重質油熱分解方法およびその装置
スポンサード リンク
- 【要約】
【課題】 各機器の機能を集約し、機器間の配管のほとんどを省略し、イニシャルコストを低減することができる熱分解プロセスによる重質油熱分解方法およびその装置を提供する。
【解決手段】 重質油を壁面に沿ってフィルム状に流下させ、このフィルム状の重質油に高温気体を噴射して、重質油を熱分解する。その際に発生する燃焼ガスは、排ガス対策を施して大気に放出する。また、アップグレードされた軽質油は、装置の容器の下部に集めて取り出す。
スポンサード リンク
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 重質油を壁面に沿ってフィルム状に流下させ、該フィルム状の重質油に高温気体を噴射して、重質油を熱分解することを特徴とする重質油熱分解方法。
【請求項2】 容器(1)の内部に鉛直方向に二重管が複数配設され、二重管の外筒(3)の上部外側には重質油槽(7)、上部壁面には重質油槽(7)に連通する複数の細孔(6)が形成され、二重管の内筒(9)は、前記外筒(3)の内面に向けて高温気体を噴射する細孔を有する多孔質金属チューブで構成されていることを特徴とする重質油熱分解装置。
【請求項3】 容器(21)の内部に鉛直方向に矩形の熱分解チャンバー(23)と多孔質チャンバー(29)が交互に対向して複数配設され、前記熱分解チャンバー(23)の上部は重質油槽(27)とされ、その槽(27)の壁面には多数の細孔(26)が形成され、前記多孔質チャンバー(29)の両壁面は、熱分解チャンバー(23)の壁面に向けて高温気体を噴射する細孔を有する多孔質金属板で構成されていることを特徴とする重質油熱分解装置。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、重質油熱分解方法およびその装置に係り、詳しくは熱分解プロセスによる重質油熱熱分解方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】原油の常圧蒸留または減圧蒸留によりガソリン、LPガス、灯油、軽油等が精製されるが、同時に多量の重質油である残油が発生する。残油処理プロセスは投資額が膨大であるため、より効率的で経済的な処理方法が要求されている。重質油を分解してガソリン、灯油、軽油等にアップグレーデイングするプロセスとしては触媒を用いる流動接触分解プロセス、水素気流中で触媒を使用する水素化分解プロセスおよび高温で無触媒の熱分解プロセスの3種類に大きく区分される。熱分解プロセスは、触媒を用いることなく高温下で重質油を熱分解するプロセスである。これまで、原料油である残油の粘度低下を目的とするもの(ビスブレーキング法)、分解ガス・軽質油とコークスを製造することを目的とするもの(コーキング法)、軽質油とピッチに変換することを目的とするもの(ユリカ法)等が実用化されている。
【0003】従来の熱分解法としてはビスブレーキング法が主流となっている。すなわち、このビスブレーキング法は、例えば、工業加熱Vol.21,No.8、67頁に記載されているように、原料油を昇圧し、予熱した後、加熱炉内に設置されたチューブ内で温度430〜480℃,圧力10〜20kg/cm2のコーキングを起こさない比較的ゆるやかな条件で熱分解反応を行う。加熱炉を出た分解油は過分解を抑え、分解反応をとめるためにクエンチオイルによって急冷される。急冷された分解生成物はつづく精留塔で、ガス、ナフサ、分解軽油および分解残油に分けられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ビスブレーキング法は、上述したように加熱油の昇圧、予熱、加熱炉での熱分解反応、クエンチオイルによる急冷、精留塔での分離などを行うために、各種熱交換機器および各機器間の配管などを必要とし、イニシャルコストが大となる。本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、各機器の機能を集約し、機器間の配管のほとんどを省略し、イニシャルコストを低減することができる熱分解プロセスによる重質油熱分解方法およびその装置を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述した課題を次のように解決した。すなわち、重質油を壁面に沿ってフィルム状に流下させ、このフィルム状の重質油に高温気体を噴射して、重質油を熱分解する。その際に発生する燃焼ガスは、排ガス対策を施して大気に放出する。また、アップグレードされた軽質油は、装置の容器の下部に集めて取り出す。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
(実施例1)図1は、本発明による第1の実施例の壁面薄膜流下型重質油熱分解装置の概念図であり、図2は、図1のA部の拡大図である。
【0007】図1および図2に示すように、装置の容器1の内部には、二重管が鉛直方向に複数配設され、容器1の下部には精製重質油出口ノズル2が接続されている。
