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[22391] 【習作】氷の鎧を脱がせないで【ポケットモンスターブラック&ホワイト】
Name: アウウ◆09594bf1 ID:f6242140
Date: 2010/10/07 07:49
一匹だけポケモンが擬人化します。苦手な人は注意してね!
ポケットモンスターブラック・ホワイトのネタバレを含みます、でんどういりしてない人は注意してね!







カゴメタウン――夜になると人もポケモンも、生物たちが姿を消す、どこか懐かしさを感じさせる小さな町。
その町の裏には、ジャイアントホールと呼ばれる場所がある。
その昔、空から“何か”が降ってきた時にできた大きな穴。そこには空から降ってきた怪物が住み、近づくものは人もポケモンも食べてしまうという。
それだけならば少し怖いだけの昔から伝わる御伽噺だが、それだけではなかった。
本当に怪物は存在し、ジャイアントホールが出来た時からそこに住まっているのだから――。



夜になれば人が消えるが、昼間は至って普通の町。それこそトレーナーたちにとってはポケモンセンターに寄るためだけの、つまらない町だが。
しかし昼間とはいえ、ジャイアントホールに近付く住民はいない。
いない――――はずだった。

数年前に越してきたグレイという少女がいる。
女の子らしからぬ名前だが、本人は気に入っているようで誇らしげな彼女の名乗りを聞いた人間も多い。
元々この町に住んでいたわけではないが、数年も居着けば町の常識は少女の常識となり、彼女もまた夜、外出することはなかった。
だがやはり染まりきっていなかったのか、それとも好奇心を抑えきれなかったのか、グレイは“昼間”にジャイアントホールに向かってしまう。
夜一人でトイレに行けない子供は数居れど、昼間に一人でトイレに行けない子供は少ない。

『ジャイアントホールに行って戻ってくれば、みんなに自慢できる』

そんな軽い気持ちでグレイは町から飛び出した。


――そして、彼女は出逢う。
黒き竜 ゼクロム
白き竜 レシラム

それに肖り名付けられた、畏怖すべきもの――キュレムと。











『ヒュラララ!』

(・・・・・・もしかしなくとも、あたしってばピンチ?)

文字に起こすと少しマヌケな鳴き声だが、それを正面切って向けられるグレイにとっては冗談ではない。
洞窟の寒さもあり、チビりそうだ。

(いやさオカシイ。ジャイアントホールが出来たのってすんごい昔なんでしょ? なんでこんな元気なのさ、この子は)

人間だったら輪廻転生を大分繰り返してるはずだが、目の前の怪物はお年を召しているようには全く見えない。むしろ若々しい気がする。

(あー意地になって寒い中進むんじゃなかった! これは完全に選択肢ミスったよ!)

内心号泣なグレイの脳裏に両親の顔が思い浮かぶ。

『母さんたちはサザナミタウンで大人のお仕事があるから☆』
『一週間で戻ってくるから、いい子で待ってるんだぞ? これからお姉ちゃんになるんだからな☆』

(一人娘置いて何が大人のお仕事だよっ!? 一週間ってどんだけお盛んなんですかマイペアレント! ええい、台詞さえなければ浸れたのにっ)

走馬灯の内にも目の前の怪物という脅威は近づいてくる。
最早距離は文字通り目と鼻の先。
体が恐怖と寒さで震える。というか比重では寒さの方がデカい。

(くっ、これは定番の命乞い!? いやでもそれは死亡フラグな気がしてならない!)
「・・・・・・あ」

震えながらも何とか声を絞り出す。
最期の言葉になるかもしれない、慎重に――

「あたしの名前はグレイ! カゴメタウンに住む灰被り姫(シンデレラ)とはあたしのことよ! さあ、そうと分かったら跪きなさいな!」
『ヒュラララ!』
「マジごめんなさい」

