2010年8月18日 15時0分 更新:8月18日 15時5分
日本国内や海外の日系企業での就職を目指す外国人向けに実施されている「BJTビジネス日本語能力テスト」について、昨年度から実施主体となった財団法人「日本漢字能力検定協会」(京都市下京区)が今年度限りでの中止を決めたことが分かった。独立行政法人「日本貿易振興機構」(ジェトロ)が96年に開始した試験で、外国人の在留資格認定審査での参考基準にもなっていた。この試験の受験を前提に学んでいた外国人らに大きな影響が出そうだ。
BJTは、円高を背景に、海外進出した日本企業が日本語能力を持つ外国人を現地採用する際の基準を作ろうと、ジェトロが創設。海外の大学の日本語学科などがカリキュラムに取り入れたり、日系企業の海外法人が現地採用の際の基準にするなどして受験者数は年々増加し、08年度には過去最大の約9300人に達した。
その一方で、運営は赤字続きで、国からの数千万円の補助金で補てんするという状態が続いていたため、総務省政策評価・独立行政法人評価委員会が06年、ジェトロに民間移管を勧告。入札の結果、同協会が3億3600万円で買い取り、09年度から運営を引き継いでいた。
協会は、来年度からのテスト中止を8月2日付でBJTのホームページに日本語と英語で掲載したが、日本語学校関係者によると、多くの外国人には気付かれていない状態という。
協会理事長の池坊保子衆院議員(公明)は、毎日新聞の取材に対し「前執行部が原資の状況を確認しないまま買い取った」としたうえで、「国内の漢検受検者の受検料で、BJTの赤字を補てんすることの意義が見いだせないので、今年春の理事会で中止を決定した」と説明した。11月のテストは予定通り実施する。
社団法人「日本語教育学会」(東京都千代田区)会長の尾崎明人・名古屋外国語大教授は「今はまだ赤字かもしれないが、政府が留学生30万人計画を掲げ、年々実績を積み上げてきた試験を突然中止するというのは、日本語を学ぶ外国人にとっても困るし、日本の国益にも反する」と指摘している。【袴田貴行】
ビジネス現場での日本語のコミュニケーション能力を測る試験。独立行政法人「国際交流基金」などが運営する「日本語能力試験」が「英検」のように5段階の級に分かれ、日本語の基礎学力を重視しているのに対し、BJTは800点満点のスコア制で、電話の応対や交渉など、より実践的な日本語能力に特化した内容になっている。近年は年2回行い、07年度は国内11カ所と、欧米や中国、タイ、インドなど海外12カ国で実施した。現在の受験料は7000円。