後継者問題:外信が軍事パレードを生中継
北朝鮮、「金正恩氏権力承継」PRのため外信記者数十人を招待
北朝鮮は10日、金正日(キム・ジョンイル)総書記の三男で後継者に確定した金正恩(キム・ジョンウン)氏が朝鮮労働党創建65周年記念の軍事パレードに登場したことを伝えるため、米メディアを含む世界の大手メディア各社を多数招き入れた。米国のCNN放送、AP通信、NPR、イギリスのBBC放送、アラブ圏の衛星放送アル・ジャジーラなどは同日、平壌で行われた朝鮮人民軍の大規模な軍事パレードを現場で取材し、これをメーン・ニュースとして報じた。
CNN放送では、韓国系記者エリーナ・チョ氏が平壌の金日成(キム・イルソン)広場で、朝鮮人民軍の兵隊が行進するすぐそばから「北朝鮮の祝日であるこの日、将来の北朝鮮を率いる実質的な指導者・金正恩氏がパレードに姿を現した」と伝えた。パレードを中継したCNNでは、時事・経済誌「フォーブス」の北朝鮮専門家ゴードン・チャン氏が、「実際、北朝鮮は大規模軍事パレードにとてつもない時間と資金をつぎ込んだが、疲弊した経済を強いられる住民たちにとっては愉快な話ではない」とコメント。AP通信は「金正恩氏は拍手をし、手を振り、笑顔を見せることで、(大衆の前で)非常に重要なデビューをした」と報じた。
BBCのクリス・ホッグ記者は、平壌からの生中継で「今回のように、海外メディア各社が大規模軍事パレードを平壌の中心部から生中継するのは初めて。(北朝鮮が外信記者を招いたのは)金正恩氏の権力承継を内外にPRするためだと思われる」と伝えた。また、「北朝鮮は今、重要な転換期にある。軍事パレードは、金正日氏が金正恩氏に(権力を)承継するため、軍隊の確固たる支持が必要だったと認識していることと関連があると思う」と評した。
だが、CNNやBBCの記者は、閲兵式が行われた平壌の「金日成広場」から1-2回現場を中継しただけで、そのほかの行事については、朝鮮中央テレビが中継する画面を外信各社がそのまま報じることになっており、「相変わらず取材は制限されていた」との声もある。CNNのエリーナ・チョ記者は報道の最後に、「北朝鮮当局は外信記者を招待したが、セキュリティーは徹底していた。記者たちにはいつも保安要員が付きまとっていたし、わたしのノートパソコンやペンも保安要員らが徹底的にチェックした」と話している。
これに関連しては、北朝鮮は7日ごろから一斉に、CNNをはじめとする世界の大手メディア各社に「10日に朝鮮労働党創建行事を取材したくないか」と招請の意向を明らかにしていたことが分かっている。米ワシントンの外交消息筋は「米国では、ニューヨークの北朝鮮代表部が、影響力の大きいメディア各社に『今回の行事取材のためなら平壌を訪問できる』と知らせてきた」と言った。北朝鮮の次期指導者として注目されている金正恩氏への取材を希望していた外国メディアは、ほとんどが北朝鮮の招待に応じ、取材陣を派遣した。一部、北京特派員を北朝鮮に派遣することにしたメディアもあったため、北京の北朝鮮大使館には8日午後、北朝鮮のビザ取得のため外信記者数十人が集まった。だが、韓国メディアは招待の対象から外された。
イギリスの日刊紙ガーディアンは9日、「外国メディア取材陣約80人が今回の行事を取材するため平壌に到着した」と報じた。北朝鮮は海外取材陣のため、高麗ホテルにインターネット回線が設置されたプレスセンターを用意、閲兵式の現場での取材活動を許可した。
北朝鮮のこうした動きは、金正恩氏の後継体制を確固たるものとするため展開している「招請外交」の一環だ。北朝鮮はメディアのほかにも、米国の韓半島(朝鮮半島)専門家や非政府組織(NGO)関係者を平壌に招き、権力承継の正当性をPR、6カ国協議再開の必要性を強調している。
ワシントン=李河遠(イ・ハウォン)特派員
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