即刻一歩下がって土下座。シンデレラにプライドも何もあったものじゃない。
――と、土下座したはずみでグレイのポケットから小瓶が零れ落ちた。

『――!?』

それを見た怪物が後ずさるが絶賛土下座中のグレイは気づかない。

『・・・・・・』
「あたしは食べても美味しくないけどもし食べるなら痛くないようにガッツリいってくれると泣いて喜びますんでどうか一つ!」
『・・・・・・』

怪物は考えるように首を傾げ、グレイはベラベラと言葉を吐き出し続ける。
そんな図が五分ほど続いたところで、グレイが漸く異変に気づいた。

「昔話でしょ(笑)とか言って本当スイマセンでしたっ・・・・・・?」

恐る恐る顔を上げると相変わらず怪物は目の前にいて、叫び声をあげそうになるが踏みとどまる。
怪物との距離が先ほどよりも少しだけ空いていたからだ。
そして自分と怪物との間に落ちている小瓶に気づく。

(あ、あれはジョウトの友達から貰った聖なる灰(笑)!? 常に暖かいからカイロ代わりに持ち歩いてたんだった! や、やっぱりこんな寒い所に住んでるくらいだし暖かいものが苦手だったりするの!?)

ゆっくりと手を聖なる灰に手を伸ばす。怪物はそれを黙って見ている。
――掴んだ!

「そぉい!」

――投げた!

パリンッ

――割れた!(小瓶が)

「や、やったの!?」

微動だにしない怪物を見て、“こういう場面で言ってはならない言葉”を言ってしまうグレイ。

『――ヒュラララ!』
「やってないかー!」

ヤケクソ気味に叫び、今度こそ死を覚悟する。

(ああ、せめてまだ見ぬ弟か妹を見てから死にたかった・・・・・・母さん、父さん、先立つ不幸をお許しください)

『――!!』

言葉にならない声と共に、凍えるような風がグレイを襲う。

あ、氷付けか、と他人ごとのように思いながらグレイは意識を失――――わなかった。

「・・・・・・はて?」
「――あー、スッキリした。まったく我が力といえど自分の鼻水まで凍らせることはなかろうに」

それを疑問に思ったグレイが固く閉じていた目を開けるとそこには同じくらいの少女が一人立っていた。
少女は透き通るような青みがかった白い髪をしている。そう、それは喩えるならば怪物の肌のような、氷の色。申し訳のように身に着けたぼろ布のみずぼらしさを感じさせない神々しさを持つ彼女を“少女”などという表現で収めていいのかはわからないが。


「ここ数百年、鼻の穴が痒くて痒くて堪らなかったのが漸く解消された。うぬのおかげじゃ。いや、私の言いたいことが一発で伝わるとは思わなかった。その灰を私の鼻に入れてくしゃみをさせてくれ! という私の思いがうぬに届いたのじゃな!」
「あ・・・・・・あう?」

うんうん、と頷く少女にグレイは困った顔をするしかない。
いくら子供でも、目の前の現実は許容し難い。
怪物が、いきなり、少女に、なった、などという現実は。

「この気持ちを伝えるためにどれだけの生命を食い荒らしたのか知れぬな。あまり生態系を崩すのは好ましくないのだがのう」
「あー、えーと、あのぅ?」
「ん? なんじゃなんじゃ。言いたいことがあるなら言ってみろ。うぬと私は最早対等の存在、相応の敬意と態度を持って接しようではないか」

偉そうに言う少女。だが混乱中のグレイに気にする余裕はない。

「で、ではお言葉に甘えさせていただいて」
「うむ」

むしろ普通に敬語で返してしまった。

「あなたがさっきまであたしの目の前にいた怪物さんですか?」
「怪物などと言ってくれるな。本来の私はもっとスマートなのだからな。それにうぬたちが付けてくれた名前があるだろう?」
「な、名前・・・・・・?」
「キュ、キュ・・・・・・」
「キュ・・・・・・キュレムさん、ですか?」

まさか、という気持ちとやっぱり、という気持ちが混ざり合った言葉。
対する少女の返答は、

「おお! そう、それだっ。少しゴツい気がしなくもないが、うぬたちがくれた大切な名前じゃからな」
「そ、その、キュレムさんは何故そのようなお姿に?」

まさか聖なる灰の力!? とグレイは驚愕する。

「なに、次元連結システム・・・・・・ではなく、私の力のちょっとした応用だ。集中しないと使えないからこの姿になるのは数百年ぶりだがな。あれだけ鼻が痒いと集中もできぬ。この姿ならば掻きたいところをいつでも掻けるというのにな」

