「危機的状況で結ばれた二人は、長続きしない」


と、俗に言う。


生死の境では、本能的に異性を求めるようになるから。


本能は、感情すら錯覚させる。


それでも。


二人は『そんなことはない』と堅く信じていた。


全ての人類が還り、


新たに復興したこの世界で、


絆は途切れることはないと。







だがしかし。


習慣と時間という魔物が、


その絆を浸食していく。






些細なボタンの掛け違い。


アリの一穴。


一度瓦解を始めたその感情(おもい)は、


留まることが出来ずに、


言葉となって叩きつけられた。













「こんな家、出てってやるわ!!」











Last Present
〜 ・・・and “You & I” 〜












アスカの啖呵に、シンジも激しく昂ぶった声で応じた。


「ああ、僕の方こそ出てってやるよ!! 」


更にアスカが怒声を上げる。


あとは売り言葉に買い言葉の応酬が続いた。


もはや諍いの原因が何だったのかすら定かではない。


二人は一歩も譲らない。


アスカにして見れば、いつも折れるハズのシンジが頑なに抵抗するのが気に食わない。


シンジの方は、いつもこちらから折れるのも理不尽な気がしてたし、何より一度は厳しく言っておかないと、男の沽券に係わる。


結局、そのまま和解を迎えないまま、彼らは自室へと戻った。


二人とも背中に、


「止めるなら今のうちよ!!(だよ!!)」


という見えないメッセージを貼り付けて。


「なによ、ブァカシンジのくせにあたしに逆らうなんて、一人前になったつもりなの!? 」

部屋に飛び込み扉を堅く閉ざすなり、彼女はキーッとばかりにぬいぐるみを蹴飛ばす。


哀れな猿のぬいぐるみは、天上、床と三角を描いて飛び回り、部屋の隅に落ち着くと、恨めしげな視線を注いでくる。


シンジから16歳の時に贈られた誕生プレゼント。






『・・・あんた、なんで高校生にもなって、こんなでっかいぬいぐるみをプレゼントに選ぶわけぇ!? 』


『だって、何がいいか良く解らなくて・・・・。それにお金も・・・・・・』


『このあたしの誕生日なのよ? もっとゴージャスなものを用意するのが常識でしょ!? 』


『そんなこといったって、デート代はいつも僕が全額もってるのにさ・・・・・』


『男ならグダグダ言い訳しないっ!! 』


『無茶苦茶だよ・・・・・・・』






さんざん馬鹿にして、貶して、落ち込んだシンジからお情けで貰ってやったはずの代物。


実は一番嬉しかったプレゼントだったりする。たとえそれが自身の幼い記憶を揺さぶるものだとしても。





しかし、今日の彼女はこのぬいぐるみを見ても、気分は収まらなかった。


イライラは更に募るだけ。


気にくわない、気にくわない、気にくわない・・・・・・・!!


