[トップページ][平成9年下期一覧][The Globe Now][222.013191 対中ODA]
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        _/  _/    _/  _/           Japan On the Globe (4)
       _/  _/    _/  _/  _/_/      国際派日本人養成講座
 _/   _/   _/   _/  _/    _/    平成9年9月20日 600部発行
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_/_/    The Globe Now: 
_/_/      中国の軍事力増強に貢献する日本の経済援助
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_/_/           ■ 目 次 ■
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_/_/   1.突出する日本の対中援助
_/_/   2.ODA大綱に違反する対中援助
_/_/   3.日本を潜在敵国と見なす
_/_/   4.日本のODAが中国の戦力増強に役立っている
_/_/   5.友好と利害関係
_/_/   6.平和と友好を実現するための国際常識
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■1.突出する日本の対中援助■

 「VOICE」10月号(PHP出版)に著名なジャーナリスト
古森義久氏が寄稿した「日中『友好』という幻想」で、日本の友好
第一主義が、いかに国益を損ない、我々の危険を増大させているか
について、鋭い指摘を行っている。以下、その概要を紹介する。
()内は当編集部のコメント。

 日本は世界で最大額の政府開発援助(ODA)を行っている。そ
の中でも、中国は最大の援助先である。1995年の対中援助額は
総額13.8億ドルと、中国から見ても、第2位の西ドイツの3億
ドルを4倍以上も上回る突出ぶりである。

(日本の4人家族あたりでみると、年間約5千円。)

■2.ODA大綱に違反する対中援助■

 援助を受ける一方で、中国はその軍事力を大幅に増強しつつある。
ロシアから新鋭の兵器類を続々と購入し、また国際世論を無視して
核実験を続けた。中国国防大学発行の論文では、現在の中国軍が米
軍に20年相当の遅れをとる兵器の水準を、2000年までに15
年に縮め、21世紀前半には追いつくという目標を掲げている。

 日本には、ODAの運用に関する原則を決めたODA大綱がある。
その原則には「軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、
武器の輸出入などの動向に十分、注意を払う」という規定がある。

 普通に読めば、中国のような軍事支出の増加が顕著で、核兵器を
保有し、核やミサイルの技術、部品を輸出し、しかも領土紛争など
に軍事力を安易に使う前歴のある国あてには、当然、ODAは停止
される、と解釈できる。だが、そういう中国に最大の援助を行って
いる。国際的に公表された一国の政策宣言としては、これほど偽善
と欺瞞に満ちた文書はない。

■3.日本を潜在敵国と見なす■

 今までの最大の対立相手ソ連が崩壊して、直接の軍事脅威がほと
んどない環境を得たのに、なぜ中国は軍事力増強を続けるのか?

 中国の社会科学院世界経済研究所の発行した論文では、次のよう
に述べている。

「日本は一千個から二千個の原子爆弾製造に要する核燃料と技術を
すでに保有し、政治決定さえ下せば数ヶ月で核兵器保有国になれる」

「日本はH2ミサイル打ち上げにより大陸間弾道弾ミサイル(IC
BM)の製造能力を証明し、海軍能力では東アジアの最高水準にあ
る」

「日本政府は海外での軍事的役割を認める平和維持活動の法律を成
立させ、その一方で「新ナショナリズム」を唱え、軍事大国化の準
備を進めている」

 中国は日本を軍事脅威、潜在敵国と見なしているのである。

■4.日本のODAが中国の戦力増強に役立っている■

 アメリカ上院外交委員会元顧問で、中国軍事問題研究家のウェリ
アム・トリプレット氏は、次のように語っている。

「中国は核ミサイルや、主要部隊を内陸部の奥深くに隠す形で配備
してきました。有事の際、その兵器や兵力を、沿岸部、都市周辺部
に迅速に移動することが死活的に重要となります。

 そのためには、鉄道、幹線道路、空港、港湾などの輸送網、さら
には通信網の整備が不可欠となるわけです。まさにその部分の強化
に日本のODAが使われているとなると、日本は自国にとって重大
な軍事的脅威となる相手の戦力を国民の税金で増強していることに
なります。」

■5.友好と利害関係■

 外務省のチャイナ・スクールと呼ばれる中国専門外交官たち主導
の対中政策では、まず最初に友好ありきで、日中両国がすべての面
で理解し合い、意見を一致させ、友好を誓い合う、そういう状態が
大目標として設定され、それに合わない動きは「反中」として排さ
れる。

 彼らは、日本が対中ODAを減らせば日中関係が悪化する、と警
告する。だが、ODAを削減した位で崩れてしまう友好関係は、真
の友好ではあるまい。

 日本の利益を損ない、マイナスとなっても友好をあくまでめざす
というのでは、どこの国のための外交政策だか、分からない。

 日本の国家、国民にとっての利益は何かを見極め、それを起点に
対中政策の方向や手法を決める。その結果、友好が生まれれば、喜
ぶべきだし、逆に非友好となっても、けっして不自然ではない。

■6.平和と友好を実現するための国際常識■

(相手が、自由民主主義と市場経済主義の国であれば、多少の摩擦
はあっても、たいていの場合は、友好と経済交流の増進が、お互い
の国益にかなう。しかし、ひたすら軍備増強に走るような国には、
まず友好ありき、の姿勢では通用しない。

 ソ連の軍事拡張路線が破綻したのも、レーガンーサッチャーの機
軸により、ソ連が軍備増強を続ける限り、西側も結束して軍備増強
を続けたからである。レーガン、サッチャーは、ソ連経済の体力で
は、いつまでも軍備増強は続けられない、と読み、果たしてその通
りとなったのである。東西核戦争の危機が無くなったのは、まさし
くこの外交戦略の賜である。

 「平和と友好を唱えていれば、実現する」という「日本の常識」
は、「世界の非常識」である。相手国に真の国際友好を目指さねば、
自分が損をすると思わせるような環境作りが必要である。日米同盟
はその一環である。現在のODAは、その反対の事をしているわけ
で、まさに国際的な非常識なのである。)

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