TABLO学歴疑惑に見る韓国ネット社会の病態(下)

 インターネット上での名誉棄損事件は毎年増加の一途をたどっている。警察庁サイバーテロ対応センターによると、2006年の4006件、08年の5005件に続き、今年は8月までに3712件を数える。捜査を担当する警察官は、「他人の名誉を傷つけても、インターネット上の文章を転載したのが何の罪に当たるのかと反論し、『表現の自由に対する脅しだ』などと言い逃れをするネットユーザーが大半だ」と語った。

 専門家は「匿名性」を最大の原因として挙げる。外部に顔が知られないため、責任感や罪の認識がないまま、他人を中傷、侮辱する人が多いとの指摘だ。被害者の苦痛を顧みず、影響力を誇示し、閲覧数を増やすために刺激的な文章を書き込む人が目立つのが実情だ。

 2008年に「化粧品、生理用品、牛乳、チーズなどでもBSE(牛海綿状脳症)が伝染する」というデマがネット上で広がり、今年には哨戒艦「天安」爆沈事件に関する陰謀説が拡散した。専門家は、その背景にもインターネットの匿名性を悪用する一部のネットユーザーの存在があると指摘する。このため、実名で書き込みを行う「インターネット実名制」の導入や、悪質な書き込みを防止する運動の展開などで、インターネット上のクリーン化を目指す声が根強い。

 警察庁のヒョン・ジェソプ・サイバーテロ対応センター長は、「まるでハチの大群のようなネットユーザーは、虚偽事実を流布し、5分もあれば特定の人間を社会から完全に葬り去ることができる。名誉棄損は被害者の告訴がなければ処罰できないため、小さな被害でも捜査機関に積極的に通報する姿勢が求められる」と語った。光云大のクォン・ホンミョン教授(法律学)は、「米国では名誉棄損事件でも懲罰的損害賠償制度が確立されており、数億ウォン(数千万円)から数十億ウォン(数億円)にも及ぶ巨額の賠償判決が下されることもある。韓国でもこうした制度を導入を検討する必要がある」と指摘した。

チェ・ソンジン記者

ソン・ウォンヒョン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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