うがーっというアスカの雄叫びとともに、ぬいぐるみは二度目の理不尽な空中飛行に突入した。








一方シンジも自室に引きこもると、落ち着きなく室内を徘徊し始めた。


『ああ、なんであんなこといっちゃったんだよっ!! 』


おもむろにベッドに突っ伏して頭を抱える。


しかし、すぐに顔を上げ、頭を振って考え直す。


「ダメだダメだ!! なんでもアスカの言うことばかり素直に聞いてちゃ!! 」


自らを鼓舞するように口に出してみる。


二人とも共に18歳。高校卒業も間近に控えていた。


平和主義で気弱というレッテルを貼られていた彼の心情が変化を迎えたことに、


この微妙な時期が密接に関係していることは疑いようもない。


いくら二人とも同じ大学への進学が決まっているとはいえ、


高校を卒業してしまえば、社会へと晒されることは変わりない。


それなりに責任も伴ってくる。二人とも両親が不在なので、尚更だろう。


だからシンジは自らに、自分がしっかりしなきゃ、と言い聞かせていた。


既にアスカとの将来の生活設計を建てているがゆえの責任感である。


当のアスカにその意志を未確認なあたりは、微笑ましくもあったがある意味怖ろしい。


「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ・・・・・・」


ほとんど条件反射的に懐かしのフレーズを口ずさむシンジ。


彼が発奮する理由は、『アスカに頼られたい』という気持ちの裏返しなのだか、それに気づくことはなく、夜は更けていった。











翌朝、食卓で顔を会わせた二人だったが、ろくに視線を会わそうともしない。


トゲトゲしい雰囲気のまま互いに食事を終え、バラバラにマンションを出ていく。


「はてさて、昨日の夜なにかあったのかしらん? 」


昨夜の泊まり込みの仕事から早朝帰宅したミサトであったが、どうにも事情が飲み込めない。


まあいつもの事、と代わりにビールを飲み込み二人を見送ったミサトであったが、


そんな彼女の腕にかき抱かれたペンペンが軽く身震いした。


まるでこれから起きる騒動を予言するかのように。























学校にて。




「なんか今日のセンセイたち、妙に雰囲気悪いのぉ? 」


トウジがそうごちて、くしゃみを一つ。


ジャージこそ我が制服を標榜する彼も、この季節はなかなかに辛いものがある。


歴史に記されないサードインパクトで地軸が戻った地球。


日本は西暦2000年以前の豊かな四季を取り戻していたのだが、それまでの灼熱の季節のリバウンドとでもいうのか、


ここ数年、冬には異常寒波が襲来していた。


雪は降りこそすれ積もってはいないが、最近の冷え込みは一層厳しい。


「ふあ、ティッシュティッシュ・・・・・」


「まあ、いつもの夫婦喧嘩じゃないの? 」


鼻水を垂らしたトウジにテッシュを差し出すケンスケ。


「そうかのう? 」


かみおわったティッシュをゴミ箱へと放り投げてトウジは首を捻る。


「なんかいつもより険悪な感じやないか? 」


「恋人同士、そういうこともあるさ。特に碇たちは付き合い長いからね・・・・」


ケンスケはそう答えつつゆっくりと腕を組む。


彼も高校生になってからは趣味であるカメラも自重しはじめ、幾つかの恋愛を経験していた。


現在は下級生の一人と付き合っているらしい。


「ふーん、そういうもんかい・・・・」


互いにそっぽを向いたまま、近寄りがたい雰囲気をバラまいているシンジとアスカの背中を等分に眺めて、トウジは呟く。


彼自身は委員長である洞木ヒカリと『秘密裏』に付き合っているつもりである。周囲にバレバレなことは言うまでもないが。


「うーん、付き合いが長い・・・・慣れてくる・・・ふーむ」


なおブツブツいっていたトウジだったが、やおら背筋を伸ばすと、ポンとばかりに手と手を打った。


「そうか、倦怠期や!! 」




グシャ!!




彼の後頭部に学生鞄が炸裂する。


ゆっくりと床に倒れ伏すジャージ姿を投擲ポーズのまま見ているアスカに、ヒカリが声をかけた。


「どうしたの、アスカ? 今日のあなたたち、ちょっと変よ? 」


アスカは憤然と胸を逸らすと、声高に答えた。


「なーに、ちょっと手を焼いてるだけよ。あたしが手塩にかけて仕込んだ可愛い子犬ちゃんが、言うこと聞いてくれなくてね!! 」


ガタン!!


一つの椅子が激しい音を立てた。


「子犬って、僕のことなの!? 」


勢いよく立ち上がり怒声に近い声を上げたのは、当然シンジである。


「あら、そうなの? あたしも知らなかったわ、おほほほほほ」


「・・・・・・・・・・・・・!! 」


一瞬火花が二人の視線の中心で弾ける。


いきなりの展開に面食らって口を挟めない、ヒカリを始めとしたクラスメートたち。


どちらも折れる気配がないのを察し、みなハラハラと成り行きを見守るのみ。


アスカにしてみれば、『可愛い』という表現にニュアンスを含ませたつもりである。


ところが、シンジはそれに気づかず噛みついてきた。


それが腹立だしくもあったし、もともとクラスメートの前で謝るつもりなど毛頭ない。


『せっかく謝りやすい舞台を整えてやったってのに・・・!! 』


彼女はそう考えていたりするからタチが悪い。


シンジの見解は当然異なる。


『僕を犬呼ばわりするなんて・・・・・!! 』


アスカが意地になっているのは、今朝から一言も口を聞いていないことから察しているし、


それが彼女の未熟で幼く、しかし可愛い部分だと理解しているシンジであったが、今回ばかりは許す気にはなれなかった。


男の矜持の問題である。








「あの〜、トウジがさっきからピクリともしないんだけど・・・・」


ケンスケの控えめな発言も、


睨み会った二人の険悪な雰囲気に飲まれて消えた。




















コンフォートマンションに着くなり、アスカは部屋に駆け込むと猛然と荷造りを始めた。


「出てってやる。本当に出てってやるう!! 」


結局あの後、シンジは鼻を鳴らして視線を逸らすと、席に着き終日口を訊かなかった。


しかも屈辱的なことに、あたしの分のお弁当を用意していなかったのだ!!


おかげで購買部の不味いパンを数年ぶりに味わうハメになっちゃったわよ


「一度、態度で示してみなきゃダメね、あのブァカは!! 」


手際よく段ボールに教科書を放り込みつつアスカは叫ぶ。


食い物の恨みも加わって、怒り倍増である。


なお猛烈な勢いで、アスカは荷造りを続けていく。









一方、アスカと時間をずらして帰宅したシンジも、一目散に自室へ飛び込むと、ビニールロープ片手に荷造りを開始した。


「出てってやる、出てってやるさ!! 