「は、はぁ。なるほど・・・・・・」
「そもそもこの星の環境が我に合わぬのじゃ! 否が応にも重苦しい氷の鎧を纏わねばならぬのだからな」

星とかかなり大きな話になってきたが、グレイはスルー。この状況でそんなことにまで頭が回る子供はいないだろう。

「じゃあ聖なる灰の力じゃなかったんだ・・・・・・がっかりというか逆に驚愕というか」
「そう落ち込むではない。私の氷を溶かす灰なのだ、大したものだぞ? 実際」

その灰ももう散ってしまったんですが・・・・・・とグレイは涙目。

「さて、私の力が弱まったとはいえこの洞窟は寒い。外に出ようではないか」
「えっ、あたし生きて帰れるの!?」
「? 何を言っている? まあ死にたいのならば止めぬが、私としては久しぶりの友人じゃ、うぬが寿命で死ぬまでは付き合うつもりなんじゃが」

また聞き捨てならない言葉が聞こえたが、グレイは助かったことに歓喜して聞いていない。
灰被り姫らしい、彼女の不幸である。

「では参ろうか。うぬの家へ」
「あ、はいっ!」
(こ、ここここの子も来るの!? あ、いやでも下手に断ったりしたらあたしってばマルカジリ? あうあう・・・・・・)
「外がどうなっておるのか楽しみじゃな」





あとがき
自分の体を凍らせちゃうドジっ子なキュレムが可愛くて書いた。
時系列的には主人公たちが旅に出る直前です。
次回あとがきにキャラ紹介を載せますのでこの作品の主人公グレイとキュレムたんについてはそこで。



[22391] その2
Name: アウウ◆09594bf1 ID:f6242140
Date: 2010/10/07 21:26
「うーむ? そこに居るのはグレイか? これはこの町に来て初めての本官の仕事であるな! 不良少女の補導である!」
「む? 誰じゃそこのヒゲモジャは?」
(逃げてー! お巡りさん超逃げてー!)

ジャイアントホールからキュレム(少女ver)を伴っての帰り道。
カゴメタウンに到着し、後は階段を上がればすぐにマイホーム、というところでこの町唯一の公務員、お巡りさんに遭遇。
昼間は町に、夜間はポケモンセンターに常駐しているはずのお巡りさんとまさかのエンカウント。
仕事をしていないとばかり思っていた彼が夜の見回りを一応やっていたらしいことに驚愕するがそれは一瞬。
すぐに自分の隣の少女の存在を思い出し、あたふた。
下手なことをしたら殺られる。自分もお巡りさんも。

「一緒に居るのはグレイの友達か? ならば一緒に補導であーる!」
「うむ、なかなか立派な髭じゃの。手入れも行き届いておる」
「ほうほう! 目の付け所が鋭いな君は! そうなのである! 本官の髭は毎日セットに一時間以上かけて――」

キュレムの言葉に気をよくしたお巡りさんが髭を撫で、誇らしげに語り始める。

(――今しかない!)
「こ、こっち!」
「む・・・・・・? いやしかしあやつが――」
「いいから!」

即断即決即行動。
キュレムの手を引いてグレイは走り出す。

(あの人の髭自慢はほっとけばいつまでも続く! そのまま朝までよろしく!)

髭を褒められたのだ、彼も本望だろうと勝手に決めつけてダッシュ。
二人は階段を駆け上がり一気に家まで駆け抜けた。



「はーっ、はーっ・・・・・・」
「どうしたのじゃ、いきなり」
「・・・・・・」

特に気分を害した様子のないキュレムを見て、グレイは彼女の評価を上方修正。どうやら今時のキレやすい若者ではないようだ。

「い、いやあなたのことをなんて説明したものかと・・・・・・」
(とりあえず気がついたらあの世でした☆ 展開はなさげ・・・・・・かな?)

ひとまず安心だが、それにしたってピンチなことには変わりない。
幸いなのは両親が不在だということと、お巡りさんがキュレムの存在を“グレイの友達”だと認識していること。
しかし前者は一週間という期限つき後者に至っては明日にでもお巡りさんに逢えば言及されてしまう。

(もしも彼女の正体が怪物だとバレて騒ぎになったらヤバい。『うるさい虫め』とか言って殺される。いくらこの子が温厚だとしても騒ぎになるのはマズい!)

