祝スパロボ出演ということで。
次は据え置き機で登場だ! ……だといいなぁ。
遠く遠い宇宙の辺境、光でさえも絶望するほど離れた僻地。
荒野に夢、町に暴力が溢れるならず者どものパラダイス。
惑星エンドレス・イリュージョン。
所詮は、宇宙の吹き溜まり。
しかし、流刑地であったこの星には世界規模で騒乱があった。
復讐者と底知れない善人との物語である。
怒りを知らず愛を説く男と愛を失い怒りに生きる男の夢である。
だが、そのどちらの夢が叶ったにせよ、男たちのその後を想像することは出来ない。
目的を果たし、失い、叶え、水泡に帰した後、彼らは一体何を見るのか。
ここは宇宙の最果て、惑星エンドレス・イリュージョン。
かつて復讐に生きた男は、目的を喪失しながらも彷徨い続け……
唐突に、その消息を絶ったのだった。
男の知り合いは誰もがいつものことと笑い、帰ってきたときを思って話に花を咲かせていた。
その期待を裏切ることなく、一年後。
「何か食い物と……調味料を、ありったけ……それとミルク、も……」
などと言いながら長身をばたりと倒す男の姿を皆で笑うのだった。
男は荒野に転がっていた。
冷たい感触と土の匂いから目の前にある青色が空だと分かるまで数秒を要し、理解が及ぶや否や空腹を思い出した。
ひょろりとしたその痩身は枯れ木を連想させ、こけた頬や生気の無い瞳がまるで死人のようであった。生きていることを表す唯一の主張なのか、
腹の虫だけは男の様相に似合わず元気だ。
どう見ても行き倒れであるが、黒のタキシードを着た行き倒れというのは早々あるものではない。ましてや、男の腰にはそこそこ値の張りそうな
銃のようなものが下がっているのだから、無一文というのも怪しい。
服と同様黒いテンガロンハットを押さえながら男はフラフラと立ち上がり、燦々と照りつける太陽をしばし睨み付け……ふと気づいた。
「ここ……どこだ……?」
記憶にある日差しと比べて随分弱弱しい太陽に首を傾げ、眠そうな目を正面へと向ける。長身だが猫背故にそれほど高くない視界で周囲を探り、砂煙を見つけた。
歩いていけば半日はかかりそうな距離で起こった砂埃だったがそれは徐々に男へと近づいてきており、ぼんやりとしていた男はさり気無く腰のモノへと手を伸ばしていた。
凄まじい速度で近づいてきたのは、見上げるほどの巨大な物体だった。傍にいるだけでその大きさに威圧されそうなものだが男は変わらずとぼけた様子である。
「あの~……すいませ――」
《どうしてこんなところに民間人がいる……貴様、一体どこから紛れ込んだ!?》
巨大な人型から発せられる怒声に男は肩を竦め、ボソボソと返答する。
「知らない。気がついたらいただけだ。すぐ帰る」
《帰る!? まもなく戦場になるこの場所から生身で生きて帰るつもりか……ハハッ、ルーキーなどよりよほど腹が据わっているな!》
怒声の中には、愉快と取れるような明るい声質が混ざっていた。
「それじゃそういうことで……んぁ?」
独りで納得を始める何かに男は踵を返し、その途端に地中から飛び出してきたソレへ怪訝そうな声を上げた。
黄色がかった歯が異様な、人型に近いがパーツとは関係なしに化け物と呼ぶより他にないソレ。
《兵士級ッ、いつの間に……い、いけない、逃げなさい!》
戦慄した声が拡声器に乗って大気を渡る。網膜投影システムが血の惨劇を届けるまで最早幾許もないと彼女は信じ、己の不手際を呪いながら照準を向け、
「おいおい、食うならともかく食われるのはごめん、だな」
男がいつの間にか手にしていた蛮刀でその強靭な顎による噛み付きを防いでいるのを目撃するのだった。
《うそでしょ……?》
意味も無く目を擦ってみるが地味に痛いだけで映像に変化は無かった。そうこうしているうちに男はソレの顔を横殴りに蹴飛ばし、蛮刀を開放するや相変わらず
眠そうな目を彼女へと向けた。