一度いなくなりゃなけりゃ、僕の有り難みは解らないんだよ!! 」


そう叫ぶようにいうと、手際よく雑誌を紐で束ね始める。






そして帰宅した葛城ミサトの見たものは、


互いの部屋のドア全開にして荷造りに励む二人の姿というシュールな光景であった。


「・・・・・なにやってんの、二人とも? 」


「「荷造りよ!!(です!!)」」


二人の部屋から同時に返答が帰ってくる。


「どうしたのよ、一体? 」


「シンジがっ!! 」


「アスカがっ!!」


またしても同時に響く二人の声。


沈黙。


明らかに二人が苛立っている気配。


「・・・まあまあ、ここはお姉さんに話してみてちょうだい」


「ミサトには関係ないわっ!! 」


「ミサトさんには関係ありませんっ!! 」


二人とも、部屋から顔だけ出して叫ぶ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


いつの間にかミサトの傍らにペンペンもやって来て、


不安そうな眼差しで見上げて来る。


「ま、まあ、二人とも出ていくのは勝手だけど、


引っ越し先は決めてあるの? 」


こめかみをヒクつかせながらミサト。


「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!! 」」


一瞬の沈黙の後、シンジとアスカは猛然と部屋を飛び出してくる。


二人はリビングへ向かうなり、電話帳に手をかけた。


片っ端から不動産関係に電話でも入れるつもりだろう。


「・・・・手ぇ離しなさいよ!! あたしが先に取ったのよ!? 」


「いーや、僕の方が早かった!! 」


「レディーファーストよ!! 」


「そんなの関係ないよ!! 」


などと一通りもめた後、今度は電話の争奪戦が繰り広げられる。


ミサトの、


「携帯使えばいいのに・・・・・」


との言葉も、二人の耳には入らない。

 
「やれやれ、こりゃマジで二人とも出ていくつもりね・・・」


リビングの喧噪を横目に、ミサトは自室へと戻る。


そしてなんと、彼女も荷造りを始めた。


もともとミサトは、二人の高校卒業と同時にマンションを出て、加持の所に転がりこむつもりであった。


しかし、どうもその時期を早めた方が正解のようだ。


シンジがいなくなった葛城家において、彼女のQOLが激しく低下するのは目に見えている。


生存率に係わる前に、自分も引っ越したほうが賢明であろう。


ついでにペンペンも連れていくつもりである。


その夜コンフォートマンションの一室には、遅くまで三者三様の荷造りの音が響くことになる。













勢いというものは怖ろしい。


理性を鈍化させ、感情を留めることも出来ず、


まるで滝を下る一葉の如く、


気がつけば、望まない、取り返しのつかない結末を迎える、ということが往々に存在しうる。


今、シンジとアスカ、二人を取り巻く状況は、それに酷似していた。


否、その状況そのものと形容しても良い。


二人とも頭の片隅には、『馬鹿なことをしている』という意識が存在する。


しかし、激しい感情の濁流に飲まれて、その一欠片の意識は浮き沈みを繰り返し、主導権を得られないでいた。


互いに引っ越し先を決めた翌日には、殆どの荷物の発送を済ませてしまっている。


学校では相変わらずの険悪な空気をまき散らし、クラスメートの心配を募らせるのみ。


そして、二人に引きずられるように、ミサトの引っ越しも完了した。


三人で過ごす最後の夜。


結局、和解も譲歩もない冷たい一夜を経た翌早朝、ミサトは一人家を後にした。


残された二人に、最後の話し合いの時間を提供したであろうことは疑いようもない。


あまりに殺風景な部屋に取り残される二人。


エアコンは全開にされているはずなのに、奇妙に寒々しい雰囲気がリビングを包む。


どちらともなしにリビングの片隅に腰を降ろすシンジとアスカ。


今日一日のみ、という暗黙のタイムリミットが、二人の間に横たわっている。


気まずく、張りつめた沈黙が、空間を支配していた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・


・・・・・・・・


・・・・


「雪・・・・・・」


何気なく窓を眺めていたアスカの呟きが、沈黙を破る。


その言葉に突き動かされるように、シンジはベランダの戸を開け、屋外へと出た。


鼻の奥を刺すような硬質の臭気と冷気が、暖房慣れした身体に心地良い。


「すごい、牡丹雪だ・・・・・! 」


感激したように、大ぶりの雪の結晶を受け止めるシンジ。


手のひらに落ちた雪は、たちまち溶けて水になり、零れて消えた。


ふと彼は思う。


『どうしてこんなことになっちゃったんだろう? 


