きょうのコラム「時鐘」 2010年10月11日

 ようやく能登のマツタケに出合えた。ことしは比較的求めやすいそうだが、それでも財布のひもが緩む値段ではない。店先で箱入りの逸品を仰ぎ見るだけである

傍らに県外産が控え、外国のマツタケ軍団が取り巻く。格安の中国産が誘惑の手を伸ばすが、あいにく今はその気になれない。漁船衝突の一件以来、胸につかえるものがある

街で出会う中国語の会話は、やたら威勢よく聞こえる。けんかが始まった、と時に勘違いする。そんな彼らの耳に届く日本語は、餌を探すハトの鳴き声そっくりだとか。そう教わったことがある。騒々しいカラスとおとなしいハトが、またやり合っている

「戦略的互恵関係」とは、けんかを続ける、ということに違いない。教科書、靖国、ギョーザ、ウナギと、手当たり次第に争いのタネを見つけ、あきれるほどやり合ってきたのに、まだ足りないとみえる

懐が豊かになったカラスは、声もかん高くなって国際社会を騒がせる。生来のけんか上手に、さらに磨きがかかったようである。悔しいが、ハトの国とは大違い。住人たちは格安マツタケに八つ当たりするしかない。