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茶会の乱:11・2米中間選挙/下 人種間の亀裂あらわに

 <茶会(ティーパーティー)の乱>

 ワシントンの観光名所として知られるリンカーン記念堂前の広場は、米国社会の分断ぶりを物語る舞台となっている。

 今月2日、労働組合や全米黒人地位向上協会(NAACP)など民主党を支える左派系団体が主催する集会が開かれた。劣勢が伝えられる中間選挙が1カ月後に迫ったのを機に、巻き返しを図るイベントだった。

 盛り上がったのは左派系トーク番組のホストを務めるエド・シュルツ氏の登壇時。「邪悪な勢力、保守派と戦わなくてはならない。彼らは合衆国憲法に言及するが、憲法にのっとって生きてはいない。望んでいるのは差別だ」とがなり声で訴え、歓声を浴びた。

 念頭に置いているのは、保守系の草の根運動・ティーパーティー(茶会運動)だ。約1カ月前の8月28日、ライバルの保守系トーク番組のホスト、グレン・ベック氏が呼びかけた「栄誉の回復」と題した集会が同じ場で開かれた。表向きは退役軍人の表彰などが名目のイベントだったが、実際に集まったのは茶会運動に賛同する人々。数万人から十万人を超えたとも言われる集会では、参加者の圧倒的多数が白人だったことにも焦点が当たった。

 茶会運動は、連邦政府の役割の縮小や財政規律の厳格な維持を求める経済政策中心の運動で、人種差別を含めた社会問題にはタッチしないのが原則だ。だが、これまで各地で行われた集会の参加者の大多数が白人だったことや「オバマをケニアに送還しろ」などのプラカードを持ち込む人の姿が目撃されてきたことから、「人種差別的な要素が背景にあるのでは」と疑惑の目で見られてきた。

 元共和党下院院内総務で茶会運動を支援するディック・アーミー氏は「茶会運動の参加者は最も非排他的な人々だ。人種差別批判はばかげている」と強調する。一方で、黒人が多数を占めるハワード大学のNAACP学生支部長のブレンダン・フランシスさん(19)は「特定の人々を対象にした運動であるのは明白で偽善を感じている」と語り、議論はかみ合わない。

 世論調査会社ラスムセンが6日発表した調査では「白人と黒人の関係」について、「良くなっている」と答えたのは36%にとどまった。昨年7月調査では62%が同様の回答をしており、悲観論が広がっていることが浮き彫りになった。オバマ大統領の支持率に関しても、ギャラップ社の9月調査平均で、黒人の支持が91%と高かったのに対し、白人の支持は36%と低迷し、人種間の態度の違いは明白だ。

 人種間の融和を訴え就任したオバマ大統領だったが、皮肉にもその後の米国社会は人種間の亀裂を浮き彫りにしている。【ワシントン古本陽荘】

毎日新聞 2010年10月10日 東京朝刊

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