僕は、アスカが出ていくことなんか、これっぽっちも望んじゃいないのに・・・・・・』


こんな状況も、この雪のように溶けてなくなればいいのに。


解決する術はある。


単に、自分が折れて、アスカに頭を下げればいいのだ。


彼女も頭に大分血が昇っちゃっているだろうけど、僕が下手に出れば、どうにか許してくれるだろう。


しばらくブツブツ嫌みを言われるくらいは、覚悟しなければならないだろうけど・・・・・。


シンジが意を決してリビングへと振り返ろうとした時。
  

アスカの声が響く。


「いい加減、戸を閉めてくれない? 寒いったらありゃしない!! 」


その言葉のあまりにも冷たい響きに、


シンジの中で鎮まりかかっていた黒い炎が再燃した。


彼は、乱暴な手つきで戸を閉めると、アスカから遠く離れたリビングの一角に腰を降ろす。


相変わらずブルーアイズとは視線を合わそうともしない。


「何ふてくされているのよ? つまらない男ねぇ」


アスカのやれやれといった表情と声に、


俯いたままのシンジはより一層決意を固めていた。


絶対に僕のほうから謝ってやるもんか


シンジがなんの反応を示さないのを見とると、アスカはわざとらしく溜め息を吐いて腰を上げる。


リビングを出て廊下へ。


シンジの視線は追ってこなかった。


彼女は、わざと乱暴な足音を立てて廊下を歩き、自室へと飛び込む。


カーテンすら取り払われた部屋は、寒く薄暗い。


むきだしの窓の外には、白い綿が乱舞しているような光景が見えた。


部屋の中心には、大きなぬいぐるみが一つ。


無邪気な猿の笑顔を眺め、やおら自己嫌悪に陥るアスカ。


『あ゛ー!! あたしはなんであんなこと言っちゃうのよっ!!! 』


彼女は、シンジが謝ってくるのを待っている。謝ってくるのを信じている。


しかし、どうにも彼にその素振りが伺えない。


気は焦る。


イライラは募る。


したがって、元来攻撃的な彼女の口からは、意識せず嫌みの一つも飛び出してしまう次第であった。


(よくよく考えてみれば、アスカが攻撃的で優位性に固執するのは、彼女が後天的に得た自己防衛機能であるが)


結果として、よりシンジの態度は硬質化。


また焦りとイライラは募り、嫌みを口にしてしまう。


悪循環である。


「出ていく」と宣言した日から、同じことの繰り返しであった。


「もう、この期に及んでなにやってんのよ、あたしっ!!! 」


自分でも、酷く幼稚なことをしていると理解しているのに。


どうして、シンジの前だとあそこまで感情的になってしまうのだろうか?


・・・・・だけど、シンジもシンジだわ


それくらい察しなさいよ、鈍感っ!!


今度は責任転嫁。


理不尽な怒りに襲われたアスカは、目前のぬいぐるみを思いっきり蹴飛ばした。


一直線に飛んだぬいぐるみは、対面の壁にぶつかり、皮肉にも蹴った本人の胸元へと帰ってくる。


反射的にぬいぐるみを受け止めてしまうアスカ。


そのまま怒りにまかせ床に叩きつけようとした彼女だったが、思い直すと、


優しくそっとぬいぐるみを床へと置いた。


出来れば、この一番の宝物も持っていきたかった。


でも、これはここに残す。


・・・あたしがここを出ていった時、これが最後のメッセージとなるから。


あたしの心をここに置いていく。


これを見たら、シンジは後を追ってきてくれるだろうか?


それとも、あたしに幻滅するかしら・・・?


アスカは寒さを厭わず、しばらくその場に佇んでいた。





時間は容赦なく、しかも無為に過ぎていく。










やがて夜の帳が落ちた。


沈黙はより一層深くなったような気がする。


雪が降るしんしんといった音さえ聞こえそうなくらい。


静かな二人きりのリビングには、全く変化はなかった。


重苦しい沈黙に耐えきれず、腰を上げたのは、アスカの方だった。


自分の腕時計を眺める。


19時47分を指していた。


彼女は意を決すると、顔を上げた。


「行くわ」


シンジの返事もまたず玄関へと向かう。


ラストチャンス。ラストアクション。


ここでシンジが呼び止めてくれなかったら、あたしは・・・・・!!


薄暗い廊下を抜け玄関でゆっくり靴を履く。


背後には気配は微塵も感じられず、冷気が彼女を包み込もうとしている。


・・・・・・・・・終わりなの?


彼女の心の声に応(いら)えはなかった。


殆ど機械的な動作で玄関へと立つアスカ。


しかし・・・・・


「・・・・・あれぇ!? 」













リビングを出ていくアスカの背中。


寂しそうだ。


駆け寄って抱きしめたい。


でも、出来ない。


ここで、自分が折れたら、一生アスカに頼られることはできない。


そんな気がしていた。


その想いが正しいのかどうかは、余人の介在することではない。


ただ、傍目には些細、滑稽とさえいえるかもしれないことも、


当事者たちにとって、この上なく真剣なものであることは確かだった。


矜持と理想がせめぎあい、様々な感情が歪みに拍車をかける。


結局、二者択一などと割り切れないのだ、人間は。


いや、それゆえに人間か。


この様に、誤解を重ねて破局を迎えた二人は、過去幾組存在したことだろう?