最早グレイの中でキュレム=破壊神の方程式が成り立ち、グレイの頭の中には如何に彼女から逃れるか、または如何に彼女の脅威から町を守るか、しかない。

「ああ、そうか・・・・・・確かに生物は自分と異なるものを排他しようとするからの! 私を守ろうとしてくれていたのか、うぬは!」
「え、あ、いや・・・・・・まあ、そう、かも?」

怪物verの時とは違う、キラキラと光る瞳。
それは尊敬の眼差しにも見えた。

「感動した! 人間も変わったのう・・・・・・“王”が居た時とは考え方も変わったようじゃ。ううむ、しかしうぬには借りを作ってばかりじゃのう」

キュレムの表情が(`・ω・´)から(´・ω・`)に変わる(※イメージです)。

「いえいえ! 誰かに親切にするのは当たり前のことですよ!」
「――うむ! うぬの態度には感服したぞ。私にはこの身しかないが、できる限りうぬの力になろう。なんでもいいぞ? 世界が欲しいでも明日が欲しいでも彼女が欲しいでもな!」
(選択肢が色々とツッコミどころ満載なんですが――!?)

泣きたくなる気持ちを抑え、しかし気づく。

(これってもしかしたらチャンス・・・・・・? ううん、今しかない!)
「な、なら!」
「うむうむ」
(遠くでひっそりと暮らしてください! こう言うんだ!)
「・・・・・・と」
「と?」
(言え、言うのよっ、グレイ!)
「と・・・・・・遠くの場所に一緒に行きたいなあ、なんて・・・・・・えへ?」
(バ――バカバカっ、あたしのヘタレェ!)
「――うむ! 委細承知! 私もこの世界を見てみたかったところだったのだ、やはりうぬと私は何らかの絆で繋がっているのだな!」











早朝。そう、まだ日も昇りきってもいないような朝早く。
グレイとキュレムは家を出て、カゴメタウンのゲートの前に居た。

「では参ろうか! 思う存分、世界を見て回ろう!」
「・・・・・・はい」

どうしてこうなった。
それがグレイの心からの疑問だった。
いや、理由は分かっている。分かってはいるが理解したくない。

ただ言い訳をさせてほしい。

(だってこの子はジャイアントホールの化け物なんですよ? 遠くに行け、とか言ったら『お前が遠くに行けば相対的に私が遠ざかるだろう?』とか言って殺されますよぅ! だけど何故かキュレムさんはあたしを気に入ってるみたいだし? あたしと一緒に旅して、あたしよりもお気に入りの“何か”を見つけてくれればあたしは解放されて町も無事、彼女もできる!)

いや、彼女はいらないが。
ともかく無理やりにでもそう思い込むことで自分を安心させ、前向きな思考を心がける。

「まずはビレッジブリッジを渡って、ソウリュウシティ・・・・・・でいいですよね?」←既に敬語で確定
「む? なんじゃそれは?」
「へ? タウンマップ・・・・・・つまり地図ですよ」

地図もなしに子供が歩き回るのは自殺行為。場所によっては迷子で済まない。

「ふーむ・・・・・・旅にそんなものは不要じゃろう。どれ」

キュレムがタウンマップに触れると、ピキピキッと凍りつき、そして呆気なく砕けてダイヤモンドダストに一瞬で変貌する。

「・・・・・・」
「旅は気の向くまま風の向くまま。私がこの星に来る時も気の向くまま重力に引かれるまま、じゃ」
(ああ、やっぱりあたし近い内に死ぬかもしれません・・・・・・)

――グレイの旅は前途多難。だが彼女にはもう一人の少女が常に共に在る。
黒でも白でもない、透き通るよう(クリアー)な少女が。











「はぁ!? 通行止めって橋がですが!?」
「はい。あなたで一旦通行止めになります。橋の老朽化が進んでいるのでその工場があるんですよ」
(逃げ帰ることもできないってことですか・・・・・・本当に薄幸な灰被り姫みたいだよ)

このゲートに来るまでも野生のポケモンはキュレムを恐れているのか近づいて来なかったが、トレーナーたちは別。朝っぱらから勝負を挑まれて断るのが大変だった。

(そりゃポケモンを持ってない子供が此処まで来れるはずないしなぁ)

