東京中日スポーツ 55周年企画
55周年イヤーの記念事業や紙面企画をご紹介します
トップ > 中日スポーツ > 大リーグ > 紙面から一覧 > 記事
【大リーグ】コックス監督、崖っぷち 斎藤は緊急復帰2010年10月12日 紙面から 今季限りで勇退のブレーブスのボビー・コックス監督(69)ががけっぷちに立たされた。10日(日本時間11日)、ナ・リーグ地区シリーズ第3戦2試合が行われ、ジャイアンツ(西地区1位)がブレーブス(ワイルドカード=WC)に3−2で快勝。ジ軍が地区シリーズ突破に王手をかけ、守乱で敗れたブ軍は斎藤隆投手(40)が緊急登録されたが、チームは後がなくなった。もう1試合はフィリーズ(東1位)がレッズ(中1位)に2−0で勝ち、スイープでリーグ優勝決定シリーズ進出が決定。ア・リーグはレイズ(東1位)がレンジャーズ(西1位)に5−2で勝ち、2勝2敗の五分とした。 69歳の老将が怒りを必死に抑え込む。本拠地で手痛い2敗目。がけっぷちに追い込まれたコックス監督は必死にしわがれ声を絞り出した。「われわれは最強のチームではないが、どの相手でも勝つことはできる。だがミスをしては無理だ」 まさに天国から地獄に突き落とされた。1点ビハインドの8回1死一塁から、ヒンスキーが逆転2ラン。これまでため息ばかりだった5万3284人の大観衆のボルテージは最高潮に達した。 しかし、直後の9回に予期せぬ悪夢だ。ワグナー不在のため継投策で逃げ切りを図ったが、ハフに同点適時打を献上。さらに、2死一、二塁から二塁手のコンラドが痛恨のトンネル…。勝ち越し点を献上し、大きなブーイングが起こった。「ひどい気分。非常に残念だし、穴があったら入りたい」。初回の失策に続き2回にも小フライを落球して先制点を許したコンラドは、これでポストシーズン球団初の3失策。地区シリーズ計4失策はメジャーワースト記録だ。「みんなを落胆させてしまった」。蚊の鳴くような声の30歳は失意の中、球場を後にするしかなかった。 序盤で2失策のコンラドに代えて守備固めを起用せず9回の継投策も失敗。報道陣から采配(さいはい)に疑問符をつけられたコックス監督は「われわれは勝つつもりでやっているんだ!」と語気を強めた。明日は中3日でローを先発に起用。負ければ監督人生最後の試合となる一戦…。監督生活29年目で勇退を迎える希代の名将が、悔いを残すことなく全力でタクトをふるう。 (阿部太郎) 待望の登録の喜びは微塵(みじん)もなかった。斎藤は同僚のワグナーが第2戦で左わき腹を痛め、その穴埋めとしての緊急復帰。練習の30分前に投手コーチから出場登録の報告を受けた斎藤は「こんな結果になって残念…」と友人でもあるワグナーを気遣った。 前日は、オーランドでマイナーリーグ相手に調整登板。9月半ばに右肩を痛めてから、公式戦は1試合しか登板していなかったが「全く投げていない状況よりはるかにいい」と現状は上向きつつある。この日の練習中、ワグナーに声をかけられた。「練習中に『サイトウ来い』っていうんで『用があるならお前が来い』って言った(笑)。痛いから動けないと言われて、なるほど…と思って。それでいろいろ話した」。冗談を交えて話した斎藤だが、その胸中はワグナーのために−という思いは強い。 この日は最後まで登板がなし。第4戦に負ければ、シーズンが終わってしまう。「(登板したら)今できることを精いっぱいやろうと思う」。不惑の右腕がワグナーのため、そしてチームのため入念な準備を整え、その時を待つ。
|