不意に悲しみがこみ上げてきて、シンジは膝をかき抱いた。


機会はあった。


でもそれは永遠に失われてしまった。


アスカはもう家を出て僕が追いつけないところへ・・・・・




ダダダダダダッ!!


「シンジっ!!! 」


「えっ? 」


思いもよらぬ声に、驚きも隠さず顔を上げるシンジ。


その黒い瞳は、リビングへと駆け込んで来たアスカをしっかり捉えていた。


「アスカっ!! 」


ああ、アスカ、戻ってきてくれたんだね・・・・!!


瞬時に歓喜に酔いつつ、両腕を開いてアスカが飛び込んでくるのを待つシンジであったが、彼の予想は裏切られる。


「玄関のドアが開かないのよっ!! 」


「へっ!? 」


アスカの怒声に近い訴えに、シンジは間抜けな声を上げる。


「だから、ドアが開かなきゃ出ていかれないでしょうがっ!!! 」


「なんだよ、それ・・・」


複雑な声を絞り出すシンジ。


対してアスカの蒼い瞳は妖しい光を放つ。


「あんたねぇ、あたしを逃がしたくないからって、玄関にカギかけるなんて姑息な手をつかわないでよっ!!! 」


「知らないっ!! 知らないって!! 僕じゃないって・・・・・!!! 」


胸倉をガクガクと揺さぶられながら抗弁するシンジであったが、事態は更に急転する。


ふっと室内の灯りが消えた。


「!? 」


二人とも反射的に周囲を見回してしまう。


「・・・・停電かな? 」


ようやく目が慣れてきた頃、シンジはポツリと言った。


エアコンも軽く身震いして静止していた。 


「・・・・・・・・・・・・・」


静まり返る室内。


「ちょっ、いつまで抱きついてるのよ! 」


突き飛ばされるシンジ。


「なんだよ、そっちが先に抱き着いてきたんじゃないか・・・・」


ぶちぶちいいながらも腰をあげたシンジは、台所の電源版へと向かう。


やはり、ブレーカーが落ちたわけではなく、停電らしい。


続いて玄関へと向かう。


シンジは冷たい扉に手をかけて、二度三度と力を込めてずらそうと試みる。


ビクともしなかった。


おかしいな。電子ロックのはずだから、電源が落ちても手動で開くはずなのに・・・・?


