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国勢調査は実態を反映しているか 調査票に加え聞き取りも…

産経新聞 10月10日(日)8時42分配信

国勢調査は実態を反映しているか 調査票に加え聞き取りも…
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5年に1度の国勢調査。調査票の提出はお済み?(写真:産経新聞)
 5年に1度行われる「国勢調査」が10月1日付で実施された。7日の提出期限を過ぎ、調査員が調査票提出の確認を行う確認状の配布が8日から始まっている。国の情勢を調べる国勢調査だが、「所在不明高齢者」の問題など行政のデータには疑問の声もあがっている。国勢調査はどこまで実態を反映しているのか。(大矢博之)

 ■「虚偽申告は見抜けない」 「世帯の申告に基づいて調査票を書いてもらっている。虚偽の申告を調査員には見抜けない」と話すのは総務省統計局の担当者だ。

 東京都足立区で、生きていれば111歳だった男性のミイラ化した遺体が発見された事件では、家族が年金を不正受給するため、男性が生存しているように装っていた。

 こうしたケースについて、総務省統計局は「正しい申告は義務だが、内容の点検のため調査員が家の中に上がり込むわけにもいかない。性善説に基づいて行われており、見抜くのは物理的に困難」とする。

 統計法では虚偽内容の報告や回答拒否した場合には、50万円以下の罰金という罰則も規定されているが、実際に罰則が適用されたケースはないという。

 総務省統計局では「居住実態に即した調査が基本。実態が把握できないと、行政運営の計画が立てられない」と正しい回答への理解を求める。

 こうした虚偽申告のケースを除き、調査員に会わないなどの回答拒否があっても国勢調査に“漏れ”がない根拠として総務省統計局があげるのが「聞き取り調査」だ。

 国勢調査票が未提出の場合、調査員が近隣住民などに氏名や性別などの聞き取り調査を行うという。平成19年の統計法の改正で、今回の調査からは、近隣住民のほかマンション管理人などの関係者への聞き取りも可能になった。

 だが、聞き取り調査の割合は毎回増加中。平成7年の国勢調査では0・5%だったが、12年は1・7%、前回の17年は4・4%と増加を続けている。

 ■今年は200以上の国と地域が実施 国勢調査は日本の人口や世帯の実態を明らかにするため、大正9年(1920年)以降、5年ごとに実施されている。今回は19回目で、国勢調査の結果は、社会保障や都市計画、防災対策、衆議院選挙の小選挙区の割り振りなど、国や地方自治体のさまざまな政策を決定する際に利用されている。

 国勢調査は英語の「人口センサス(Population Census)」の訳語として用いられている。センサスは調査対象者をすべて調べる「全数調査」とも呼ばれ、古代ローマで人口調査や税金査定などを担当する役職名のラテン語「Censere」が語源とされている。

 行政の基礎として、法律に基づき周期的に人口調査を行う近代的な人口センサスを世界で初めて実施したのは、1790年の米国と考えられている。

 その後、各国で調査が実施されるにつれ、他国との比較などの観点から、国際基準の作成が求められるようになった。そして、1872年のロシアで開催された第8回国際統計会議で、調査事項などの国際基準を採択。10年ごとに人口センサスを行うべきこともこのときに採択された。

 現在、人口センサスの定義や役割、調査方法、調査内容などの国際基準を取りまとめているのは国際連合。国際連合は2010年を中心に人口センサスを実施するよう世界各国に勧告しており、「2010年ラウンド世界人口・住宅センサス計画」と呼ばれている。計画には世界で200以上の国と地域が参加しており、日本の今年の国勢調査もこの一環だ。

 ■第1回の合言葉は「文明国の仲間入り」 日本で実施されたルーツを探ると、紀元前86年ごろ、崇神天皇(10代天皇)が調役の賦課のため、人口調査を実施したとの記載が日本書紀にあるという。

 日本で実施された近代的な国勢調査の原型は、明治12年に現在の山梨県で実施された「甲斐国現在人別調」といわれている。全国的な国勢調査の試験調査として行われたが、財政事情もあり、本調査の実施までには長い道のりが待っていた。

 明治28年、国際統計協会から「1900年(明治33年)世界人口センサス」への参加要請があり、本格的な国勢調査実施を目指す機運が高まる。明治35年に「国勢調査ニ関スル法律」が成立し、第1回国勢調査は明治38年に行われる予定になった。だが、日露戦争や第1次世界大戦の影響で、実施は見送りに。

 待望の第1回国勢調査が行われたのは、法律制定から18年後、大正9年のことだった。当時の合言葉は「文明国の仲間入り」。旗行列やチンドン屋などの広報活動が各地で活発に行われ、10月1日午前0時にはサイレンや大砲が鳴り響く、国を挙げての一大行事だったという。

 当時では珍しいポスターによる告知もされ、「国勢調査は社会(よのなか)の実況(ありさま)を知る為に行ふので課税(ぜいきん)でも犯罪(ざいにん)を探す為でもありません」という文章が「役人的でない」と好評だったそうだ。

 ■経費は640億円 大正9年に始まり19回目となる今回の国勢調査。では、いったいいくらの経費がかかっているのか。

 総務省統計局によると、国勢調査の今年度の実施経費は約640億円。その大半を占めるのが人件費だ。

 調査票を配布して回答を集める全国約70万人の国勢調査員の人件費は約380億円。調査員を指導する約10万人の国勢調査指導員の人件費が約58億円だ。

 このほか、質問などの電話を受け付ける「国勢調査コールセンター」にかかる費用が約10億円▽広報活動にかかる費用が約6億円▽東京都で初めて実施されるオンライン回答を実施する費用が約1億円−などとなっている。

 巨額の経費がかかる国勢調査。調査票の回収率を100%にするために、未提出の世帯には、10月22〜24日に再度調査員が訪問。提出の最終確認を求めるほか、調査員が会えないケースは督促状で提出を求めるという。それでも調査票の提出がない場合は、聞き取り調査を実施するという。

 総務省統計局は「今回の国勢調査は、日本が本格的な人口減少社会に突入して初めての調査。子育て支援や高齢者の介護・医療、若者の雇用対策などに対応するため欠かせないデータになる。提出が済んでいない人は速やかに提出してほしい」と呼びかけている。

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最終更新:10月10日(日)8時42分

産経新聞

 

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