防衛省:FX予算計上見送り F35開発遅れ、機種絞れず

2010年8月17日 20時28分 更新:8月17日 22時55分

イタリア空軍のユーロファイター=会川晴之撮影
イタリア空軍のユーロファイター=会川晴之撮影

 防衛省は17日、11年度予算の概算要求で航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の調達費計上を見送る方針を固めた。同省はFX候補について、調査対象としていた6機種から、F35、ユーロファイター、FA18の3機種に絞り込んだが、最有力としてきたF35の開発遅れなどで機種を決定することができないためだ。FXとの入れ替えを想定している現有のF4は老朽化が進んでおり、同省は日本の防空能力が低下すると懸念している。【樋岡徹也、仙石恭】

 F4は現在、2個飛行隊(約40機)で運用されており、予備機を含めるとFXの調達予定は50~60機にのぼる。防衛省は当初、FXについてレーダーで探知しにくい世界最高峰のステルス機能を持つF22の導入を検討していた。しかし先端技術流出を懸念した米側が輸出を禁じ、生産も中止したため、日本は昨年、導入を断念した。

 その後、政府はF22に次ぐステルス機能を持つF35を軸に選定作業を進めてきた。ただ、F35は予定通りに開発が進んでいない。米空軍の実戦配備も2年遅れの15年となり、日本が導入できる時期にめどはついていない。

 さらに、F35は技術上の機密が多く、日本のメーカーによるライセンス生産は認められない見込みだ。その点、ユーロファイターやFA18はライセンス生産が認められる見通しで、選定で有利に働く可能性もある。

 ◇米英3陣営 しのぎ削るFX商戦

 【ロンドン会川晴之】FX商戦には米英3陣営がしのぎを削る。米国はボーイング製のFA18、ロッキード、ノースロップ・グラマンなどが共同開発するF35、英国はBAE社が共同開発したユーロファイターを売り込む。

 英BAEのアンディ・レイサム日本担当副社長はユーロファイターについて、(1)ライセンス国産が可能で日本の産業育成に貢献する(2)性能が他の戦闘機に勝る(3)価格競争力がある--と強調する。さらに、F35の主任務が「空対地」攻撃であるのに対し、「空対空」も可能と主張する。

 一方、ボーイングはFA18に関し、「大量生産効果で価格が安い」と売り込み、空中給油機など自衛隊機との相互運用性が高い、とも強調する。

 これに対し、BAEは「ユーロファイターは北大西洋条約機構(NATO)軍に採用されており、米軍機と相互運用性を確保している」と反論、日本向けは10年代半ばには対応可能という。

 ◇次期主力戦闘機(FX)

 航空自衛隊が保有する戦闘機、F4(73機)、F2(84機)、F15(202機)の3機種のうち、73年と導入時期が最も古いF4後継機として、防衛省が選定作業を進めている。当初は▽米国のF22、FA18、F15FX▽米英など9カ国が共同開発中のF35▽欧州共同開発のユーロファイター▽仏のラファール--の6機種を調査対象としていた。

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