指先がしびれるように痛くなったため、シンジは扉から手を離す。


すっかり冷たく白くなった爪先を丸め、暖めていると、背後から苛立ったアスカの声。


「なに? 開かないの? 」


「うん・・・・・」


「何で開かないのよ、まったく! 」


「そんなこと僕に言われても、知らないよ」


寒さもあいまってぶっきらぼうに応じるシンジ。


おかげて彼は、アスカの苛立った言葉の中に、わずかな安堵が混じっていたのに気づかなかった。


「とにかく、リビングへ行こう。寒くて仕方ないよ」


「・・・・そうね」


アスカも寒さに身をすくめながら同意を示した。吐く息も白い。


リビングへと移動した二人。


シンジがキッチンから持ってきた非常用の懐中電灯だけが、室内にぼんやりとした光の輪を作っている。


まあ、すぐに復旧するだろう。


二人とも、そうタカをくくり、リビングに残った暖かい空気に身を浸しながら、まだお互いに無言であった。


しかし、事態はそう甘くなかったのである。


そのまま一時間が経過してしまった。


「まだ電気はこないのぉ!? 」


両腕で自分の体をかき抱き、その場で足踏みを始めるアスカ。


シンジも無言で腕をさすり寒さをこらえている。


窓の外の景色も白と黒の斑模様が流れていくのみ。景色なぞ見えようもないほどの風雪が室外を跋扈しているのは明白だ。


それがより寒さを演出していた。心理的にも。


リビングの空気も冷え切り、寒さがヒシヒシと二人を覆い尽くそうとしてくる。


「くうっ! 」


寒さをこらえきれなくなったアスカは、つかつかとベランダへと歩みより引き戸に手をかけた。


「ちょっと、何する気だよ!? 」


「脱出するのよ! このままここにいたら凍え死んじゃうわよっ!! 」


言うなり彼女は窓を開けてしまう。


シンジが止める間もなかった。


途端に室内へと吹き込む暴風と雪の塊。


「っっっっっっ・・・・・・!! 」


あまりの勢いに、アスカは悲鳴すら上げられない。


おっとり刀でかけつけたシンジが、どうにか窓を閉ざす。


「ふえええ〜ん・・・・・・・・」


振り返れば、真っ白い雪に覆われたアスカが、悲鳴とも泣き声ともつかぬ声を上げていた。


ものすごい風雪である。


確かにベランダには、非常用の脱出シューターや梯子が存在する。


しかし、この雪では、とてもじゃないが脱出するのは無理だ。


仮に脱出したとしても、停電の規模が把握できていない以上、隣人の好意にすがれるかどうかも怪しい。


定かではないが、この風雪と停電では、他の家庭でも前代未聞の騒ぎが生じていることだろう。


引越しが裏目に出るなんて・・・・・・。


シンジはアスカの髪や肩についた雪を払ってやりながら歯噛みする。


今この家には、テレビはおろかラジオすら存在しない。


電話線が雪の重みで切れたのか、電話も通じない。


そして、携帯電話も朝起きたら無くなってしまっていた。


おそらく、ミサトが、二人の最後の話し合いに無粋なもの・・・と判断して、一時的に預かっていったものと思われる。


よもや彼女もこのような天候、状態になるとは思っていなかったのだろう。


加えて、ミサト本人も、この天候では身動きが取れないに違いない。


すると・・・・・・・・・?


シンジは我知らず青ざめる。


僕らを助けに来てくれる人は、誰もいない!!


ましてや、二人は今日引っ越したことになっているのだ!


このまま、雪が止まず、停電も復旧しなかったら・・・・・・!


