削らずに初期虫歯治療 歯科用セメント徳大開発 2010/10/9 14:55
初期の虫歯なら歯を削らずに詰めるだけで治療や予防ができる歯科用セメントを、徳島大学の研究グループなどが開発した。従来の歯科用セメントより強度と耐久性があり、虫歯の炎症や進行を抑えるフッ素溶出量も多いのが特徴。グループは2013年度までの製品化を目指す。発展途上国での利用も期待しており、18日から南太平洋のトンガで臨床試験を始める。
開発した歯科用セメントは「アパタイトグラスアイオノマーセメント(AGIC)」。同大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部の有田憲司准教授、篠永ゆかり研究員らのグループと歯科医療器材メーカーのGC研究所(東京)が、科学技術振興機構(JST)の助成を受けて2008年度から研究していた。
有田准教授らは歯の主成分である「ハイドロキシアパタイト(HAp)」に着目。従来から使われている歯科用セメント「グラスアイオノマーセメント(GIC)」とHApを特定の割合で混ぜることで、強度や耐久性の向上につなげることに成功した。
また、AGICは、GICに比べて歯磨き粉などに含まれるフッ素の溶出量が2~3倍あり、虫歯の炎症や進行を抑える効果が大きいことも判明。AGICを使えば、象牙質にある初期の虫歯なら歯を削ることなく、5分程度で詰めることができるという。
研究グループは、歯科治療機器のない自宅や病室で、障害者、重病患者、高齢者らが治療に使えるようになることを期待している。製品化を進めるため、歯科医師が少なく、小学6年生の虫歯有病率が96%と高いトンガ保健省に協力を要請。18日から現地の小学1、2年生200人を対象に臨床試験を行う。
【写真説明】徳島大学の研究グループなどが開発した歯科用セメントの試作品