ワーナー４８歳社長首つり自殺の深層　平井堅、コブクロ育てた

　平井堅（３８）、ケミストリー、コブクロらを世に送り出した音楽業界の風雲児で、ワーナーミュージック・ジャパンの社長兼ＣＥＯの吉田敬（たかし）さんが７日、東京都練馬区の自宅で首をつって亡くなった。４８歳だった。前職のソニー・グループ時代から多くの人気アーティストを売り出した敏腕社長は、なぜ自ら命を絶ったのか。

　警視庁石神井署によると、吉田さんは自宅１階のトイレで首をつっており、買い物から帰宅した夫人が発見した。

　吉田さんは最近、うつ病で通院治療を受けており、５日に出社したのを最後に２日連続で会社を休んでいた。夫人によると、死亡当日も特に変わった様子はなかったというが、親しい知人には病気について相談していた。亡くなる２日前に話した関係者は「話が上がったり下がったりして、何を言っているのか分からなかった」と明かす。

　吉田さんは１９８５年にＣＢＳソニー（現ソニー・ミュージックエンタテインメント）に入社。宣伝畑でアイドル歌手やＴＵＢＥなどを手掛け、９７年に社内に「Ｔプロジェクト」を発足。平井堅らのミリオン歌手を次々と輩出し、プロジェクトを「デフスターレコーズ」として分社させた。

　その手腕を買われ、２００３年８月にワーナーへ。ここでもコブクロ、絢香（２２）、Ｓｕｐｅｒｆｌｙらを発掘して業績を好転させたが、絢香は俳優、水嶋ヒロ（２６）との結婚を機に昨年いっぱいで活動休止。今年３月には吉田さんが信頼を寄せていたＪＡＹＷＡＬＫの中村耕一（５９）が覚せい剤取締法違反で逮捕され、会見では憔悴した表情を浮かべていた。こうした心労も、うつの遠因になったのか…。

　「自分から積極的に話すタイプではなく、話しかけられるとニコニコと話し返すという感じだった」と語るのは、生前の吉田さんと交友があった音楽評論家の富澤一誠氏。吉田さんの業績についてこう語る。

　「レコード会社の社長は、営業・管理畑出身の人が多く、吉田さんのようにアースティストの発掘や育成、制作を担当するＡ＆Ｒ畑の人は珍しい。吉田さんは大手芸能事務所の研音とパイプが太く、研音所属の俳優が出演するドラマとタイアップしてメガヒットを飛ばした。コブクロをブレークさせたのが、いい例だ。アーティストの才能を見分ける力と、業界内の政治力を併せ持っていた。エイベックスの松浦勝人社長と吉田さんは、まさに音楽業界の２大巨頭といっていい」

　そんな“大物”の急死を嘆く声は多い。芸能ジャーナリストの渡辺裕二氏は、「とにかくガッツがあふれる人で、高校時代は野球部で甲子園を目指していたと聞いていた。音楽業界はかつてないほどの不況だが、ワーナーミュージックはまずまずの業績で、新たな企画に向けてスケジュールも詰まっていたという。一体なぜ…」と声を詰まらせていた。