ES細胞:初の臨床試験 米企業、脊髄損傷の患者に

2010年10月12日 11時13分 更新:10月12日 15時3分

 米バイオ企業ジェロン社は11日、さまざまな組織に成長する胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使った世界で初めての臨床試験を、脊髄(せきずい)損傷の患者に対して米国内で始めたと発表した。

 ES細胞は再生医療への応用が期待され、山中伸弥京都大教授らが開発した人工多能性幹細胞(iPS細胞)とともに各国で研究が進められている。同社は、不妊治療で使われなかった受精卵から作ったES細胞を利用。米食品医薬品局(FDA)から臨床試験を承認されていた。

 同社によると、試験の対象は脊髄を損傷してから14日以内の患者。ES細胞から分化させた、神経を保護する軸索という組織になる細胞を投与し、損傷した神経を保護して機能を回復させる。

 今回は治療の安全性を確認する第1相試験で、米南部ジョージア州アトランタの病院で実施。さらに、イリノイ州シカゴの別の病院でも患者の登録を受け付けている。

 AP通信によると、全米で8~10人の患者が対象で、各患者で1年間、全体で2年間にわたって安全性を確認し、その後は治療の有効性を調べる次の段階に移る。

 同社は「患者への試験実施は数十年かかると予測されてきた。今回の試験は、ヒトES細胞治療の分野で画期的な出来事だ」としている。

 ES細胞は受精卵を壊して作成するため、キリスト教右派などから「倫理的ではない」として、世界的に論争の種になってきた。米国ではオバマ政権の発足により、研究に対する公的助成が認められた。(共同)

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