児童ポルノや違法薬物の売買などインターネット利用した犯罪の増加に対応するため、警察庁は30日、ネット上の違法情報について、警視庁がサイト管理者に照会して発信場所を特定した後、警察庁を通じて各道府県警察に情報提供する「全国協働捜査方式」を10月から試験的に導入すると発表した。“犯行場所”を特定しにくいサイバー犯罪の捜査を効率化し、取締り強化を図る。
新方式で対応するのは、ネット上の違法・有害情報を受け付けている「インターネット・ホットラインセンター」(IHC)から通報された違法情報。これまでは警察庁を通じ、すべての情報が各都道府県警に提供されていた。
しかし、この段階で発信地は特定されておらず、捜査すべき都道府県警察や優先順位も判然としない状態だった。さらに、ネット接続業者やサイト管理者への発信地の照会も手間がかかるため、迅速に処理されないケースがあったという。
こうした実態を踏まえ、警察庁は情報提供方法を抜本的に見直し。大手の接続業者の大半が東京にあることやサイバー犯罪の捜査態勢を考慮し、発信地の照会作業を警視庁に一元化。警察庁が各都道府県警に振り分ける方式を採用することにした。
この後、各警察が強制捜査などで容疑者を特定して摘発。捜査結果を警察庁に報告させることで処理の迅速化を促す。警察庁は新方式を確立するため、平成23年度予算の概算要求に地方警察官350人の増員を盛り込んでいる。
IHCは警察庁の業務委託を受け、違法・有害情報の受け付けのほかサイト管理者などへの削除依頼を行っている。今年上半期に警察庁に通報した違法情報は12142件で、通報をもとに検挙した事件は226件にとどまっている。
[産経新聞社]