日本兵の骨だと証明するはずの
「宣誓供述書」の実体
「宣誓供述書」はどのように書かれているのか。追跡チームは、再び隣村を訪ねた。空援隊から2万4000ペソを受け取った男性に「宣誓供述書」について聞いたところ、意外な答えが返ってきた。
「私は宣誓供述書なんて書いていません。書いたのは村長です。骨を山で見つけたのか、洞窟で見つけたのかなど、詳しいことは説明していませんけど」
「じゃあ見つけた場所は言っていないの?」
「言ってない」
この村では全ての宣誓供述書を村長が1人で書いているのだという。当初、多忙であることを理由に取材を拒否していた村長だったが、ようやく話を聞かせてくれることになった。
「確かに宣誓供述書に『日本人の骨だ』と書いたのは私です」
なぜ「日本人の骨」と言えるのかと問うと、じょじょに本心を口にし始めた。
「宣誓供述書って言ったって、その骨がどこの何の骨なのか私には確認しようがない。私にそれをチェックすることなんて無理だ」
「それでは、宣誓供述書は意味がないじゃないか」
「だって怒られるんだよ。みんな遠いところから大変な思いをして骨を持ってくるんだから。供述書を書かないといったら、私が怒られるよ」
空援隊からお金が支払われるのは、宣誓供述書に「日本人の骨」と書かれた場合だけだという。 村長は遺骨の発見状況などを確認することもなく、これまでに2000もの遺骨を「日本人の遺骨」として提出した。
形ばかりの専門家鑑定。
遺骨収集のずさんさが顕わに
空援隊への委託後、激増するフィリピンからの遺骨収集。記録に残された戦没者の数と、大きく食い違う事態も起こりはじめている。
フィリピン中部のミンドロ島。一昨年はゼロだった遺骨の数が、去年、一気に1366体に跳ね上がった。しかし、国が戦史や生還者の証言をもとにまとめた資料では、ミンドロ島での戦没者は「438人」と推定されている。なぜ国の記録の3倍以上の遺骨が日本に送還されているのか。実はこの島でも遺骨の盗難が続発している。今年6月には、墓から遺骨を運び出だそうとした男3人が捕まった。私たちはその公開尋問の映像を手に入れた。
村人:「おまえがやったんだろ! おまえを許さないぞ」
容疑者:「俺以外にもやっている奴がいるだろう!!」
村人:「四の五の言うな!」
容疑者の男は、「ある人物が日本兵の遺骨を買い集めている」という噂を聞いて、盗難に加わったという。取材班はその人物を3日間捜し続けた末に、ついに接触に成功した。その男は、私たちに1枚のカードを差し出した。カードには「KUENTAI」と書かれていた。それは空援隊スタッフが携帯するIDカード。この島で行なわれる遺骨収集の責任者の1人だった。
追跡チーム:「去年と今年で遺骨をどれくらい集めたのですか?」
空援隊の男:「ミンドロだけで数千かな」
追跡チーム:「日本政府はミンドロ島での戦没者はおよそ450人と推定しているが、あなたが集めた数と食い違うじゃないですか?」