「思わずやっちまったが、どうすりゃいい?」
《ば、馬鹿なこと言ってないで早く殺しなさい! 貴方死にたいの!?》
女性の声を受けるようにソレは間髪入れずに立ち上がり、男へ再び牙を向いて襲い掛かる。が、それさえ先ほどの焼き増しか、
茫洋とした雰囲気からは考えられないほど俊敏に動く彼の敵ではなかった。
「……だとよ。そういうわけだから、てめぇに恨みは無いが……」
ギリギリと音を立てるソレであったが男はビクともせず、訥々と言葉を紡いで蛮刀を振るう。彼女から見れば剣術の"け"の字さえ見えない荒々しい一振りは、
しかし、彼女が知る中で最上級の切れ味を披露し、兵士級と呼ばれたソレは二つに両断されて地へと転がった。
装備と呼べるものを殆ど持たずに人類の天敵を打ち倒した男に対して女性は戦慄を禁じ得ず、思わず己の頬を抓る。
無論、痛い。
「なんだ、やけに柔らかいな」
そんな女性の衝撃など露知らず男は絶命した何かをちょんちょんと突いていた。
《あ、貴方……一体何者……?》
震える声が堪らず口からこぼれ出た。拡大されたその声を聞いて男は振り返り、
「俺か? 俺はヴァン……人呼んで、夜明けのヴァンだ」
何でもないように応えた。
その動作に、ハットに結わえられたリングが涼しげな音を立てる。
始まりか終わりを告げるように。
以下はネタとした浮かんだものを徒然と。
「初めて聞いた時は、『ああ、働かせすぎて壊れたか』って思ったわよ。だってそうでしょ? 生身で刀一本で兵士級を難なく倒す男だなんて
……そんなの真面目に報告されたって、ねぇ。んなこと出来るのがいるだなんて聞いたことはあったけど、ホラばっかだと思ってたし。
けど、まさかこの目で見ることになるなんてね。ま、あたしはこの目で見たものまで信じないような馬鹿じゃないし、それはそれで話が早くてよかったんだけど。
無職で困ってたみたいだし向こうにしても渡りに船だったんじゃない? ……にしても、あの味音痴だけはどうにかならなかったのかしら。
おいしくないのは分かるけどあそこまでされると流石に引いたわね」
「今までのループにはいなかったあの人のことが、俺はあまり好きじゃなかった。向こうもどういうわけか俺のことを
いきなり馬鹿兄貴呼ばわりしてきたし、彩峰以上の規律違反に協調性絶無ときて仲良くなれないとあの時は思ったんだ。
先が読めない不安とか他にも色々あって余裕が無かったし、そうこう悩んでる俺の横であの人は高鼾か知恵の輪遊び。
頭にきて修正してやろうと思っても白兵戦の実力は折り紙つきでちっとも敵わず仕舞い……けど、だからって負けを認めたわけじゃないんだ。
俺は、いつか絶対にあの人に勝つんだって。……強さの秘訣って牛乳だったのかなぁ。毎日飲んでたし、あの人」
「私にとってリーディングは忌むべき能力でしたが、同じくらい頼りにもしていました。けれど、あの人の心は殆ど読めなくて焦りました。
いえ、正直に言えば恐ろしかったです。BETAと生身で戦えるだけの力を持った人の考えが分からないというのは。
それが普通なんだとタケルさんは言ってくれました。あの時のことは今でも思い出せる大切な思い出の一つです。
たまに読めた時に見えたあの人の暖かい色と冷たい色……あれは一体誰を思っていたんでしょうか。強く、強く人を好きに思って。
ソレと同じくらい憎く恨んで。今でもよく分かりません。……あと、あの人が時々言っていたドーテーってなんのことでしょうか?」
「剣で負けることなどそうは無いと思っていたが、あの者は凄まじい腕前であった。剣術とは口が裂けても言えぬような獣めいた剣であったが、
あれが恐らく彼の者が戦場を生き抜きながら磨き上げた己が牙だったのであろう。その雄雄しさを前に術理がどうだと小手先の技が
どうだと言っていたのが私の敗因に違いない。あの者に出会わず戦場に出ていれば私はいずれ命を落としていただろうと、
