多結晶半導体の製造方法および製造装置
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- 【要約】
【目的】 太陽電池用の多結晶シリコン薄膜を効率的に製造し、また大面積化を容易にする。
【構成】 基板1上に成膜されたアモルファス薄膜4に、ランプ光源15から発せられて集光反射鏡16および集光レンズ18によって集光された熱線15aを照射するとともに、走査系機構12によって熱線15aと基板1とを相対的に移動させる。
【効果】 基板の高温加熱を必要とすることなく効率的にアモルファス薄膜を加熱して多結晶化することができ、大面積化も熱線の走査により容易である。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 ランプ熱源から発せられた熱線を集光反射鏡で反射させた後、さらに集光レンズで集光してアモルファス薄膜の表面に照射するとともに、集光熱線とアモルファス薄膜とを相対的に移動させてアモルファス薄膜を多結晶化することを特徴とする多結晶半導体の製造方法【請求項2】 ランプ熱源から発生した熱線は、200〜800nmの波長域に強度ピークがあり、該ピークの相対強度を10として、200〜400nmの波長域と400〜600nmの波長域にそれぞれ相対強度3以上の波長分布を有することを特徴とする請求項1に記載の多結晶半導体の製造方法【請求項3】 金属基板上に金属基板との濡れ性がよい中間層が形成され、該中間層上に上層への不純物の混入を防止するバッファ層が形成され、該バッファ層上に多結晶化するアモルファス薄膜が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の多結晶半導体の製造方法【請求項4】 中間層とバッファ層との間に、応力緩和用中間層が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の多結晶半導体の製造方法【請求項5】 中間層がSiO2膜、バッファ層がSi3N4膜からなり、多結晶化するアモルファスがアモルファスシリコンであることを特徴とする請求項3または4に記載の多結晶半導体の製造方法【請求項6】 アモルファス薄膜を多結晶化した後、金属基板側から所定のパターンに従って、金属基板と、多結晶された上記薄膜を除いた層とを一度にまたは複数の処理によって除去し、該除去部分に、多結晶薄膜と金属基板とを導通させる導電材を付着させることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の多結晶半導体の製造方法【請求項7】 アモルファス薄膜が形成された基板を収容するチャンバと、該チャンバ外に配置されたランプ光源と、ランプ光源から発せられた光を集光して反射する集光反射鏡と、集光反射鏡で集光、反射された熱線をさらに集光してチャンバ内の上記アモルファス薄膜に照射する集光レンズと、熱線の照射中に熱線と基板とを相対的に移動させる走査系機構とを有することを特徴とする多結晶半導体の製造装置【請求項8】 ランプ光源の駆動回路が、コンデンサを含むパルス出力回路であることを特徴とする請求項7記載の多結晶半導体の製造装置【請求項9】 熱源用ランプは、放電管ランプであることを特徴とする請求項7または8に記載の多結晶半導体の製造装置【請求項10】 放電管ランプは、キセノンランプまたは水銀ランプからなることを特徴とする請求項9記載の多結晶半導体の製造装置
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、太陽電池に用いられるシリコン等の多結晶半導体を効率よく製造するための多結晶半導体の製造方法および製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】太陽電池は、クリーンな太陽エネルギを利用した発電システムの一つとして着目されており、その実用化が徐々に図られている。但し、その効率や経済性は十分とはいえないため、さらにこれらを改善するための研究が進められている。これを材料の面から見ると、太陽電池用の材料に結晶化合物を使用する例もあるが、大部分においては安価で入手が容易なシリコンが用いられている。このシリコンには、単結晶、多結晶またはアモルファスの形態のものがそれぞれ開発されているが、最近では、効率がよくて生産性に優れた多結晶薄膜シリコンが着目されている。
