大ショッカーと銘打つ秘密結社がいた、かつての秘密結社の名を受け継いだもの。鷲のマークの瞳にあたる部分から《声》がする、大ショッカーを束ねる大首領の声だ。
〈地獄大使よ、ベルトは出来たのか?〉
「はっ、ディケイドライバーは既に完成しております。装着者は平行世界の彼に。九つの世界は破壊済みで、後は大首領様が出陣するだけかと」
〈……バダンと各組織の協力は得られなかったか〉
「忌々しい事ですが、あちらの世界でも仮面ライダーが抵抗しており……苦戦しております」
苦々しげに答える地獄大使、その胸中は仮面ライダーへの憎悪がある。忘れもしない記憶、ここではないどこか。赤い仮面忍者のサイボーグ、仮面ライダー10号に撃破された刻を思い出す。
最も、目には目を歯には歯を。仮面ライダーには仮面ライダーを、全ての仮面ライダーを破壊する力として開発されたベルト――ディケイドライバー。それが10番目の仮面ライダーになり我らの切り札と判明した時は皮肉な運命だと思った、何せ違う自分が倒された宿敵と同じになるのである。
そこらへんは割り切るしかない、そう結論付けて報告を続ける地獄大使。
「あちらの世界の仮面ライダーは、現在ジンドグマと戦っている仮面ライダー9号が主力になっているようです」
〈スーパー1、……こちらではキバにあたる。そろそろ行動の刻か〉
「では平行世界の彼を……」
〈ああ、ディケイドの本当の役割を果たす時が来た〉
その大首領の声は、反撃の宣言。それに歓喜する地獄大使と控えていた黒いマスクの大ショッカー戦闘員、ポーズをとって勝鬨を上げる。
「イーッ!」
暗い闇の底で危険な罠が蠢いた、全てを破壊し全てを支配するために。
青空の下で手作りの球を交互に回す青年、その後ろを付いていく子供たち。その平和な光景が崩れ去るのは近い、だが希望はまだある。最後の戦いで青年に刻まれたアマダムの力は失われたが、彼が望めばアマダムはそれに応えてくれるだろう。
本来なら青年は戦う事を忌避する、彼と共に戦ってきた一条刑事が言うように彼には旅だけをしてほしかった。だが皆の笑顔を守るために青年は敢えて戦う事を選ぶ、命を壊す者グロンギから命を守る者クウガとして。
その青年の名は2000の技を持つ男、五代雄介。
地球にある、それぞれの仮面ライダーの歴史。それらが一つになった世界で、動きだす大ショッカー。迎え撃つのは平成仮面ライダーと呼ばれる戦士たち、初戦は仮面ライダークウガ。
彼らの戦いは終わらない、否、始まったばかりである。