トレーナーなら色々と自由が利くと思ってカモフラージュに空のボールを持ってきたのがミスだった。

(ポケモンを捕まえたくても、キュレムさんが居るとなると・・・・・・昔話が本当なら、食べられかねない)

そんなトラウマを持ちたくはないのでグレイはポケモンを捕まえる気はない。
別にジムを制覇するのが目的でもないし、バトルを断るのも一苦労なのでボールもソウリュウシティに着いたら預けるつもりだ。
今はボールなどよりもタウンマップが欲しい。
この辺りの地形はまだ何となく分かるが、ソウリュウシティよりも向こうにグレイは行ったことがない。グレイにとっては死活問題だ。

「懐かしい匂いがするな、この辺りは」
「来たことがあるんですか?」
「敬語はいらぬと言っておろうに。・・・・・・来たことがあるわけではないが、知っている匂いがある。私が知る匂いは少ないからの、間違えぬよ」

そう言うキュレムの視線の先には何もないようにグレイには見えたが、キュレムには遠くに塔が見えていた。聳え立つ螺旋の塔が。

グレイは首を傾げ、キュレムは笑いながら一歩踏み出した。

「さあ、まだ始まったばかりだ。慌てずゆるりと行こうではないか」

髪の色と同じ水色のワンピース(元はグレイの)を着こなすキュレムがグレイを促す。

「あ・・・・・・はい」

名前と同じ色のロングスカートを翻し、グレイもキュレムの後を追う。
今は万が一にもカゴメタウンに危害が及ばないようにするために先に進むべきだろう。

(・・・・・・本当、展開が早すぎだよ。あたしってば昨日までは普通の女の子してたんだけどなぁ)

好奇心は猫をも殺すと言うが、猫どころか人も余裕で殺せる。まずはそう心の辞書に書き加えてから。

「それにしてもソウリュウシティに近づくにつれてトレーナーが弱くなってる気がするんだよね・・・・・・? なんかこう、雰囲気でだけど」
「うぬも感じておったか、ジャイアントホールの周りの生物は私の力を感じ取り襲って来なかったが、ここから先は身の程を知らぬものが襲いかかってくるやもしれんな」
(・・・・・・草むらは避けよう、うん)








あとがき
この作品を書きたかった理由の一つとして、橋とか通行止めになってなかったらプラズマ団涙目だよなあ、と思ったからだったり。
まあキャタピーとかコイキング60lvを出してくるトレーナーたちもいますが。
以下人物紹介です。


グレイ
自称カゴメタウンの灰被り姫(シンデレラ)
主人公の女の子。
年齢はゲームの主人公たちと同年代。
少し大人びてる気がするのは主人公たちのグラの年齢が一気に上がったように見えたので精神年齢も少し大人にしたから。
せいなるはいをくれる友人がいるあたり、交友関係は広いらしい。

手持ちとは言えないが、仲間はキュレム(Lv75)。
個人的にはCVはアリソンとかフェイト(作者の趣味です)


キュレム
この作品のヒロイン(?)ってかヒーローのクーデレ娘。
襲い来るプラズマ団をちぎっては投げちぎっては投げの大活躍・・・のはず。
ゲームでは微妙なこごえるせかいもこのSSではロマン仕様のキュレム最強技です。
人間になれるのはツッコマナイデクダサイ。人間との対話は重要ですよね、やっぱり。
何やら色んなフラグを乱立させているフラグメイカー。しかし回収されるのかは不明。
個人的にはマイナーチェンジ版の看板ポケモンになると思う。
CVはとがめとかなのはを(やっぱり作者の趣味)。


このSSはほのぼのメインを目指しており、シリアスな展開はNと関わらないかぎりありません。
まともなバトル描写もほとんどないかと。
またそのバトルもロマン仕様でわざの効果や威力などがゲームとは異なります。ご了承くだしあ><

このSSを通してキュレムたんの魅力が少しでも伝わればいいなぁ!



