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“またNHK”だが他人事とは言っていられない

ノンセクション2010年10月12日 07:30 | フォルダ : 

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 スポーツ部の記者が大相撲の賭博問題で他社の記者から得た家宅捜索情報を相撲協会関係者(後に時津風親方と判明)に漏らしたというNHKの発表に“またしてもNHK”かの感を抱いた。森喜朗内閣時代の2000年に起こった“会見指南書事件”もまた、NHK記者が関与していたという話がもっぱらだったからだ。
 森首相が「日本は天皇を中心とする神の国」と発言したことで野党などの反発を受けた当時のこと。首相が釈明会見を開く前日、官邸記者クラブのコピー機に、首相側に記者会見の対応の仕方をアドバイスするような文書が置き忘れてあった。これを西日本新聞が報じたことで、週刊誌なども取り上げる騒ぎに(西日本新聞も、これを取り上げたことで身内意識の強い記者クラブに責められた)。まるで問題を追及するメディアをあしらう方法を教えるかのような文書の“犯人”については、関係者の間で“某国営放送局”の記者であるとささやかれた。こちらは捜査情報漏洩のような不祥事ではないものの、記者が取材対象にすり寄っているという点では同根と言える。
 これを他人事として非難してばかりはいられない。取材者は常に、対象にべったりしてしまう誘惑と危険性にさらされている。
 ある超有名アスリートの関係者が、気に入らない記事を掲載した社の編集者を呼びつけてネタ元を明かせと迫った揚げ句、「記者というのはネタ元を明かすものだ」と言い放ったという話を聞いたことがある。相手と良好な関係を保つことだけを考えれば、つい秘密の取引をしてしまいかねない状況だ。
 ともに番記者システムで取材をするスポーツや政治の世界にありがちなのは、取材対象者が記者も敵か味方かという視点で選別すること。「オレの味方なら相手のネタを持って来い」というパターンだ。筆者もその昔、スポーツ界のさるスキャンダル取材に関わった際、情報源の人物が自分の気に入らない記者の悪口を言い、その動向を知りたがる様子を目の当たりにした。情報源からさらなるニュースを引き出したい場合、ギブ&テイクでこちらもつい、何かを教えたくなる誘惑にかられてしまう。
 賭博問題で家宅捜索を漏らした記者も、旧知の時津風親方との関係を保つための一方的な情報提供だったと釈明しているようだが、やはりこうした心境から過ちを犯してしまったのだろう。
 記者が知らず知らずのうちに、考え方まで取材対象者と一体化してしまうことは珍しくない。
 とかく「タレ流し」と批判が多い大メディアの検察報道も、必ずしも相手の圧力を受けたり、意図的に迎合したものではないという。「記者はニュースをとる上で、相手が何をしようとしているかを考える。そうしているうちに、検察や警察と同じ考え方になってしまう」と検察・警察報道に詳しいジャーナリストは言っていた。
 ある大新聞の政治記者が小泉政権当時、自民党額賀派の担当から安倍晋三官房長官番に異動となった。小泉、安倍の両氏は町村派。その記者は夏の間、小泉内閣で始まったクールビズのスタイルにせずネクタイ姿で仕事をしていたら、他者の番記者から「アイツは経世会(額賀派)のスパイだ。本物の安倍番じゃない」と陰口をたたかれたという。
 ――といったように、とかく記者には相手と一体化する誘惑と危険性がつきまとう。“捜査情報メール記者”や“会見方法指南記者”の二の舞にならぬよう、自戒。


 
 

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