【0003】上記多結晶薄膜シリコンの製造方法としてはいくつかの方法が提案されており、その一つとして、電磁キャスト法や連続キャスト法等により得られた多結晶シリコンインゴットをスライス切断して薄膜を得る方法がある。また、この他に、CVD法等によって基板上に結晶薄膜を形成する方法がある。なお、CVD法により得られる結晶は結晶粒が小さく、太陽電池としては効率が悪いため、得られた結晶をさらに基板とともに800〜1300℃程度の高温に加熱するとともに反射鏡で集光した多数のランプ熱線やヒータ等で表面部を一様に加熱して結晶シリコンを溶融再結晶化させ、これによって粒径の大きな多結晶薄膜シリコンを得る方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の多結晶薄膜シリコンの製造方法のうち、インゴットをスライスする方法では、インゴット作成時の熱損失が大きくてエネルギ効率が悪く、また薄膜面積がインゴット断面積により制限されるため大面積化が困難であるという問題がある。さらに、スライス加工の際に再生不可能な切り屑が多量に発生するため歩留まりが悪いという問題もある。また、従来の溶融再結晶化方法では、基板を高温に加熱する必要があるため、基板として耐熱性に優れた高価なものを使用する必要があり、またエネルギコストが非常に大きいという問題点がある。また薄膜の大面積化に際しては、基板加熱装置を一層大型化する必要があり、装置費が嵩む他に、加熱装置によって薄膜面積が制約されるという問題もある。
【0005】本発明は上記事情を背景としてなされたものであり、製造時のエネルギ効率を高めるとともに、製造する薄膜の大面積化を容易にする多結晶半導体の製造方法および装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明の多結晶半導体の製造方法のうち、第1の発明は、ランプ熱源から発せられた熱線を集光反射鏡で反射させた後、さらに集光レンズで集光してアモルファス薄膜の表面に照射するとともに、集光熱線とアモルファス薄膜とを相対的に移動させてアモルファス薄膜を多結晶化することを特徴とする。
【0007】第2の発明の多結晶半導体の製造方法は、第1の発明において、ランプ熱源から発生した熱線が、200〜800nmの波長域に強度ピークがあり、該ピークの相対強度を10として、200〜400nmの波長域と400〜600nmの波長域にそれぞれ相対強度3以上の波長分布を有することを特徴とする。
【0008】第3の発明の多結晶半導体の製造方法は、第1または第2の発明において、金属基板上に金属基板との濡れ性がよい中間層が形成され、該中間層上に上層への不純物の混入を防止するバッファ層が形成され、該バッファ層上に多結晶化するアモルファス薄膜が形成されていることを特徴とする。第4の発明の多結晶半導体の製造方法は、第3の発明において、中間層とバッファ層との間に、応力緩和用中間層が形成されていることを特徴とする。第5の発明の多結晶半導体の製造方法は、第3または第4の発明において、中間層がSiO2膜、バッファ層がSi3N4膜からなり、多結晶化するアモルファスがアモルファスシリコンであることを特徴とする。
【0009】第6の発明の多結晶半導体の製造方法は、第3〜第5の発明において、アモルファス薄膜を多結晶化した後、金属基板側から所定のパターンに従って、金属基板と、多結晶された上記薄膜を除いた層とを一度にまたは複数の処理によって除去し、該除去部分に、多結晶薄膜と金属基板とを導通させる導電材を付着させることを特徴とする。
【0010】さらに、第7の発明の多結晶半導体の製造装置は、アモルファス薄膜が形成された基板を収容するチャンバと、該チャンバ外に配置されたランプ光源と、ランプ光源から発せられた熱線を集光して反射する集光反射鏡と、集光反射鏡で集光、反射された熱線をさらに集光してチャンバ内の上記アモルファス薄膜に照射する集光レンズと、熱線の照射中に熱線と基板とを相対的に移動させる走査系機構とを有することを特徴とする。
【0011】第8の発明の多結晶半導体の製造装置は、第7の発明において、ランプ光源の駆動回路が、コンデンサを含むパルス出力回路であることを特徴とする。第9の発明の多結晶半導体の製造装置は、第7または第8の発明において、熱源用ランプが、放電管ランプであることを特徴とする。第10の発明の多結晶半導体の製造装置は、第9の発明において、放電管ランプが、キセノンランプまたは水銀ランプからなることを特徴とする。
