「CS第1S、西武4-5ロッテ」(10日、西武ド)
リーグ3位のロッテが延長十一回の末に5‐4で同2位の西武を下し、2連勝でファイナルステージ進出を決めた。九回に里崎智也捕手(34)のソロ本塁打で同点とし、十一回に井口資仁内野手(35)が中前へ決勝打を放った。ロッテは14日からヤフードームで行われるCSファイナルステージ(6試合制)で、リーグ優勝により1勝のアドバンテージを持つソフトバンクと対戦する。
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恐るべき強運の持ち主だ。里崎が九回、起死回生の同点弾。前日も九回に同点打を放った“持ってる男”が、この日も土壇場で劇的な一撃を生み出し、ファイナルSへの道を切り開いた。
初球だった。勝利への執念を乗せた打球は、左翼席に一直線に飛び込んだ。「狙ったわけじゃないが、打てるところに来たら打とうと思った」。実はバットを満足に振れる状態ではなかった。八回2死二塁、栗山の左前打を大松が本塁へ好返球し、里崎は体を張ってブロック。追加点を阻止した直後の打席、左手首に激痛が走ったままだった。しかし「かえって力が抜けてコンパクトなスイングになった」と里崎。「ピンチはチャンス」が口癖のお祭り男は、痛みを連日の奇跡に変えた。
そんな里崎が、お立ち台でファンへの感謝を口にした瞬間、涙で声を詰まらせた。背筋痛が長引き約2カ月に及んだ2軍生活を思い出し、「長かったからね。頑張ってよかった」とつぶやいた。「それでもチームがCSに出られるって信じてたし、そこに合わせてきた」。その思いの丈を、負けられない戦いにぶつけている。
ファーストS2試合で4打数4安打4打点と驚異的な勝負強さ。背筋痛で長らく実戦を離れていたが、「感覚は経験で補う」と集中力は研ぎ澄まされていた。日本一に導いた05年をはじめ、06年のWBCや08年の北京五輪など数々の大舞台を経験。「それが生きている」と里崎。西村監督も「サトがここ一番で強いところを見せてくれた」と頼れる男に目を細めた。
次なる舞台では、王者ソフトバンクが待ち受ける。「福岡は縁起がいいからね」。05年、ソフトバンクとのプレーオフ第2S第5戦で決勝二塁打を放ち、日本S進出を決めたのも福岡。03年には当時のダイエー戦で、亡き祖母を弔う決勝打を放ち、お立ち台で涙したこともある。
ラッキーボーイとなった05年、「風は俺に吹いている」の名言を残したが、「今も『吹いてきた』としか言いようがない」と里崎。シーズン2位西武を劇的に倒した西村ロッテに、下克上の予感が漂ってきた。