[22391] その3
Name: アウウ◆09594bf1 ID:03f7ed78
Date: 2010/10/09 16:48
ソウリュウシティ。
ポケモンリーグに最も近い町であり、つまりはチャンピオンを目指すトレーナーたちが最後のバッジを勝ち取りに訪れることの多い町である。
この町のジムリーダー、シャガとアイリスのことはポケモンリーグに興味のないグレイも知っている。
カゴメタウンから近いということとリーダーであるアイリスが自分よりも幼い少女であるというも大きいが、このジムのトレーナーたちがドラゴンタイプの使い手であることも理由の一つである。

カゴメタウンの灰被り姫(シンデレラ)、グレイ。
今でこそ女の子らしい名乗りをする彼女だが、昔はその男っぽい名前もあり、可愛いものよりカッコいいものに憧れていた時期がある。
幼い時にテレビで見た、カントー・ジョウト地方のポケモンリーグの試合。
チャンピオン・ワタルが華麗に勝ちを決めたはかいこうせんの光は今でもグレイの目に焼き付いて離れない。

(・・・・・・でも人間に向けてはかいこうせんは危ないよね)

それはさておき、ドラゴンタイプに憧れを持っていたグレイだがキュレムと出会い、既にトラウマに変貌している。
カゴメタウンよりはいくらか施設があるとはいえ、トレーナーではない人間にとってはさほど魅力的とは言えないソウリュウシティ。

(キュレムさんはこの辺りを知ってるみたいだし、あんまり興味もないみたいだからポケモンセンターに寄ったらすぐに出発しよう)

カゴメタウンからソウリュウシティまでの道のりは長いがグレイはもう慣れているし、キュレムがこの程度で疲れるはずもない。
夜にはセッカシティに着けるだろう。
――などと、予定を考えていた時だった。
その“老人”がグレイとキュレムの前に姿を表したのは。

「――待ちなさい」
「?」「?」

ポケモンセンターまでもうすぐ、というところで背後からかけられた声。

「・・・・・・ええと、あたしたちのことでしょうか?」
「ああ」
「んむ? グレイ、知り合いか?」
「知り合いではないですが、知ってはいます」

老人が他の町と比べて多いこの町だが、グレイは彼ほど覇気のある老人を他には知らない。

「此処に来るまでに話しましたよね? ジムリーダーの一人、シャガさんです」
「――はじめまして、ソウリュウシティにようこそ」

温厚そうに微笑むジムリーダー・シャガ。
グレイは彼が話しかけてきたことに多少の疑問は抱けど、ジムリーダーが一般人と関わることは珍しいことでもない。
グレイは知らなかったが、イッシュ地方にはモデルをやっているジムリーダーとて居るのだから。
それに何よりキュレムとの二人旅は早くもグレイの心を蝕んでいた。
無論、グレイの被害妄想でしかないことではあるが。

「君たちはポケモントレーナーのようだが、やはりジムに?」
「いえっ、私たちはバッジを集めているわけじゃないんです」

勘違いされる前に否定。

(なんであたしはこういう時に限ってリーダーさんに会っちゃうんですかっ!?)

ポケモンを一匹も持っていないことに気づかれれば、恐らくカゴメタウンに強制送還、お巡りさんのお世話になるだろう。
それだけは避けなければならない。

(一応キュレムさんが居るけど、流石にリーダーさんには勝てるわけないって!)

ここで補足しておこう。
カントー地方にはサンダー、ファイヤー、フリーザーと呼ばれる伝説の鳥ポケモンがいる。
伝説のポケモンについての伝承や噂というのは何処の地方にもあるが現在ではほとんどが解明、またはガセと判明している。
上に挙げた三匹の鳥ポケモンは存在が解明され、証明された伝説のポケモンと言える。
イッシュ地方における伝説のポケモンと言えば二体の龍が真っ先に挙げられるが、この二体の存在は文字通り伝説として残っているだけで存在は証明されていない。
逆に存在が証明されている伝説のポケモンとしてボルトロスとトルネロスが挙げられる。
捕獲こそされていないもののその存在は様々な場所で確認されている。

そして最後にキュレム。
キュレムはカゴメタウンのみで語られるだけの存在で、他の伝説のポケモンたちのようにメジャーではない。
無論、隕石が落ちたジャイアントホールには研究者たちによる調査が入ったがキュレムの下にまで辿り着いた者は居らず、結局キュレムについてはただの言い伝えに留まっていた。

