「F1日本GP決勝」(10日、鈴鹿サーキット)
午前に降雨順延となった予選の後、午後に決勝を行い、小林可夢偉(24)=ザウバー・フェラーリ=が予選14位から7位でフィニッシュし、今季6度目の入賞。7年ぶりの鈴鹿で“F1日本代表”のプライドを見せつけた。セバスチャン・ベッテル(23)=レッドブル・ルノー=が今季3勝目となるポール・トゥー・ウインで日本GP2連覇を達成し、今季3勝目、通算8勝目を挙げた。予選24位の山本左近(28)=HRT・コスワース=は16位だった。
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本物であることを証明した。秋晴れの聖地で繰り広げた1時間31分31秒の死闘。最終コーナーに姿を現した可夢偉の頭上には、勝者にも劣らない拍手が注がれた。「7年ぶりに日本のファンの前でレースができて、本当に最高のレースができた」。ため込んだ思いを一気に吐き出した。
7年ぶりの鈴鹿が用意していたのは波乱に満ちたシナリオだった。悪天候の影響で、6年ぶりに公式予選と決勝が“ワンデー開催”となる幕開け。決勝スタート直後の1コーナーでいきなりマッサがクラッシュで姿を消した。
最終的に7台が棄権した“サバイバルレース”。悲鳴と絶叫が交錯する中、24歳の若武者が確かな走りを見せつけた。「難しいけど、あのポジションから前に行くにはあれしかなかった」。“ミラクル・カムイ”が逆襲の舞台に選んだのは鈴鹿でも屈指の高難度を誇る「ヘアピン」だった。
一歩間違えばすべてが終わる低速コーナーに勝負をかけた。ハイライトはタイヤ交換で順位を下げた後の44周目。「かなり壊れていた。パーツが飛んでいくのが見えた」。内を走るアルゲルスアリに対し外から強烈な“タックル”。手段を選ばぬルーキーの力業に9万6千人が度肝を抜かれた。
「これだけ盛り上げといて、さんざんな結果だったらね」と任務を遂行し、ホッと一息。自己ベストの英国GP6位には届かなかったが、初の母国レースで価値あるポイントをチームにもたらした。「F1に興味のない人が興味を持ってくれたら。みんなも分かってくれたと思う」‐。命懸けで刻んだラップは、どんな言葉よりも力強かった。