【0012】本発明は、従来の技術および発明が解決しようとする課題の欄で説明したように、太陽電池に用いる多結晶薄膜シリコンの製造に好適なものであるが、この用途に限定されるものではなく、他の用途を目的として多結晶半導体を形成するものであってもよい。また、使用目途等によっては、材料にシリコン以外のものを使用するものであってもよく、要は、十分に大きな結晶粒径を有する各種材料の多結晶半導体を必要とする場合に適用可能である。
【0013】本発明で処理対象となるアモルファス薄膜は、CVD等において低温成膜することにより得ることができるため、低いエネルギコストにより作成することができる。なお、その成膜方法や膜厚等は本発明として特に限定されるものではない。また、多結晶化するアモルファス薄膜の形成に際しては、第3の発明に示すように金属基板上に順次、金属基板との濡れ性がよい中間層(SiO2膜等)、金属基板からの不純物の混入を阻止するバッファ層(Si3N4膜等)を形成し、そのバッファ層上にアモルファス薄膜を形成するのが望ましい。
【0014】上記アモルファス薄膜多結晶化する製造過程においてシリコンの融点より高い安価なマルテンサイト系ステンレス鋼等を用いることができる。しかも、この金属基板にステンレス鋼のように導電性のよい材料を使用すれば、第6の発明に示すように金属基板を裏面電極材として使用することができる。そして上記中間層は、金属基板との付着性がよく、この層の介在により安定した薄膜を上層に形成することができる。ところが、この中間層上に直接アモルファス膜を成膜すると、成膜や多結晶化の際の加熱によって酸素等の不純物がアモルファス薄膜中に拡散浸透して該薄膜を汚染するという問題がある。そこで、加熱時にも安定なバッファ層(例えばSi3N4膜)を介してアモルファス薄膜を形成するのが望ましく、これにより加熱時に下層からの拡散によって該薄膜が汚染されるのを防止することができる。なお、バッファ層においてパッシベーション効果を高めるために、例えばSi3N4に水素を添加したものを用いることも可能である。
【0015】上記アモルファス薄膜に照射して多結晶化する光の発生源としてはランプ光源を用いる。ランプ熱源は、高いエネルギ効率を有しており、アモルファス薄膜を効率よく多結晶化するのに適しており、さらにエネルギ効率の点からランプとして放電管を用いるのが望ましい。なお、アモルファス膜は、200〜400nmの波長域で高い熱吸収率を有しており、ランプ熱源としては、この波長域で高い相対強度を有する熱線を発するものが望ましい。また、本発明では、基板の加熱を不要にするか、従来の溶融再結晶化法に比べ相当程度低いプロセス温度にすることを目的としており、アモルファス薄膜全体の高温加熱が期待されないため、熱線だけでアモルファス膜の深さ方向にも十分な加熱作用を加える必要がある。このため、深部への加熱作用が大きい400〜600nmの波長域でも高い相対強度を有する熱線が望ましい。上記波長分布を数値で示すと、200〜800nmの波長域に強度ピークがあり、該ピークの相対強度を10として、200〜400nmの波長域と400〜600nmの波長域にそれぞれ相対強度3以上の波長分布を有するものとして示すことができる。
【0016】これらの要求を満たす熱線を発する熱源としては、キセノンランプまたは水銀ランプを挙げることができる。キセノンランプは、放電発光であるため大出力が可能であり、また図8に示すように450nm付近に鋭いピークを持つとともに、広い波長領域において比較的高い放射強度を有しており、このキセノンランプ光を十分に集光させることによりアモルファス膜を十分な深さ(例えば10μm以上)にまで溶融させて、これを多結晶化させることができる。また、水銀ランプは水銀蒸気圧力を変化させることにより放射強度のピークとプロファイルが大きく変化することが知られている。したがって、これらを適切に設定することにより、アモルファス膜を効率的に加熱することができる。なお、上記光源の駆動では、コンデンサを含むパルス出力回路を駆動回路とするのが望ましい。このパルス光をアモルファス膜に照射すれば、連続光に比べて相当に高い効率でアモルファス膜を加熱することができる。