だからだろう、グレイはキュレムの力をまだ理解してはいなかった。
少し珍しいだけの、少し力が強いだけの、そんなポケモンだと思っていたのだ。
そう、喩えるならばカントー・ジョウト地方のカビゴンやラプラスだったり、シンオウ地方のフワンテ、イッシュ地方で言うムシャーナ。
それらと同類だと、勝手にグレイは決めつけていた。

しかし彼女だけを責めることはできない。幼い頃にカゴメタウンに越してきたグレイに“カゴメタウン周辺のポケモンたちが恐れる存在”の脅威を理解できるはずがないのだ。

少し長くなったが、これで補足を終了しよう。




「カゴメタウンへと繋がるゲートは通行止めになってしまったが、家には戻らないのかい?」
「はい。ジムに挑戦することが目的ではありませんが、イッシュ地方を回ってみたいと思っています」
「いやいやイッシュ地方とは言わず、ゆくゆくは世界を回ろうとも思っておる」
(どうしてあなたはそうやって話を大きくするんですかぁ! あたし、そんなの聞いてませんよぅ!)

グレイの説明を胸を張って補足するキュレム。
胸の大きさ自体は残念だが。

「ほう、世界か」
「うむ。世界はまだまた広いと分かると逆に燃えてくるだろう?」
「ああ。私の孫も少し旅に出ているのだが、あの娘はまだ君たちのように視野が広くはない」
(シャガさんが良いお爺ちゃんの顔つきになってるし・・・・・・まあ結果オーライかな?)

何度かソウリュウシティでシャガを見かけたことはあったが、今のような表情は初めて見る。
少しだけ、イッシュ最強のジムリーダーのことが好きになった瞬間だった――。











(・・・・・・いや、確かに良いお爺ちゃんだなぁ、とは思ったよ? 思ったけれども・・・・・・)
「むむっ、このとろけるような食感・・・・・・人間の顎が弱くなるのも分かるのう!」
(なんでご飯をご馳走になってるんだろう)
「はははっ、そう言ってもらえると私も嬉しい」
(なんでっ!? オカシイでしょ、色々と!)

ひょっとしてこの人ただのボケ老人なんじゃないか、と思い始めるグレイ。

「話し込んで君たちの予定を狂わせてしまったお詫びだ。遠慮せずに食べるといい」
「は、はぁ・・・・・・ありがとうございます」

エプロン姿がやけに様になっているシャガに礼を言って、グレイも運ばれてきた料理に口をつける。

「あ、美味しい」
「これでまた一つ旅の楽しみが増えた。うぬの料理にも期待しておるぞ? グレイ」
「いや、流石にここまでの味はあたしには・・・・・・」

娯楽の少ないカゴメタウンで育ち、料理を趣味にしていたグレイにとってもシャガの料理はまさに絶品。
キュレムの期待には応えられそうにない。

「料理は旅をより良いものにしてくれる。人も、ポケモンも。人が作る料理はどんな出来であれ既製品には出せないものを出してくれるのだよ」
「それは何となく分かる気がします」

現在進行形で自分たちが体験していることだ。こんな料理が毎日食べられるのなら旅も悪くない。

(でもこんな料理食べた後だと、あたしの料理を出したらキュレムさんに殺されそうな気がするんですけど!)
「今日はこの町に泊まっていくのだろう?」
「はい。もう日が暮れてきてしまいましたし、カゴメタウン育ちのあたしたちにはまだ夜は少し辛くて・・・・・・」

昨日から衝撃の連続だったこともあり、気づいていないだけでグレイの体力は限界に近づいていた。

「確かにあの町の人間なら夜に慣れていないのは仕方のないことだ。だがそれは決して悪いことばかりではない」
「世界には一日中明かりが点いている町もあるそうですけどね」
「イッシュではライモンシティやヒウンシティが比較的賑やかで、カゴメタウンやこの町など比べものにならないほど活気に溢れているな」



――そんな世間話を交えながら、シャガとの食事を終えた。
最後にまた礼を言って、グレイとキュレムはポケモンセンターを目指す。
シャガとの話に出たヒウンシティなどではポケモンセンターだけでは部屋が足りず、他にホテルもあるらしいがソウリュウシティにはポケモンセンターしか宿はない。それでも部屋には空きはあり、簡単に取ることができた。