【0008】二重管の外筒3の上部外面には、上面板4と下面板5が平行して接続されている。この上面板4と下面板5の間に位置する外筒3の壁面には、多数の細孔6が形成されている。上面板4と下面板5の間は重質油槽7とされ、重質油入口ノズル8が接続されている。二重管の内筒9は、多孔質金属チューブとされ、各チューブ9の下端は高温気体ヘッダー10に接続され、上端は塞がれている。高温気体ヘッダー10には高温気体供給ノズル11が接続されている。多孔質金属チューブ9には、多孔質金属材料またはMF(Micro Filtration)、UF(Ultra Filtration)サイズまでの細孔サイズを有する金属膜材料が使用される。なお、 MFは精密濾過で数μ〜0.1μ程度、UFは限外濾過で1μ〜0.01μ程度の細孔サイズを意味する。なお、内筒9の上面は、外筒3の細孔最上端より若干高くされている。
【0009】次に、上記重質油熱分解装置の動作について説明する。
【0010】まず、重質油入口ノズル8から重質油槽7に重質油を供給する。次に、多孔質金属チューブ9内に高温気体供給ノズル8、高温気体ヘッダー10を介して高温(300〜1000℃)の空気、酸素または窒素等の気体を吹き込み、チューブ9の細孔から均質にそれぞれ二重管の外筒3の内面に向けて噴射する。これにより、二重管の外筒3の内面上部から壁面に沿ってフィルム状に流下する重質油は、上記高温気体の吹き付けにより熱分解する。
【0011】その際、二重管内の温度は、重質油の着火温度以上となるため、重質油の一部は燃焼する。この二重管内の燃焼ガスは、排ガス対策を施して大気に放出するか、廃熱ボイラーに送り発電する。砂漠であればこの電力は海水淡水化等へ利用することができる。
【0012】アップグレードされた軽質油は、装置の容器1の下部に集められ、精製重質油出口ノズル2から取り出される。回収される軽質油の種類(高分子の鎖の長さ)および性状は、図2に示す二重管間隔Δt、吹き込み気体の流量、温度等により調整される。
(実施例2)図3は、本発明による第2の実施例の壁面薄膜流下型重質油熱分解装置の概念図であり、図4は、図3のB部の拡大図である。
【0013】図3および図4に示すように、装置の容器21の内部には、矩形の熱分解チャンバー23と多孔質チャンバー29とが鉛直方向に交互に複数配設され、容器21の下部には精製重質油出口ノズル22が接続されている。
【0014】熱分解チャンバー23の上部は重質油槽27とされ、その両壁面には多数の細孔26が形成されている。重質油槽27は重質油ヘッダー24に接続され、重質油ヘッダー24には重質油入口ノズル28が接続されている。
【0015】多孔質チャンバー29は、その両壁面が多孔質金属板で構成され、その下端は高温気体ヘッダー30に接続されている。高温気体ヘッダー30には高温気体供給ノズル31が接続されている。多孔質金属板には、多孔質金属材料またはMF(Micro Filtration)、UF(Ultra Filtration)サイズまでの細孔サイズを有する金属膜材料が使用される。なお、多孔質チャンバー29の上面は、熱分解チャンバー23の細孔最上端より若干高くされている。
【0016】次に、上記重質油熱分解装置の動作について説明する。
【0017】まず、重質油入口ノズル28から重質油槽27に重質油を供給する。次に、多孔質チャンバー29内に高温気体供給ノズル31、高温気体ヘッダー30を介して高温(300〜1000℃)の空気、酸素または窒素等の気体を吹き込み、多孔質チャンバー29の両壁面の多孔質金属板の細孔から均質にそれぞれ熱分解チャンバー23の両壁面に向けて噴射する。
【0018】これにより、熱分解チャンバー23の重質油槽27から壁面に沿ってフィルム状に流下する重質油は、上記高温気体の吹き付けにより熱分解する。
【0019】その際、熱分解チャンバー23と多孔質チャンバー29間の温度は、重質油の着火温度以上となるため、重質油の一部は燃焼する。この両チャンバー23,29間の燃焼ガスは、排ガス対策を施して大気に放出するか、廃熱ボイラーに送り発電する。
【0020】アップグレードされた軽質油は、装置の容器21の下部に集められ、精製重質油出口ノズル22から取り出される。回収される軽質油の種類(高分子の鎖の長さ)および性状は、図4に示す熱分解チャンバー23と多孔質チャンバー29間の間隔Δt、吹き込み気体の流量、温度等により調整される。
【0021】
【発明の効果】本発明による重質油熱分解装置は、以上のように構成されているため、従来のビスブレーキング法等に比べてイニシャルコストを著しく低減できる。
- 【公開番号】特開2000−8049(P2000−8049A)
【公開日】平成12年1月11日(2000.1.11)
【発明の名称】重質油熱分解方法およびその装置
【発明者】
【氏名】松村 修三
【氏名】米田 昌司
【氏名】伝田 六郎
- 【出願番号】特願平10−174732
【出願日】平成10年6月22日(1998.6.22)
【出願人】
【識別番号】592264053
【氏名又は名称】松村 修三
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
- 【代理人】
【識別番号】100070219
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 忠 (外4名)
★当サイトのどのページも全てリンクフリーです、自由にお使いください
※以下のタグをホームページ中に張り付けると便利です。
★携帯電話でも特許データを見られます 携帯URL:http://m.tokkyoj.com/md/tk2000-8049.php
【友達に教える】
スポンサード リンク