シンジは時計を見る。


時間は21時を指そうとしていた。


朝ならまだなんとかなるかもしれないが、これから益々冷え込んでくる時間帯だ。


「・・・・・・どうしたのよ? 」


シンジが茫然としているのを訝しく思ったアスカが、雪を払う手を止めて、訪ねて来た。


続いてシンジから発せられた言葉は思いもよらぬものだった。


「服、脱いで」


「・・・・・・・・・・はい? 」


「だから、早く服脱ぎなってば!! 」


「な、な、な・・・・・・・・・・・!! 」


瞬間沸騰するアスカ。


「この非常時に、なにいってるのよっ!! 」


怒声とともに腕が大きく振りかぶられる。


しなり、振り下ろされる腕。


そして乾いた炸裂音は・・・・・響かなかった。


アスカの腕を受け止めて、シンジはあくまで冷静な声で言う。


「いいから、脱ぐんだ。その服を着たままだと、下手したら凍え死んじゃうよ? 」


「・・・・・・ふ、ふん、だったらちゃんとそう言いなさいよ! 」


シンジの手を振り払い、アスカは悪態をつく。


彼女とてちょっと冷静になれば、このまま濡れた服を着つづけることの愚かさに気づこうというものだ。


「そっち向いてて! こっち向いたら殺すわよ! 」


「はいはい」


ため息交じりのシンジの声を背に、厚手のトレーナーにデニム地のジーンズを脱ぐ。


ぐしょ濡れのそれらを脱ぐと、刺さるような寒さがヒシヒシと彼女の柔肌をつついた。


そんな彼女の背中に暖かい感触が覆い被さってくる。


「これを着てて」


シンジが放ったタートルネックのセーターだった。


放った当人は、長袖シャツ一枚という姿のまま、後ろも振り返らずリビングを出ていってしまう。


「・・・・・・・・」


しばらく下着姿というあられもない格好で紺色のセーターを眺めていたアスカだったが、


もう一度寒さに身震いすると、そのセーターに袖を通した。


・・・・暖かい


たっぷりとしたセーターは、彼女の太ももの半ばまで覆ってしまう。


無論、昔と違い、シンジとアスカには著しい身長差が生じていることもあるが。


シンジの温もりと匂いがアスカを包む。


なぜか幸せな気分になった彼女は、冷たい床へとへたり込んだ。


五分ほどしてシンジはリビングへと戻ってきた。


「だめだ、なにもないや・・・。アスカの部屋には、タオルかなんか残ってない? 」


アスカは慌てて首を振る。


確かに部屋にはぬいぐるみが鎮座している。


あるいは、あれも防寒に役立つかもしれないが、本来の用途と逸脱する以上、見られたくなかった。


「そっか・・・・。じゃ、ミサトさんの寝室も見てくるよ」


残念そうにシンジはきびすを返す。リビングも相当冷えてきたようで、彼の吐く息も白い。


アスカも身を縮こませる。


冷気は容赦無く彼女の温もりを削り取っていく。


それから更に五分後。


ドタドタした足音が、凍り始めた空気を振るわせる。


「あった、あったよ、アスカ! 」


歓喜の声をあげてリビングへと駆け込んでくるシンジ。


彼の手には、一枚の厚手の毛布が抱えられていた。


「そう、良かったわね」


寒さのためか、アスカの反応も精彩を欠いている。


そんな彼女をシンジは毛布で包んだ。


「これで大丈夫だよ」


微笑むシンジの頬は白く、唇は紫色。


「・・・・あんたは、どうすんのよ? 」


「僕は、もう少し別のところ探してみるよ。まだ毛布かタオルがあるかもしれないし・・・」


「・・・・あんた馬鹿ぁ!? 」


アスカのお馴染みのフレーズがリビングに響く。


「あんたの部屋にもなくて、あたしの部屋にもない。ついでにミサトの部屋にももうないっていったら、


他にどこにあるってのよ!? 」


「でも・・・」


シンジが何か言いかける前に、アスカは自分にかかった毛布を跳ね上げた。


「は、入りなさいよ」


「・・・・・・・・・・」


「早く! 寒いんだからさ!! 」


「は、はいっ! 」


アスカの怒声に弾かれたようにシンジは彼女の傍らへと潜り込んだ。


厚い毛布の中で肩を寄せ合う二人。


「・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・何黙ってるのよ? 」


「いや、その・・・・・・・」


そっぽを向いたままシンジ。


「・・・・ふん」


アスカもそっぽを向いてしまう。


異常事態に失念していたが、二人はケンカ中だったはずである。


でも・・・・・・・・・・


もう・・・・・・・・・・


しばらく身体を寄せ合い身じろぎしなかった二人だったが、アスカがやおら大声を上げた。


「ああ、もう! 寒いったらありゃしない!! 」


そして彼女は、着ていたシンジのセーターを脱ぎ始めたのである。


胸下まで捲り上げたところでシンジが目を丸くしているのに気づき、無理やり首を捻じ曲げ、明後日の方向へと向かせてやる。


脱ぎ終えたアスカは、勢い良くセーターを毛布の中から放り出してしまった。


「ちょっ! なんで脱いじゃうんだよっ! 」


シンジの驚きの声を平然と聞き流し、アスカは更なる驚愕の爆弾を投げつけた。


「あんたも脱ぎなさいよ! 」


「・・・・・・・え!? 」


「またスケベなこと考えてるのっ!? 寒い時は、服脱いで互いの体温で暖めあうのが常識でしょうがっ!! 」


茫然とするシンジに、アスカは照れ隠しのように怒声を浴びせる。


スケベ云々を否定していても、言っていること自体とんでもないことなのだが。


「ほら、早く脱ぎなさいよ・・・」


「う、うん・・・」


アスカに促されるまま、シャツを脱いでしまうシンジ。


これで毛布の中の二人は、下着だけという姿である。


「ふう・・・・・・・」


妙に色っぽいため息をついて、アスカが背中を預けてくる。


夜目にも鮮やかな白い背中に、ブラジャーの紐を見とって赤面したシンジは、


慌てて視線を逸らすと自らの背中でアスカを受け止めた。


互いに背中をもたれさせる。


温もりが心地良い。


アスカの髪が背中をくすぐってこそばゆかった。


「ちょっと、そんなに動かないでよ、くすぐったいから・・・」


「ご、ごめん・・・・」


どうにか落ち着くと、妙に懐かしさがこみ上げてきた。


彼は、その根源たる記憶を遡行しようと試みる。


こんな感じは・・・・いつか・・・だいぶ昔に・・・・・・。


「・・・・確か、こんな感じだったよね。


あの世界で二人きり・・・・」


アスカの呟きが、シンジの記憶を瞬時に再構成する。










朱に染まった世界。


紅い海から寄せては返す波音が、世界の奏でる唯一の音。


その不思議な郷愁を誘う響きに身を任せ、


慰めや労りの言葉もなく、


二人は互いの温もりだけを感じていた。


原初の揺籃に身を預けた二人が目を覚ますと、


そこには、他の人々がいた。


急速に、現在(いま)を取り戻していった世界。


すべてが元通りに(過去どおりに?)戻るのに、それほどの時間はかからなかった・・・・・。







懐かしく、悲しく、忌まわしく、そして大切な記憶。


シンジはアスカにこの話題を振ったことはなかった。


いや、意識して思い起こすことすらなかった。


一種の禁忌として、彼の中に封印されていた記憶。


それが、アスカの言葉ともに鮮やかに脳裏に浮かぶ。


・・・・彼女の中では、どう決着がついているのだろう?