【0017】上記ランプ熱源から発せされた熱線は、先ず集光反射鏡により集光される。集光反射鏡には、通常は凹面鏡が使用される。凹面鏡は、球面鏡、非球面鏡を問わないものであり、非球面鏡としては放物面鏡、楕円面鏡を挙げることができる。これら反射鏡は、熱線をスポット状に集光する場合には回転体形状のものを使用し、線状に集光する場合には、上記断面形状(円形、放物面、楕円面等)を有する長尺体形状のものを使用できる。なお、集光反射鏡による集光の程度は、後に使用される集光レンズとの組み合わせにより決定される。集光レンズは、反射鏡に合わせて回転体形状や長尺形状のものを使用することができる。また、集光レンズは、1枚の他、複数枚で構成されていてもよく、またレンズ同士を接合したものを用いることもできる。なお、集光レンズは、高温の熱線が透過するため耐熱性に優れていることが必要であり、フッ化カルシウム等の適宜の材料を使用する。なお、ランプ熱源からアモルファス薄膜に至る間には、上記集光反射鏡や集光レンズの他に、平面鏡等の適宜の光学系部材を配置して熱線を透過、反射、偏向させることもできる。
【0018】集光反射鏡および集光レンズでは、アモルファス薄膜の表面部を目途に熱線を集光する。集光された熱線は、多段階的に集光されているため焦点深度が深く、アモルファス薄膜の内部まで有効に加熱される。さらに、集光レンズでは、波長による屈折率の相違により内部加熱効果が大きな波長の長い領域が僅かながらも深部側に集光するため内部加熱効果が一層大きくなる。この効果は、集光反射鏡だけでは得ることができず、集光レンズとの組み合わせによって初めて得られる。これらの作用により基板の加熱が不要になったり、加熱温度を大幅に下げることが可能になる。
【0019】そして、集光ビームとアモルファス薄膜とは、相対的に移動するため、薄膜の広い面積に熱線を照射することが可能になる。集光ビームとアモルファス薄膜との相対的な移動は、走査系機構により行われるが、この機構は、熱線を移動するための光学走査系機構や基板を移動させるための基板走査系機構のいずれであってもよく、また、これらを組み合わせたものであってもよい。上記移動により集光ビームが走査されつつアモルファス膜に照射されるため、光を十分に集光できるとともに、面積の制約を受けることなく、また基板を高温に加熱することなく広い面積のアモルファス膜を均等に多結晶化することができ、大面積で粒径が十分に大きな多結晶薄膜が効率的に得られる。
【0020】上記光源での加熱によってアモルファス膜を多結晶化させた後、裏面電極を設ける場合には、必要なパターンに従って、金属基板の一部と、多結晶化した薄膜を除く層の一部とを除去することができる。この除去は、常法により行うことができ、適当なマスキングを行った後の化学的エッチングやプラズマエッチング、レーザエッチング等により行うことができ、金属基板や各層に適した除去方法を適宜採用することができる。また、除去する層によって除去方法を変えることも可能である。さらに上記により除去された溝部分には、Al、Ag、Au等の導電性材料を付着させて多結晶膜と金属基板とを導通させる。上記導電性材料の付着方法は特に限定されるものではなく、通常の半導体製造において用いられる電極印刷等により行うことができる。なお、金属基板と多結晶膜との間の層は、絶縁層として機能させることができる。上記多結晶膜は予め全体をn化またはp化させておき、その後、部分的にp化またはn化したり、p層またはn層を新たに設けることにより、pn接合部を有する半導体が得られる。これに上記した裏面電極と表面電極とを設けることにより半導体素子が得られる。なお、多結晶膜の表面部には、経時劣化を避けるためにパッシベーション膜を形成するのが望ましく、通常は、表面電極形成後にこの膜を形成する。
【0021】
【発明の実施の形態】以下に本発明の一実施形態を添付図面に基づき説明する。
[1]低温成膜過程基板にアモルファスシリコン膜を形成する装置には、従来使用されている装置を使用することができる。先ず、基板として比較的安価で耐熱性に優れたSUS431ステンレス板1(マルテンサイト系:融点〜1500℃)を用い、これに中間層として2000オングストローム厚のSiO2(シリコンオキサイド)膜2、さらにバッファ層として、水素を添加した3000オングストローム厚のH:Si3N4(シリコンナイトライド)膜3をスパッタリング等によって成膜する。上記SiO2は濡れ性が良好であり、しかもステンレス板1上への成膜において安価な製造法が確立されている。一方、H:Si3N4膜3は、高融点安定層でSiO2からのO2によるアモルファス膜の汚染を防ぐ役割を果たす。したがって、基板等は表層からH:Si3N4膜3、SiO2膜2、ステンレス板1の3層からなる。さらに、真空装置13aによりチャンバー10aを十分な真空状態にした後、上記H:Si3N4膜3上に、公知のプラズマ装置を用いて低温プラズマCVD法(300℃以下)により、10μm厚のアモルファスシリコン薄膜4を成膜して多層素材を得る。なお、CVDの条件は、常法により定めることができる。
