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茶会の乱:11・2米中間選挙/上 「超党派」共和と一線

 <茶会(ティーパーティー)の乱>

 11月2日の米中間選挙を前に、保守系の草の根運動「ティーパーティー」(茶会運動)が勢いを増している。連邦政府の役割の縮小を求め、オバマ政権が進めてきた主要政策にことごとく反発し、「乱」を起こしつつある。全米各地に広がる小さな茶会の現場で何が起きているのか--。【シンシナティで古本陽荘】

 ◇「アメリカンドリーム、守りたいだけ」

 米中西部オハイオ州の南部シンシナティ郊外で「東ヒルズ・コミュニティー・ティーパーティー」のリーダーを務めるジーナ・ベルさん(49)は、この地域で生まれ育ち、以前はフラワーデザイナーとして働いていた。

 公的資金を使った金融機関や大手自動車会社の救済が相次ぎ、膨らんだ財政赤字に懸念が募るようになった。昨年3月にシンシナティの中心街で開かれた茶会集会に参加。直後に友人と茶会団体を設立し、リーダーに就任した。今では電子メールのリストに約200人が名を連ね、月1回「医療保険改革」などをテーマに集会を開く。中間選挙では、支援するケイシック州知事候補(共和党)の陣営などにボランティアを送り込む。政治活動にかかわるのは人生で初めての経験だ。

 「米国には成功する自由も失敗する自由もあり、企業が失敗したなら破綻(はたん)させるべきだ。私が育った米国はこんな国ではなかった」と、政府による企業救済を批判する。

 同じ地域で「フェアフィールド・ティーパーティー」を運営するアドリアーナ・インマンさん(45)。5歳の息子ダニエル君の世代が「生まれながらに膨大な借金を抱えている」ことが心配になり、茶会運動を始めた。化学者だった父は28歳でコロンビアから米国に移住。「父はすべてを捨てて米国にチャンスを求めてきた。私が守りたいのはアメリカンドリーム。それを息子に引き継ぎたいだけ」と語る。

 茶会運動は特定の共和党候補の支援に回ることで知られるが、ベルさんもインマンさんも政党登録していない無党派だ。実際、多くの茶会団体は「超党派」を掲げ共和党とは一線を画し、民主党員のメンバーも抱える。各地の予備選では、共和党指導部の推す候補や現職上院議員が、茶会運動が支援する候補者に敗れる波乱が起きた。

 運動は本来、草の根レベルでは地方選挙を重視。州より小さな行政組織である郡の議会や教育委員会などの選挙運動に積極的にかかわる。オハイオ州北部の工業都市クリーブランド郊外の「ウエスト・ショア・ティーパーティー」は、地方政治にほぼ特化した活動を続ける。リーダーのデーブ・センタさん(53)は「連邦政府が市民を愛せるはずがない。地域の人が周囲の人を助けるというのが建国以来の原則で、我々はそこに立ち戻るべきだ」と強調する。

 保守派とはいうものの人工妊娠中絶や同性愛など社会的な問題にはほとんど触れないのも特徴だ。ある団体のリーダーは「触れたとたんに分裂する」と明かす。

 運動では「アウエークニング(目覚め)」という言葉を使い、運動の歴史的な意義が語られる。新しい民主主義の胎動か、一時的な保守派の反動に過ぎないのか、評価が定まるのはこれからだ。

 茶会を支える財政規律重視の団体「フリーダム・ワークス」のマット・キベ代表は「11月2日より11月3日の方がもっと重要だ」と語り、選挙後の運動拡大に意欲を示す。

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 ■ことば

 ◇ティーパーティー(茶会運動)

 オバマ政権に不満を抱き、対決姿勢を強める米国の保守系市民らによる運動。多額の公的資金投入による企業救済などの政策を「大きな政府」と批判し、税金の無駄遣いをなくして「小さな政府」を目指す。一方で野党・共和党指導部に対しても「ワシントンのインサイダー」と批判を強める。米独立前の1773年、当時の宗主国英国による紅茶の輸入課税に反発し、市民らが英国船に乗り込んで積み荷の紅茶箱をボストン湾に投げ捨てた「ボストン茶会事件」にちなんで名付けられた。

毎日新聞 2010年10月8日 東京朝刊

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