2010年 9月13日(月)放送
ダークマター
見えない暗黒物質を探せ
(NO.2935)
いま日本をはじめ世界中の科学者たちが「ダークマター(暗黒物質)」と呼ばれる、奇妙な物質の発見にしのぎを削っている。なんと、長年科学が研究対象としてきた「物質」は、実は宇宙を形作る物質のごく一部に過ぎないという“薄気味悪い事実”が明らかになってきたというのだ。例えば、銀河の渦巻きの形も、この宇宙に私たちが知っている物質以外の見えない大量の物質がないと、どうしても説明できないという。この夏日本では、岐阜県奥飛騨の山中のトンネル内に作った実験施設「XMASS」で、ダークマター発見をめざした壮大なプロジェクトが動き出した。はたして謎の物質「ダークマター」を見つけ出すことは出来るのか。番組では宇宙の謎に挑む科学の最前線を見つめる。
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- 2010年 9月15日(水)放送日本一人負け? 円高の衝撃
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【スタジオ1】
●暗黒物質「ダークマター」の誕生由来について
>>それは宇宙創生の時点じゃないですか。すべての物質は、ビッグバン、宇宙創生の時点でできたと考えられていますから、その時できたけれども、われわれの観測にずっと引っかからないできた物質がそれだけあるっていうことですよね。
●「ダークマター」が存在するとされる根拠について
>>なぜ宇宙がこうあるのか、われわれがここにいるのか、この世界がこういうふうにあるのかっていう、そのことが全然説明できないということですよね。今のVTRの説明では、ダークマターは岐阜県神岡の辺りにもあるに違いないから、あそこでやってるみたいに感じるでしょ。そうじゃなくて、どこにでもあるんですよ。ここにも、ここにも、あそこにも。いたるところにあって、大体この宇宙のほとんど、この地球上すべて、日本のこの空間でも1リットルに1個あると考えられてるんです。だからこれだけ大きなスタジオだったら、何千個ってあるはずです。もしそういうものがなければ、宇宙がまったく均質であれば、すべての物質、われわれが見てるこういうような物質っていうのは、一切誕生しなかったと考えられるわけですね。だからビッグバン以後の宇宙の歴史が、こういうふうにきて、われわれの世界がただいま現在、ここにこう存在してるのは、ダークマターがあったからそうなったというね、今、それしか説明のしかたがない。いま画面に映っているのは、いわゆる大規模構造っていうやつですね。大規模構造っていうのは、そのダークマターがあって初めてあれになったというね、これは東京大学(※)の吉田先生という有名な先生が、ダークマターがあったとすれば、宇宙はビッグバン以後、こういうふうにしてこういう構造ができて、今、われわれに見えるこの天体がすべて出来上がるというね、その過程をシミュレーションしたものなんですね。
(※東京大学数物連携宇宙研究機構・特任准教授の吉田直紀)
もしも「ダークマター」がなかったとしたら、もし宇宙が完全に均質な世界で、なんの変化も起きなければですよ、ありとあらゆる物質の歴史っていうか、この生命の誕生も含めてすべてがなかった、つまりわれわれは存在しないっていうことになりますね。
●「ダークマター」研究における天文学と理論物理学の融合について
>>ある意味でまったく同じ世界だからですよね。われわれが見てるこの天体の世界も、このいろんな素粒子の世界をどんどん突き詰めていった世界も、基本は同じ構造の延長の上にあるっていうかね。結局、同じことであるということが、どんどんわかってきたということなんですよね。
【スタジオ2】
●日本のXMASS研究チームの可能性について
>>この研究は要するに感度との戦いなんですね。その感度が日本の装置が世界で一番ですから、ここにちょっと、グラフを出してくださるとわかるんですが、要するにこれが、アメリカの実験ですね。これがイタリアの実験ですね。それで日本は、際立って高い感度を持った装置を持ってるんですね。それで、ダークマターが存在すると予想されるのが、この黄色い星で示されている所なんですね。初めて、この予想される場所にちゃんと引っかかる観測装置を作ったのが、日本がほとんど初めてと言っていいんですね。だから、もうまもなく観測が始まるけれども、観測が始まったとたん、ダークマター発見という大ニュースが飛び出す可能性っていうのはものすごくあるんです。だからそうしたら、一挙にもう、本当にノーベル賞ものの大発見なんですよね。あるいはこれだけのことができるっていうのは、岐阜県神岡でこれをやってるんですが、あそこでずっとやってきたニュートリノの研究の技術的な延長の上にあるんです。あそこであれだけのことができた、その技術の延長の上にあるんですね。キセノンっていうのは、そもそも不活性ガスっていう、いかなる反応もしないガスなんです。その中で、光を発することがもしあったとすれば、まったく予想がつかない物質がそこに反応したということで、それがダークマターである可能性っていうのは非常に高いんです。それはもうきわめて微弱な信号ですから、その微弱な信号をちゃんと受け止める、そういう観測装置が初めてあそこに出来たっていうことなんですよ。これは本当に、これまで考えられていた物質世界とまったく違う次元の話が、今、できようとしている。そういう話で、一挙に物理学の世界のパラダイムが大きく変わる、そういう劇的な時間にわれわれはいるっていうことだろうと思いますね。