反射鏡

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反射鏡:世界にも発信すればいい蓮舫式=論説委員・福本容子

 ファッション誌「ヴォーグ・ニッポン」(11月号)に掲載された蓮舫行政刷新担当相のインタビュー記事が物議を醸している。問題になったのは、蓮舫氏の発言ではない。写真だ。国会議事堂内で撮影されたものがあり、それがモデルのような写り方だというので、「けしからん」の声が上がったようだ。

 蓮舫氏は会見で、「撮影場所が不適切だったとしたら本意ではないのでおわびする」と陳謝した。「国民に政治への関心を持ってもらうための情報発信の一手段として雑誌に掲載されるのは大切だ」と判断し、取材を受けたと話している。撮影については「正式な手続きを経た」といい、参議院の警務部が立ち会ったそうだ。

 では何が問題だったのか。

 参院広報課によると、7日の議院運営委員会で、野党議員から、「ファッション誌のモデルのような撮影に違和感がある」との指摘があったという。参院には、「私的な宣伝や営利を目的とした撮影は許可しない」というルールがある。具体的に何がどう違反したのか、はっきりくっきりの説明は誰もしていないようだが、ポイントは大きく二つあるようだ。

 まず、モデルのように写っていることが、蓮舫氏の私的宣伝にあたりはしないかというもの。そして、写真の脇に、蓮舫氏が着用した衣装類のブランド名、価格が記載されていたので、商業的色彩を帯びているのではないかというもの。さらに高級ブランド服という要素が加わり、いよいよ「けしからん」となった感じだ。ちなみに衣装類は雑誌側が各ブランドから撮影用に借りてきたものだという。

 ヴォーグ・ニッポンに女性国会議員が登場したことは過去にある。一式3000万円の衣装・宝石をまとった人たちもいた。別の雑誌だが、議事堂内で「女性のキレイ」を直接テーマにした企画の写真撮影をした例もある。今回の蓮舫氏のケースが物議を醸したのは、それが事業仕分けなどで何かと目立つ蓮舫氏だったから、というのが大きいのではないか。

 この際、議事堂内撮影のルールを明確化しようという話もあるようだが、あまり意味がないからやめた方がいい。大人の常識で対応すればよいことだ。品のないことをしたら、本人が世間から笑われるだけ。国会議員には議論しなければいけないもっと大事なことが山ほどある。

 今回の騒ぎでは、むしろ騒いだ側の幼さが気になる。

 米国発祥のヴォーグ誌は100年以上の歴史を持ち、今は日本を含め18カ国で編集・出版されている。先端のファッションだけでなく、各分野で活躍する女性にスポットを当てることも多い。過去に登場した人物には、ヒラリー・クリントン米国務長官、オバマ米大統領夫人、ライス米前国務長官らがいる。ペロシ米下院議長の写真は、議会内のバルコニーで撮影された。

 日本版ではかつて緒方貞子・元国連難民高等弁務官を特集している。英国ではサッチャー氏が首相時代を含め数回、英国版ヴォーグに登場した。

 蓮舫氏のインタビューは写真が話題を奪ったが、中身は政治を正面から語ったものだ。読んだ女性が(もちろん男性も)政治を考えたり国会議員という仕事を知る機会になればいいではないか。

 選挙期間中のインターネット使用もそうだが、政治家の発信に対し、日本は制限が多い。「だめだ、だめだ」と否定ばかりせず、もっと柔らかく、前向きにとらえてはどうだろう。

 ヴォーグ・ニッポンによると蓮舫氏の記事は、今のところ日本版のみの掲載らしい。せっかくなら海外版にも載せてもらえばよかったのに、と思う。「日本にこんな女性大臣がいるのか」「日本の議事堂の中はこんなに美しいのか」と国の宣伝になったかもしれない。

 ついでにもう一つ。「政治家とファッション」は決して侮れないテーマだ。自己表現、メッセージの重要な要素なのである。革のハンドバッグ、肩パッド入りの上着、フェラガモの靴にバッグ。独自のスタイルで一世を風靡(ふうび)したサッチャー氏は、素材から色まで、ファッションにとてもこだわったという。

 在任中の1985年、ヴォーグにこう語っている。「人の第一印象は見かけが決める。外見は大事。特に国の代表として外国にいるときは、とてつもなく大事だ」。訪問先の国旗の色を服装に取り入れるなど、細かく気を使っていたらしい。11年半にわたり、首相を務めた女性である。

毎日新聞 2010年10月10日 東京朝刊

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