NHKは8日、大相撲の野球賭博事件をめぐり、報道局スポーツ部の30代記者が取材先の日本相撲協会の関係者に対し、警察による家宅捜索の情報を事前に携帯電話のメールで知らせていたと発表した。NHKによると、記者は警視庁が同事件の関係先を家宅捜索する当日の7月7日午前0時ごろ、「あす捜索が行われるようだ」という趣旨のメールを送信していた。記者は警視庁から任意で事情聴取されている。
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野球賭博事件に絡み、NHK記者の情報漏えい事件が発覚した。
NHKによると、記者が問題のメールを相撲協会関係者に送ったのは7月7日午前0時ごろ。同午前10時ごろ、警視庁が相撲部屋を一斉捜索。メール相手が関係する部屋も実際に捜索を受けた。記者は国技館で取材中の6日に情報を入手したという。
記者は捜査対象になっていた相撲協会関係者に、「あす、賭博関連で数カ所に家宅捜索が入るようです。ガセ情報だったらすみません。他言無用でお願いします。NHKから聞いたとバレたら大変なことになりますから」と口止め工作も交えてメール。NHKは返信はなかったとしたが、メール相手は実際に家宅捜索を受けたという。
相撲協会が社会全体から批判されている最中の捜査情報漏えいメール。NHKはあくまで「本人が他社から聞いた話」と局内部から得た情報ではないとした上で、「細かいところ(部分)を知りたくてメールをした。取材先と関係づくりをしたかった、と話している」と報道倫理の根幹を疑うような返答だった。
今月6日に事実を把握したというが、経緯については「取材活動の中で(メールの)ウワサを聞いたので、本人から事情を聴いた。ウワサの情報元についてはお答えできない」と明らかにせず、警察から事前に指摘されたかについても「申し上げられません」と“言い逃れ”に終始した。
だが警視庁は、NHKの発表を受けて、賭博事件捜査の過程でメール問題を把握していたと説明。コンプライアンスの観点からも自発的な発表と主張したいNHKとの食い違いが発覚した。
警視庁の捜査幹部は「記者の行為が犯罪になるか検討中」としている。