Twitterを無条件で信じてませんか? ~チキンナゲットの都市伝説~
海外サイトで、これがチキンナゲットの原型だ、として公開されたショッキングな写真が、日本語版に翻訳されて掲載された。
それでも僕はチキンナゲット食べ続けます。 : ギズモード・ジャパン
それによると、チキンナゲットの原料となるのは、鳥を骨も目玉も内臓も丸ごとすり身にしてどろどろにしたものを固めて、さらに殺菌、漂白したものを練り合わせてチキンナゲットにしている、というものだ。
だが、ちょっと待ってほしい。一発だけなら誤射かもしれない…ではなくて、実際のチキンナゲットを思い出してみてほしい。
はっきりいって、これは20年前にはやった「某ハンバーガーにはネズミの肉が使われている」「ミミズが使われている」と同程度に信憑性の低いウワサ話、都市伝説でしかないのではないか。
疑わしい三つの点
まず第一に。一般的なチキンナゲットを食べてみると、ちゃんと鶏肉の繊維が残っている。フライドチキンではないので、骨をのぞいてバラした肉を一度整形してはいるのだろうが、「骨も目もドロドロにすりつぶした」ものではありえない。何の動物にせよ、そこまですり身にしたら、食感は魚肉ソーセージのようなつるりとしたものになるだろう。
第二に、これは食べなくても容易に推察できる。スーパーに行って鶏肉を買ってみれば分かるが、そこまで高いものではない。例えばマクドナルドや冷凍食品会社のように原材料の大量獲得が可能で、一定以上の品質を保つ必要のある企業が、わざわざ味と安全性を落としてまで、食べられない部分をむりやり原料にしようとするとは考えがたい。
第三に、もしも日本のどこかにあのような「チキンナゲットの原料」を作る工場があるとしたら、誰かが携帯カメラで撮って、それこそTwitterなりmixiなりで公開されてもっと早く大祭りになっていることだろう。もしそれが事実としてそうなった場合、日本のチキンナゲット産業は致命的な打撃を被る。鶏肉の調達コストと、こんな妙な科学的チキンナゲットを作るリスクと、全く見合わない。
以上のように、実物を見ても、経営的に考えても、あの「チキンナゲットの原料」から実際にチキンナゲットが作られると言うことはあり得ない。
しかし、現代社会では、「マスコミは嘘つきだ」「真実はいつも隠されている」と考える人たち(僕も含めて)がいて、「ネットにはいつも真実がある」と考えてしまう傾向がある。「嘘を嘘と見抜ける」人でも、写真の説得力や情報のスピードに流されてしまうことはある。
以下、Twitterの反応
- これがチキンナゲットの全貌!食べる気なくなる(笑)
- チキンナゲット好きな人は見ない方が良いです…
- 怖くて見れないRT @***** 見ちゃった…RT @*****: RT @*****: 昨日の朝方につぶやいたこの記事がすごい勢いでRTされてます。これがチキンナゲットの原型
- 世の中には知らなくていいことが…
- ホントに、なぜわざわざピンクの着色するのか…
- やっぱファーストフードは食べれない。RT @*****_*****あいやーRT @harajuku207 にわかには信じがたいけど、食欲はなくなった。
- やっぱりこんなのなんだ。
- ヒャー!嫌いで良かったー!
- うわぁ…見ちゃったからもう食べられない。。ファーストフードやめよ…
- これは・・・ チキンナゲットはもう注文できない (´・ω・`)
以下、はてなブックマークの反応
- チキンナゲット調理前の写真がマジグロイという話。閲覧注意。
- 成形肉の真実
- だいぶ衝撃的なチキンナゲットの状態。閲覧注意。
- 知ってましたが、食べ続けている。。。多分コンビニで売られているチキン的なるモノもそうなのでしょう。。。
- 長年気持ち悪い作り方してんだろうなと思ってたチキンナゲットですが、やっぱり気持ち悪い。別に好きでないので、今後も食べないだろうな
ただし、ざっと見た範囲では、反射的なTwitterのコメントに比べて、はてなの方では懐疑的な反応も散見された。さすが疑り深いはてなーだぜ。
- うーん、本当にこれナゲットなの?この行程の前後も見てみないと、何とも言い難い。
- 日本マクドナルドはタイで養鶏。鶏は斬首で屠殺かつタイの養鶏業の頭や脚はワニ養殖業払い下げが基本。つまり仮に本当でも日本人には関係なしなんでは?全部混ぜの元ネタは映画「スーパーサイズミー」だから米は…謎
- ウソくせー。1、マックの工場だとしたら、小規模すぎる。違うならこの話に価値はない 2、なんで段ボール? 3、何で色つけるんだ?ピンクのナゲットなんて見た事ない。 4、アンモニアで消毒してる?マジで?
いや、これはユーザー層の資質の問題というより、サービスの特性の問題かも知れない。
一次情報、二次情報のニュースサイト自体を見ているはてなユーザーと違い、、知り合いのつぶやき、知り合いの知り合いからのReTweet、という形で情報に触れるTwitterユーザーは、その情報の真贋に対する認識がかなり甘くなるのではないか。
【拡散希望】として、Twitterでは有益情報と同じくらい、デマやガセ情報も大量に、しかも瞬時に拡散される。それは昔のチェーンメールの拡がる速度よりずっと早い。
日本マクドナルドの回答
さて実際に、この「チキンナゲット」のウワサを聞きつけて、日本マクドナルドに問い合わせて確認した人がいる。
(マクドナルドで売られているチキンナゲットは、僕たちが日本で普通に口にする平均的なチキンナゲットだと思うので、ここでは「チキンナゲット=マクドナルドのチキンナゲット」として話を進める)
日本マクドナルドは次のように回答している。
弊社のチキンマックナゲットは、原料鶏肉のもも肉部分と胸肉部分を一定の割合で混ぜて使用しておりますが、この度ご指摘いただいたサイトの内容に関しましては、弊社では情報がないために分かりかねます。
なおご参考までに、チキンマックナゲットの仕様原材料及び添加物は、以下の通りでございます。
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鶏肉、小麦粉、コーンフラワー、食塩、でん粉、乳清、香辛料、セロリ、植物油脂米分、リン酸(Na)、膨張剤
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(チキンナゲットの原型についてマクドナルドさんから返事が来ました | NSP-momo blog)
とは言え、これは日本マクドナルドの話なので、世界に冠たるジャンクフード大国であるアメリカで、実際に鳥の全身をすり身にして何かを作っている、という可能性は否定しきれないんですけど、ね。
いずれにせよ。
「電車が来てる!」とホームに駆け込み乗車をして、動き始めてから反対方向の電車に乗っていることに気付いた、という経験は誰しもあるだろう。
センセーショナルな情報、おもしろくて本当っぽいネタが流れてきたときには、「マジで!」と飛びつくだけではなくて、一旦自分の頭で「これは本当か?」「これは何を意味しているのか?」と判断してから、自分の意志で乗るようにしたい。
特にTwitterは、140文字で「つぶやく」だけのため、どんどん脳を使わない方向に流れがちなので気をつけたい。
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2010年10月7日 at 21:40 編集
ネット初心者は真偽も確認せずに噂を広めるからなあ・・・