(少し予定が狂ってしまったけれど、傷心のあたしにはシャガさんの優しさが身に染みる・・・・・・キュレムさんも気に入ってたみたいだし、明日の朝になったら『私は此処に残ることにした』とか言ってくれないかな)

キュレムの眠る上のベッドを見て、そんなことを考えながらグレイは瞳を閉じた。











「――何の用だね? カゴメタウン育ちの君には随分と遅い時間だが」

カゴメタウンの人間でなくとも、普通の人間、特に子供なら夢の中にいる時間帯。
――キュレムはシャガの家を訪ねた。

「グレイの話に“龍の心を知る少女”という言葉が出てきた時点で何かはあると思っていた。此処には“塔”もあるからの」
「・・・・・・」
「幸か不幸かそのアイリスという人間は此処には居らず、代わりと言ってはなんだがうぬが我らに声をかけてきた」
「ふむ・・・・・・」

ジャイアントホールからほとんど出たことのないキュレムにも、この町には多少の縁がある。
とはいえここまで大きなアクションがあるとは思わなかったが。

「私としては美味いご飯を食べることが出来て、多少なりともグレイとの距離が縮まったりと良いことづくめなのだが――うぬはそうでもないのではないか?」
「そんなことはない。私も君たちのような若者に会うことが出来たのは幸運だった」

キュレムの言葉にシャガは表情を崩すことなく返答する。

「・・・・・・まあ、うぬが我らをどう思っていようと知ったことではないのだが」

その様子にキュレムはつまらなそうにそっぽを向く。

「それに私もあまりこの町に長居したくはない。“奴ら”を刺激したくはないしの」
「では何処に?」
「言ったであろう? 世界を見て回ると。せっかくの機会だ、同郷の者を探すのもよいかもしれん」

今度は一転、楽しそうに笑ってシャガを見る。
見目相応か、それよりも幼くさえ見れるキュレムの様子にシャガはモンスターボールに伸ばしていた手を離す。

「・・・・・・私には君たちの旅を止める気も、権利もない。ただジムリーダーとして町を見守り、人々を守るだけだ」
「そう堅苦しいことばかり言うな。うぬはただ私とグレイの旅の門出を祝福すればよいのだ。グレイが望まぬ限り暴れたりはせぬよ」

鬱陶しげに手を振り、「むう・・・・・・」と唸るシャガを見て、また笑う。

「“奴ら”と違って私は英雄などに興味はないし、“王”にも興味など湧かぬ。グレイに重荷を背負わせる、恩を仇で返すような真似もせぬ」

「それに今の姿ではな」と苦笑して付け加える。それが少女の姿のことを指しているのか、それとも違うナニカを指しているのかは誰にも分からない。

「中立、ということか」
「・・・・・・だから間に立つ気もないと言っている。まったく、人間も変わったと思えばうぬのように昔と変わらない者もいるのだな」

――――これはずっと後のことになるが、ポケモン図鑑にキュレムのページが加わることになる。その時奇しくも彼女の分類は“きょうかいポケモン”。シャガの言う、2種の間に立つ境界の存在として図鑑に刻まれるのだった。







あとがき
私はホワイトを買ったのもありますが、シャガのキャラがよく分からない・・・。
一人称って私でいいのかな?それともわし?
それとたぶん今回みたいな回はしばらくありません。これから先は二人の平和な旅路が延々と綴られていきます。
次回はソウリュウシティ出発~プラズマ団(したっぱ)が登場。犠牲者に南無。
では以下人物紹介

シャガ
ソウリュウシティということでアイリスが登場すると思った方ごめんなさい。オジサマの方です。
アイリス共々いまいち設定がわからないですが、割と重要なポジション。・・・しかしキュレムさんがあの調子なのでこの設定が活かされることはしばらくないでしょう。
ゼクロムとレシラムだけではなくキュレムについても知っているようだが・・・?

料理上手のいいお爺さん。
このSSだけの裏設定として、ジム戦用の他にプライベートのポケモン持ち。
キュレムさんを前に手を伸ばしていたボールの中にはオノノクス(68Lv)が。


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