中国“ノーベル平和賞潰し”受賞者は政治犯として服役中

2010.10.09

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服役中の劉暁波氏の写真を持つノーベル委員会のヤーグラン委員長(ロイター)【拡大】

 ノルウェーのノーベル賞委員会が今年のノーベル平和賞を中国で政治犯として服役中の民主活動家、劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏(54)に決めたのを受け、中国当局は“平和賞潰し”に躍起となっている。受賞を伝える海外テレビ局の放送やネット検索をいきなり遮断するなど、徹底した言論統制で本来ならば中国人初の栄誉ある受賞を“なかったこと”にするつもりのようだ。

 劉氏は民主化運動が武力弾圧された天安門事件(1989年)の指導者の一人。国家政権転覆扇動罪で今年2月に懲役11年、政治的権利剥奪(はくだつ)2年の実刑判決が確定し、服役している。中国外務省の馬朝旭報道局長は「劉暁波は犯罪者だ。その行為はノーベル賞の趣旨に逆行する。こうした人物への授与は平和賞への冒涜だ。中国とノルウェーの関係に損害をもたらすだろう」と、さっそく尖閣問題と同様に政治問題の土俵に乗せてノルウェー政府を揺さぶる方針を打ち出した。

 劉氏の妻、霞さん(49)が住む北京市中心部の自宅には8日夕、海外の報道陣約100人が殺到した。支援者らも集まり、西側メディアから受賞の一報を聞くと歓声が上がったが、警官隊が現れて規制をかけた。

 当局は発表と同時に大規模なメディア規制を実施。受賞決定を伝えるNHKニュースの関連部分や、生中継していた米CNNや英BBCといった欧米テレビ局の放映画面を真っ黒にした。

 インターネット上でも、授賞発表直後から劉氏や平和賞に関する情報を検索できないようにするなどの措置を取った。このため、中国のネットユーザーは劉氏受賞のニュースを報じたサイトを画像で取り込み、掲示板にアップロードしたり、個別にショートメールを送ったりして事実を確認している。

 中国在住の日本人ジャーナリストは「中国の主要ポータルサイトにノーベル賞特設ページがあったが、いきなり消え去った。特設ページが残っているサイトも平和賞には触れていない。平和賞を報じた日本のニュースサイトは問題なく閲覧できるが、中国人ブロガーは当局の盗聴や介入を恐れてほとんどこのニュースに触れていない。みんな穏便に済ませたいようだ。ネットを使えない人は、受賞を知る術がない」と話している。