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きょうの社説 2010年10月9日
◎ねんりんピック 石川ファンを増やす好機に
全国から約1万人が参加して、9日から石川県内で開催される全国健康福祉祭「ねんり
んピック」は、人情豊かなもてなしと、自然や温泉に恵まれた健康環境をアピールすることで、息の長い石川ファンを増やす絶好の機会である。参加者の多くは、社会の一線を退いた後も活動的で、自分流のライフスタイルを実践し ている、いわば高齢社会のトップランナーたちであろう。「競うこと以上に、地域や世代を超えた交流が一番の楽しみ」という参加者の言葉に象徴されるように、新たな出会いへの好奇心も旺盛だ。 石川の地で、歴史や文化、食など、年輪を重ねた人であればこそ価値が実感できる「本 物の日本」に触れるとともに、受け入れる側が、様々な場面で提供する自然体のもてなしによって、参加者の心に「もう一度訪ねてみたい土地」という印象を刻みたい。 ねんりんピックは、スポーツから文化まで幅広い24種目を繰り広げる。選手だけでな く、観客なども含めて、期間中、約50万人が各会場を訪れる見込みである。これまでの大会では約80〜100億円程度の経済効果が報告されており、今回も商業・観光関係者の中には、関連グッズや特産品売り場を充実させて対応するところも多い。 こうした「特需」を逃さぬ工夫と合わせ、大会への参加を単なる思い出にとどめず、再 訪を促すためのソフトな対応も大切だ。ジャパンテントのホスト家族が、普段着のもてなしで留学生と触れあい、帰国後も確かなきずなを結んでいるように、参加者と接する機会があれば、お国自慢も交えながら、肩の力を抜いて気配りの効いたサービスを提供することだろう。 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本の65歳以上の高齢者は、10年後に は人口の3割に達する。所在不明問題に見られるように、単身高齢者の孤立が深刻化する中で、高齢者のつながりを広げる交流の舞台としてのねんりんピックの役割は大きい。参加者と触れあう地元の人たちも主役だろう。魅力あふれる観光資源とともに、「もてなし力」を石川のお家芸に育てる好機でもある。
◎補正予算5兆円 景気下支えに早期成立を
政府が当初3兆円台半ばとしていた追加経済対策に伴う補正予算の財政支出を5兆50
0億円にまで積み増したのは、野党の協力を得るためとはいえ、正しい判断だ。日銀短観などを見ると、足下の企業業績は堅調であっても、先行きへの懸念が強い。企業経営者や消費者の消費マインドを高めるためにも5兆円規模の景気対策は必要である。規模より中身が重要との指摘もあるが、デフレ退治のためにまず政府が本腰を入れる姿 勢を示すことが重要であり、「小出し」の政策では補正予算を組む意味が薄れる。政府案では、支出に伴う民間資金などを含めた事業規模21兆1千億円の予算となり、日銀が打ち出した追加金融緩和と合わせて、政府の本気度が企業や消費者にも伝わるのではないか。野党との協議で中身を煮詰め、早期に成立・執行させてほしい。 予算規模が膨れ上がったのは、連立を組む国民新党と、5兆円規模を求めていた自民党 、同じく4兆円規模を要求していた公明党への配慮だろう。もともと自公両党が提案している経済対策と政府案は共通点も多いだけに、双方が歩み寄り、妥協点を見いだすのは、さほど難しくないはずである。 たとえば総額1兆円の公共事業を地方に重点配分する案は、野党案を丸のみしたもので あり、鳩山政権が掲げた「コンクリートから人へ」の理念を大幅に修正する内容である。早期成立を急ぐあまり、さっさと妥協を重ねる菅政権の軽さ、無節操さにもあきれるが、小中学校の耐震化や老朽化した橋の補修、電柱の地中化、保育所の整備など、必要不可欠な「コンクリート」はたくさんあり、もともと理念そのものに無理があった。 財源は今年度税収の上積み分が2兆2千億円、国債費の不要分が1兆4千億円あるとい うから、これを活用すれば、新たな国債発行は必要ないだろう。それでも足りぬようなら、マニフェストを見直すなどして波及効果の高いプロジェクトを厳選してほしい。濃密な国会論戦を通じて、できるだけ早く成立させ、円高是正とデフレ脱却に全力を傾注したい。
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