【0022】[2]ゾーンメルト過程次に、アモルファスシリコン薄膜を多結晶化する装置を説明する。この装置は、チャンバ10内に、基板載置台11が配置されており、該基板載置台11は、載置台11を縦横に移動させるための基板移動装置12(走査系機構に相当)に取り付けられている。また、チャンバ10には、雰囲気調整用の不活性ガス供給装置又は真空装置13が連結されており、天井部には、下方の基板に臨ませた石英ガラス製の熱線導入窓14が設けられている。一方、チャンバ10の外部には、キセノンランプからなる長尺なランプ熱源15が配置されており、該ランプ熱源15の後方(熱線照射方向に対する)に、断面が放物面で内面に金メッキが施された長尺な集光反射鏡16が配置されており、上記ランプ熱源15は、この集光反射鏡16の放物面の焦点付近に位置している。また、上記ランプ熱源には、図5に示す出力パルスを得るべく、コンデンサ20aを含むパルス回路20が駆動回路として接続されている。さらに、ランプ熱源15の前方には、熱線を90度ずつ偏向させる平面鏡17a、17bが配置されており、このうち平面鏡17bは、後述する集光レンズ18とともに水平方向に移動することができ、熱線15aの照射位置を調整できるようにされている。さらに、該平面鏡17bの前方に、断面が凸レンズ形状で全体が長尺なフッ化カルシウム製の集光レンズ18が配置されており、該集光レンズ18は、平面鏡17bとともに移動するように構成されている。なお集光レンズ18の前方には、前記した熱線導入窓14が位置している。
【0023】上記多結晶化装置について説明すると、先ず、上記によりアモルファス薄膜4等が形成された多層素材をアモルファス薄膜4を上向きにして基板載置台11上に置き、基板移動装置12により所定位置に待機させるとともに、不活性ガス供給装置又は真空装置13によってチャンバ10内を所定の不活性雰囲気又は十分な真空状態に調整する。さらに、平面鏡17bおよび集光レンズ18の位置を適宜位置に調整しておく。次いで、ランプ熱源15を作動させるとともに、上記基板移動装置12を作動させて基板載置台11を所定の運動パターンで移動させる。ランプ熱源15の作動によりランプ熱源15から照射された熱線15aは、大部分が集光反射鏡16で反射され、ほぼ平行束状態で、平面鏡17a、17bにより順次偏向される。次いで、集光レンズ18に入射し、該集光レンズ18で集光され、熱線導入窓14を通過して、所定の運動パターンで移動する基板上のアモルファスシリコン薄膜4上に照射される。このとき、熱線15aは、アモルファスシリコン薄膜4の表面部に集束して線状の高密度エネルギビームとしてパルス状に照射される。
【0024】なお、キセノンランプから発せられた熱線は、図8に示すように500nm付近に強度ピークがあり、これを相対強度10として、350〜400nmの波長域で相対強度が5以上となる波長分布を有し、400〜600nmの波長領域は、全て3以上の相対強度を有している。このため熱線15aはアモルファスシリコン薄膜4を効率よく、しかも深部(10μm以上)まで加熱して(〜1500℃)、これを帯域溶融させる。この溶融部4aはその後冷却されて粒径が十分に大きな多結晶シリコン薄膜5に成長する。なお、結晶サイズは光源出力、冷却時間等により最適化を図ることができる。しかも、上記照射に伴い、基板は移動装置12により移動しているため、熱線15aは、アモルファスシリコン薄膜4上を走査しつつ照射することになり、広い面積に亘りアモルファスシリコン薄膜4が多結晶化され、大面積化が極めて容易である。また、平面鏡17b、集光レンズ18の水平移動により、単独でまたは上記基板移動装置12と組み合わせて熱線15aの照射位置を調整することもできる。
【0025】上記システムにおいては良好な多結晶薄膜が得られるとともに、全体としてプロセス温度を大幅に低下させることができ(300℃以下)、エネルギ効率を上昇させると同時にモジュール面積を大幅に拡大させることを可能になり、製造コストの大幅な低減が可能になる。なお、上記装置では、基板を移動させる走査系機構を有していたが、上記平面鏡16bのように適当な光学系によって熱線自体を移動させるようにした走査系機構を有するものであってもよい。
