇宙を生み出したビッグバンが発生したのは、およそ137億年前のことである。
“イオン化”と呼ぶ電子が分離する作用により、ヘリウムガスは摂氏1万〜2万2000度に熱せられる。熱いガスは、冷たいガスよりも早く動く。そのため、熱せられたヘリウムはスピードを増し、矮小銀河の重力ではつかまえることができなくなった。ヘリウムは、水素に次いで宇宙で2番目に多く存在する原子で、星形成の主要成分の1つである。
研究チームのリーダーでコロラド大学ボルダー校のマイケル・シャル氏は、「したがってその時代、矮小銀河は十分な“食事”を取ることができなかった」と話す。
シャル氏の研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡の助けを借りて、はるか遠方にある約110億年前のクエーサーが放出した紫外線の特定波長を検出した。これよりも遠く、したがって古いクエーサーの場合、放出する光にこの波長は含まれない。中性ヘリウムや荷電粒子の単一イオンヘリウムによって吸収されるためだ。単一イオンヘリウムは、中性ヘリウムが電子を1つ失って生まれる。
ヘリウムガスがその波長の紫外線を通すのは、二重イオン化した時のみである。よって、紫外線が届くようになった時期が判明すれば、ヘリウムが二重イオン化した時代の開始年代を特定できるというわけだ。
過熱時代からおよそ5億年後、クエーサー内のイオン化ヘリウムはかなり熱が下がり、スピードが遅くなった。その結果、矮小銀河は再び成長できるようになった。シャル氏は、「矮小銀河の多くは核部分だけで何とか持ちこたえていた。再びガスを取り込み始めるには、ヘリウムの温度が下がる時代が来るまで待たなくてはならなかった」と説明する。
シャル氏によると、同様の現象は、私たちの住む太陽系の惑星でも起きているのだという。木星や土星などの巨大ガス惑星は、太陽に熱せられた水素原子やヘリウム原子をつかまえるだけの十分な質量を持っている。一方、地球のような質量の小さい惑星は、既に軽元素をすべて失っている。
「例えば地球の大気には、ヘリウムや水素はごくわずかしか残っていない。放射性崩壊などの作用によって生まれた軽元素のガスは、地球から宇宙へとすぐに拡散してしまったからだ」とシャル氏は話す。
今回の研究成果は、「The Astrophysical Journal」誌の2010年10月20日号に掲載されている。
Ker Than for National Geographic News
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最終更新:10月12日(火)18時40分