【社説】衰弱した金総書記と未熟な息子、核の行方は?

 10日に平壌で開催された朝鮮労働党創設65周年記念閲兵式に姿を現した金正日(キム・ジョンイル)総書記は、手すりをつかみながらもまっすぐに歩けないほどやつれ、弱り切っていた。北朝鮮メディアはこれまで、若い金正恩(キム・ジョンウン)氏の姿を徹底して隠していた。しかし北朝鮮は、この日の行事を1時間48分という異例の長さでテレビ中継した。米国のCNNや英国のBBC、カタールのアルジャジーラなど海外の主要メディアにも取材を許可し、80人以上の記者が兵士たちのすぐ横に陣取った。金総書記の弱り切った姿が公開されるというリスクをも甘受したのだ。北朝鮮体制で絶対権力者のやつれた姿を示すのは、普段なら想像もできないことだ。ところが北朝鮮はこの行事に外信記者たちを呼び寄せ、テレビで生中継まで行った。その理由は何か。

 北朝鮮は先月27日、金総書記の三男・正恩氏に朝鮮人民軍大将の称号を与えるなど、三代世襲に向けた作業を急ピッチで進めている。正恩氏はこの日、中国共産党で権力序列第9位の周永康・政治局常務委員らと共に、貴賓席に当たる主席壇に座って閲兵式の様子を見守った。この行事は、正恩氏が朝鮮人民軍大将となってから13日後に行われたもので、権力世襲を公式に宣布する舞台でもあった。ちなみに金総書記は、1964年に朝鮮労働党の役職に就き、それから16年の「熟成期間」を経て、1980年に後継者として公式に指名された。

 この日の時点で27歳の正恩氏が、74歳の金永春(キム・ヨンチュン)人民武力部長に何かを尋ね、金部長がそれに腰をかがめて説明する場面も、テレビに映し出された。北朝鮮憲法第11条には、「朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮労働党の領導の下であらゆる活動を行う」と明記されている。しかし正恩氏は父とは異なり、朝鮮労働党を飛び越して一気に軍の大将という称号を得ることによって、権力世襲作業をスタートさせた。正恩氏には、朝鮮労働党を通過する時間的な余裕さえなかったようだ。金総書記が息子に後継者としての教育を行えないままこの世を去ってしまえば、北朝鮮はどのような方向に流れてしまうのか、誰にも分からない。

 北朝鮮は今回の閲兵式で、射程距離3000キロから4000キロとされる新型中距離弾道ミサイル(IRBM)「ムスダン」を初めて公開した。このミサイルは、太平洋にあるグアムの米軍基地なども直接狙うことができる。韓半島(朝鮮半島)全域を射程圏に置くKN-02短距離ミサイルやスカッド、ノドンミサイルも姿を現した。米科学国際安保研究所(ISIS)は8日、「北朝鮮は高濃縮ウランによる核兵器開発を、プルトニウム方式による従来の核兵器とは別に進めているが、現時点では実験室での研究レベルを超えている」と説明した。

 衰弱した金総書記と、政治的に未熟な27歳の正恩氏、そして韓国の哨戒艦「天安」攻撃を主導した好戦的北朝鮮軍部の前に、核兵器や1000発以上のミサイルといった大量破壊兵器が高く積み上げられている。北朝鮮内部で急変事態が発生し、何者かがこれらの兵器を手にするようなことになれば、それは南北だけの問題ではなく、東アジア全体にとって大きな災いとなる。これに対する回答を探し求めることは、大韓民国の運命が懸かった非常に重大な問題だ。大韓民国は金総書記の長寿を望むわけにはいかないはずだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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