ファン氏死去:「わたしを狙う暗殺者はもっといる」

 10日朝に自宅で遺体で発見されたファン・ジャンヨプ元朝鮮労働党書記(87)は、いつも北朝鮮から命を狙われていた。

 北朝鮮はファン氏を、「共和国の敵」「恩讐のファン家野郎」などと呼び、韓国国内のスパイを通じ、常にファン氏の行動を監視させてきた。今年初めにも、暗殺の使命を受けて北朝鮮から派遣された武装スパイが、公安当局によって逮捕された。

 ファン氏を暗殺しようとした武装スパイは、朝鮮労働党中央軍事委員会委員で北朝鮮の対南武力工作を担当する人民武力部偵察総局長の金英徹(キム・ヨンチョル)氏から直接指示を受けていた。

 脱北者を装って韓国に入り込み、今年4月に検挙された武装スパイはトン・ミョングァン被告(36)ら二人。彼らは金英徹氏から、「ファン家野郎が自然死するよう放置してはならない。ファン・ジャンヨプの首を取ってこい」と命じられていた。

 北朝鮮に軍事機密を流出させた容疑で今年6月に起訴された、元国家安全企画部(国家情報院)工作員の「黒金星」こと朴采緒(パク・チェソ)被告も、北朝鮮の工作員から「ファン・ジャンヨプの居住地と動きを把握せよ」という指示を受けていた。また、2006年に脱北者を偽装して活動し、後に検挙された女スパイのウォン・ジョンファ受刑者(36)も、韓国で暮らす脱北者を通じてファン氏に接近しようとしていたことが、検察の取り調べで明らかになっている。

 2006年末にはファン氏が代表を務める自由北韓放送あてに、血が塗られたファン氏の写真や斧と共に、「裏切り者は必ず代償を支払わなければならない」という警告の手紙が送りつけられた。

 また2004年には、血とみられる赤い色がついた凶器が突き刺さったファン氏の写真と、殺害を予告する印刷物が、脱北者同志会の事務所前で発見されたこともある。

 公安当局の関係者は、「ファン氏は亡命した直後から、北朝鮮のスパイなど工作員たちにとって第1のターゲットだった」と語る。

 北朝鮮からの脅迫が相次ぐ中でも、ファン氏は毅然とした態度を取り続けた。ファン氏はトン・ミョングァン被告ら暗殺者が検挙されたというニュースを聞いたときも、「おそらくまだどこかにわたしの命を狙う任務を帯びた工作員がいるだろうが、全く気にしていない」と述べた。

 一方、ファン氏を暗殺しようとしたトン・ミョングァン被告らは、今年7月1日の1審で懲役10年を言い渡され、また「黒金星」の裁判は今も続いている。

李明振(イ・ミョンジン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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