【0026】[3]電極作製過程次いで、アモルファスシリコン薄膜4を多結晶化した多層素材を上記多結晶化装置のチャンバ10から取り出し、図示しない熱拡散室に配置する。なお、多結晶化されたシリコン薄膜5は、CVD等による成膜時等に適宜のアクセプタを導入してp型半導体としておく。上記多層素材は、熱拡散室内でP蒸気下において800℃に加熱する。この加熱により多結晶シリコン薄膜5の表層にPが熱拡散してn型層5aが形成され、他部のp型領域とによってpn接合している多結晶シリコン層50が得られる。この多層材には、さらに裏面側のステンレス板1に所定のパターンでマスキングを行い、フッ酸溶液にて、ステンレス板1とSiO2膜2とを上記パターンに従って溝状に化学エッチングする。さらに溝内にあるSi3N4膜3を、溝に従ってプラズマエッチング(RIE法等)し、多結晶シリコン層50を除いてステンレス板1、SiO2膜2、Si3N4膜3が除去された除去部30を形成する(図6(a))。
【0027】次いで、上記除去部30に、Al、Ag等の裏面電極用導電材31を蒸着等によって付着させ(図6(b))、ステンレス板1側を研磨して裏面電極(ステンレス板1および導電材31)を形成した半導体を得る((図6(c))。一方、上記半導体の表面側、すなわち多結晶シリコン層50の表面には、所定のパターンに従ってAlによって表面電極33を印刷し(図7(d)、さらに、多結晶シリコン層50の残部表層に、H:Si3N4膜からなるパッシベーション膜34を2000オングストローム厚で形成し(図7(e))、さらにその上層に2000オングストローム厚で、SiO2/TiO2からなるARコート35を形成して太陽電池セルを得る(図7(f))。得られた太陽電池セルは、多数のセル同士を結合することによりモジュール化する。上記過程により、所望の太陽電池が安価に、かつ効率的に得られる。しかも、得られた太陽電池は、各セルが大粒径の多結晶シリコンで構成されており、優れた電力交換効率を有している。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の多結晶薄膜の製造方法および装置によれば、ランプ熱源から発せられた熱線が集光反射鏡で反射された後、集光レンズで集光されてアモルファス薄膜の表面に照射されるとともに、集光熱線とアモルファス薄膜とが相対的に移動してアモルファス薄膜が加熱されるので、基板の高温加熱を必要とすることなくアモルファス薄膜を効率的に多結晶化することができ、薄膜の大面積化も容易である。
【0029】また、熱源用ランプとして、キセノンランプまたは水銀ランプ等の放電管ランプを用いれば、効率的にアモルファス薄膜を加熱することができる。さらに、熱源用ランプとして、キセノンランプまたは水銀ランプ等のように、ランプ熱源から発生した熱線が、200〜800nmの波長域に強度ピークがあり、該ピークの相対強度を10として、200〜400nmの波長域と400〜600nmの波長域にそれぞれ相対強度3以上の波長分布を有するものを使用すれば、アモルファス薄膜を表面から深部に亘るまで効率的に加熱することができ、アモルファス膜を良好に、かつ効率的に多結晶化することができる。また、ランプの駆動において、コンデンサを含むパルス回路を駆動回路として用いれば、アモルファス薄膜にパルス状に熱線が照射され、加熱効果が飛躍的に向上する。
【0030】さらに、金属基板上にSiO2膜等の濡れ性のよい中間層を形成し、この中間膜の上層にSi3N4膜等のバッファ層を形成し、該バッファ層の上層にアモルファス薄膜を形成すれば、高温において安定で汚染のない状態でアモルファス薄膜を多結晶化することができ、良質の多結晶薄膜が得られる。
【0031】
- 【公開番号】特開平11−74206
【公開日】平成11年(1999)3月16日
【発明の名称】多結晶半導体の製造方法および製造装置
【発明者】
【氏名】米田 昌司
【氏名】細工藤 龍司
【氏名】村木 達哉
【氏名】石坂 進一
- 【出願番号】特願平9−246200
【出願日】平成9年(1997)8月27日
【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
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