2010年10月11日4時0分
日本国債を買い進めてきた中国が一転して、償還期間1年以内の短期債を大量処分したことが波紋を呼んでいる。日本の財務省が公表した8月の国際収支状況(速報)によると、短期債が大半を占める中国の対日証券投資は売却・償還額(処分額)が購入額を2兆182億円上回った。昨年8月〜今年7月の買い越し額の累計2兆2383億円に匹敵する異例の水準だ。
8月の中国の対日証券投資の内訳をみると、短期債は2兆285億円の処分超、中長期債は103億円の買い越しだった。
中国の対日証券投資の買い越し額は4月以降、毎月約2千億〜約7千億円に達し、日本の市場関係者の間では「中国が外貨準備をドルから他の通貨に多様化する一環」との解釈が主流だった。8月に売却・償還額が購入額を大幅に上回ったのは、円高進行に伴い利益を確定させたのではないかとの見方が出ている。
中国では、外貨準備を運用する投資家としての「正常な調整」(新京報)との反応が目立つ。日本側の「中国の政治的意図」をいぶかる一部の見方に対しては「増減は正常。威嚇ではない。政治的な解釈は不要」(証券日報電子版)などと伝えている。
ただ、信用不安で打撃を受けたギリシャ国債について、温家宝(ウェン・チアパオ)首相が同国との首脳会談後に購入を表明するなど、中国には政治的ととられる動きもある。尖閣諸島沖の漁船衝突事件後の投資状況が明らかになる9月分の統計は再び話題を集めそうだ。(福田直之、吉岡桂子=北京)