時折見る夢を前に思うのだ。今でも私の剣が届くようには思えぬが、さて、あの者は変わらず傍目には気の抜けた様子で
立体パズルとやらを弄っているのであろうな。……しかし、結婚か。幸せで、幸せで、幸せの絶頂……ううむ、よい言葉だ」
「何だか馬鹿にされてるような気がして合わないと思ってたわ。こっちが真面目に頭使ってるときにもあの人は食べるか遊ぶか寝ている始末で、
教官も手を焼いていた感じだったし、後の無い私たちにどうしてこんな荷物を……って、正直言って副司令のことを恨んだわ。
彩峰だけでも頭が痛いって言うのに、そこに白銀とあの人、地獄のトリオよ、全く……でも、三人ともやるときはやるから、
今の私が昔に戻れたら茹だってる自分に力を抜けって言えると思う。私が考える以上に三人は結果を出せるんだって。
皆でやれば出来ないことはないんだって。……なによ、少しくらい綺麗事を言ってもいいでしょ。ええそうよ、始末書とかもういいのよ!」
「戦場においては上官、基地においては教え子でした。白銀と並んで扱い辛い人だったわ。始めは夕呼の嫌がらせかと思うくらい色々と……
い、色々と。ぅん、まあ今だから笑って言えるようなことがあれやこれやと。でも白兵能力だけは極東一……いえ、世界一だったのかもしれないわね。
突撃銃で撃ち込んでも全部切り払えるとか、初めてみた日は夕呼の改造人間かもしれないって本気で思ったもの。
普段のボーっとした姿からは考えられないくらいカッコい――ん"ん"ッ、凛々しくて、あれで追っかけになった子も多いんじゃないかしら。
……て、手は出さなかったわよ! そこまで私だって飢えてないし……ほ、ホントよ?」
「私にとってあの人はちょっとおかしくて冷たくて、強くて優しい人でした。花を植えるのを手伝ってくれたのにあの狙撃の時は何も言ってくれなくて……
そうですね、タケルさんとはまた違った優しさのある人だったのかもしれません。あの人はよく自分のためだって言ってましたけど、
それだけの理由で戦えるとは今でも思えなくて、皆のことを助けてくれたのは事実ですし……ああ、やっぱり始めの訂正します。
あの人は優しくて強い人です。どうしようもなく不器用で花を植える時ももう無茶苦茶で……あのパズル、ホントに解いたことあったんでしょうか」
「ボクよりサバイバルが得意な人なんて父さんくらいだと思ってたけど、意外にいるんだね。あの人、飲まず食わずでも割と平気だって言ってたし、
遭難しても間違いなく生存確率が高いよ、うん。胸に大きな痣があって手術した後だって言ってたけど、アレってきっと刺青だよね。
胸を開くような大手術してあんな立ち振る舞いが出来るわけないもん。あ、でも、よくタケルが模擬戦だぁ、って
突っかかってたのをあしらってたし、もしかしたら獅子の心臓とかに入れ替えてたのかも。って言うかそうじゃないと納得いかないことが多いんだよね、あの人。
……どうしたの、そんな顔して?」
「あの人は本物の一匹狼だった。あたしはきっと独りじゃ生き続けられなかっただろうけど、あの人は周りがどうなっても
どこででも生きていける……そんな気がしてた。タケルみたいにお喋りじゃなかったからあんまり詳しいことは皆も知らないけどそれだけは確信してる。
だって、殴られたら殴り返すって、殴られなくなるまで戦うって、それだけははっきり即答してた。あたしは、そこまでなれない。
そこまで強くならなくてもいいって……ごめん、今のなし。
ん、なに? ああ、あの人のこと? タケル考案のヤキソバパンっていいね。飢えた狼だってイチコロデスヨ」
以上、一発ネタでした。
ヨロイと戦術機ってサイズ的に近いと思うのですがどうでしょうか。そんな妄想でした。続きません。
登場人物の数的に無理です。ネタでさえ全員書けていないのに……