確認するのが怖かった。


いっそのこと、その記憶だけ彼女の中から剥ぎ取ってしまいたい。


そう思ったことすらある。


しかし、なんで今になって・・・・・・


「ねぇ、シンジ。ここに白い傷跡が残っているの、解る? 」


アスカは毛布から右腕だけを出してシンジの目前に晒す。


鮮やかなまでに白い腕には、付け根から手の甲にまで、注意しても見落としそうなほどの白い線が一筋走っている。


それは戦いの傷跡。


「アスカ・・・っ!! 」


いいようのない感情に襲われたシンジは、アスカの腕をとって、無理矢理こちらを向かせた。


真正面からブルーアイズを見つめる。


ほんの少しだけだが、その青い瞳は左の方だけ光が翳っている。


よほど近くまで近寄らなければわからないほどの傷跡。






・・・・・・あの時も二人きりだった。


今も二人きり。


そして、僕は。


君がいたから。


君がいればこそ・・・・・・・・







「あの、その、アスカ、ごめんっ!! 」


青い双眸がきょとんとした光を浮かべる。


「なによ、いきなり? 」


苦笑しながら応じるアスカに、シンジは一気にまくし立てた。


「その、色々意地張ったり、お弁当つくらなかったり、引越し騒ぎまで起こしちゃったし・・・・」


対して、アスカは俯く。


そんな彼女の態度をどう解釈したのか、シンジは必死で語り掛け続ける。


「その、僕はアスカが出ていくのなんか、全然望んじゃいないんだ。本当だよ! 」


アスカの毛布に包まれた肩が小刻みに震えた。


その震えは除々大きくなり、ついには、アスカの爆笑とともに爆発した。


大きな笑い声をたてるアスカ。


今度は、シンジの方が狐につままれたような表情を浮かべてしまう。


「・・・何がおかしいんだよ? 」


「だって・・・・ふふふふふふふふっ・・・・・・」


ひとしきり笑い終えたアスカは、目尻の涙を拭いながら言った。


「知ってたわよ、そんなこと。


だって、あたしも同じこと考えてたんだからさ・・・・」


そうなのだ。


互いに気持ちは同じ。


後は、どちらが先に謝るか。


そしてきっかけだけ。


彼らは、二人とも、それを再確認したのである。


「・・・・・・・ふう。結局、僕が折れちゃったなあ」


これ以上意地を張ることはない。


シンジは宙を見上げてごちる。


「ふん、あたしより優位に立とうなんて、百年はやいのよ♪ 」


「でも、僕も男らしいとこ見せなきゃ、と思って。


もう、高校卒業だし・・・・」


「何いってんの。シンジは十分男らしいわよ? 


・・・・・・真っ先に着ている服貸してくれたり、毛布探してきてくれたりしてさ」


「え? 最後の方が聞こえないよ? 」


「こんな近くで言ってるのに・・・? ぶぁか・・・・・」


暖かい笑い声が、本当に久しぶりに、葛城邸のリビングに弾けた。









「あ、電気点いたよ、アスカ? 」


「・・・もう少しだけ・・・・・・」


「・・・うん、そうだね」











翌朝、葛城邸に舞い戻ったミサトは、リビングの光景を目にして、なんとも満足気な笑みを浮かべた。


静かに廊下へ出るとミサトは携帯を操作する。コールナンバーは『赤木リツコ』だ。


「おはよう、リツコ。全て予定どおり上手くいったわよん♪」


にこやかに報告するミサトの声と同じく、リツコの声どこかホッとしている。


『そう、良かったわ。あれだけ大掛かりなことをした甲斐もあったというものね』


「うふふ、昨晩は予定以上に風が吹いてくれたもの。それ以外は計画に不確定要素はなかったもんね」


彼女らの計画内容は、昨晩用意、稼動された道具と、その結果を見れば明らかである。


高性能降雪機。


MAGIによって引き起こした人為的かつ局地的な停電。


そして、さりげなくミサトの部屋に残されていた一枚きりの毛布。


結果は、仲良く同じ毛布に包まれてリビングで眠りこけるシンジとアスカ。


「二人に必要だったのは、きっかけだけなのよ。きっかけだけ・・・・・・・」


『そう? 正味な話、お節介が過ぎたんじゃないの? 』


リツコのからかうような声に、ミサトは穏やかに応じた。


「どっちにしろ、姉としては見ているのももどかしくて、ね」


ミサトは顔を上げる。


「これが、家族として、姉としての、最後のプレゼントよ・・・・」


その横顔は、少しだけ寂しそうだった。


携帯をきったミサトは、リビングへと向き直る。


起きる気配が微塵もない二人を横目に、食材と調理用具を抱えてキッチンへと向かう。


「さて、久々に腕を振るいますか! 」


袖をまくってエプロンをつけるミサトに対し、二人は未だ夢の中。


きっと二人は夢の中でも幸せだろう。


たとえその目覚めが、焦げ臭い匂いだとしても。
















Forever・・・・・・















まず、ここまで読んで下さった方に感謝します。

このたび、「you&i」初投稿させていただいた三只と申します。

この話は、「Can’t Quit This!!! 〜KNOCK'EM OUT〜」という曲のワンフレーズ、

『寒い夜 そばにいて いつだって君といたい』

からインスピレーションを得ました。

しかし、思いのほか雰囲気が違ってしまって、書いた本人もとまどってたりします(笑)

兎にも角にも、今まで書いたもので一番時間をかけた作品かもしれません。

読んでくだすった方の心の片隅に、なにかしらの余韻を響かせることができましたら幸いです。

それでは、いずれ、どこかでお会いしましょう。


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