盗まれた遺骨が「日本のグループ」に渡っているというのは本当なのか。車で1時間かけて隣村まで行ってみることにした。丸一日聞き込みをしたが、遺骨を盗んだ人物を見つけることはできなかった。しかし、遺骨を日本のグループに渡してお金を得たという男性に出会うことができた。
男性は去年、「空援隊」という日本のグループが「日本兵の遺骨」を集めていることを知った。「遺骨を見つけるとお金をくれる」という。男性はすぐに、山中で骨を探し、「空援隊」のもとに持っていった。骨を見つけたのは、日本兵とフィリピン人の遺骨が混じって放置されている洞窟。以前、祖父に聞かされていた場所だった。
「『全てが日本人のものかどうかわからない』と伝えましたが、彼らは何も聞かずに『1、2、3…』と骨の数を数え始めたのです。そして『48体』という結果が出て、1つもはじかれませんでした。つまり、『すべて日本人の骨』ということになったんです」
男性は、「労賃」という名目で空援隊から遺骨1体あたり500ペソ、計2万4000ペソを手に入れた。日本円にしておよそ5万円。年収の半分に相当する大金だった。
遺骨収集に携わる
民間団体の正体は?
フィリピンでの現地取材から浮かび上がってきた「空援隊」とは一体何者なのか。それは、フィリピンで活動するNPO法人。去年、国から遺骨収集事業を全面委託されていた団体だった。
そもそも国は、なぜ遺骨収集事業を民間団体に委託したのか――。
もともと国は、昭和27年から、戦友会など戦争体験者とともに直接現場に出向いて、遺骨収集を行ってきた。しかし、関係者の高齢化とともに情報が集まらなくなり、収集される「遺骨」が減少。海外に残される114万もの遺骨をどうするのか、大きな課題となっていた。そこで、事業を主管する厚生労働省がその打開策として考えたのが、現地の事情に詳しい民間団体への委託だった。
委託を受けた「空援隊」は、これまでとは全く違う収集方法を取り入れた。まずフィリピン各地に支部を設置。現地のフィリピン人に協力を求め、遺骨を収集してもらう。そして、骨とひきかえに「労賃」としてお金を渡すことにしたのだ。平成18年度に45まで減った収集数は、昨年度には7740にまで激増。この実績が認められ、空援隊への委託費は今年度4700万円に倍増した。
われわれ追跡チームがフィリピンに入って4日目。その空援隊とワンワン村で遭遇した。彼らは地元住民に、日本兵の遺骨収集への協力を呼びかけるために来たという。空援隊と住民との会合では、村民から「盗まれた遺骨が空援隊に渡っている」という非難の声が相次いだ。
村人:「骨を遺族に無断で勝手に持ち出すのは犯罪です。この問題を解決すべきだ」
空援隊のスタッフは、自分たちはあくまで潔癖だと主張する。
空援隊:「私たちが疑われているのは知っています。でも私たちだと決めつけないでください」
それでも村人の疑問は解けない。
村人:「一つだけ質問させてください。集めた骨を(フィリピン人のものではないと)どうやって判別するのですか?」
空援隊:「みなさんからいただいた宣誓供述書。それに基づいてやっています」
空援隊は、日本人の骨だとする根拠は「宣誓供述書」だと主張した。遺骨発見者の供述を基に、発見された場所や状況など、「日本兵の骨」と認められる理由が書かれているという。