2010年10月8日18時8分
劉暁波氏=ロイター
【オスロ=伊東和貴】ノルウェーのノーベル賞委員会は8日、2010年のノーベル平和賞を、中国共産党による一党独裁の見直しや言論・宗教の自由などを求めた「08憲章」を起草した中国人人権活動家で作家の劉暁波(リウ・シアオ・ポー)氏(54)に授与すると発表した。中国の人権改善や民主化に取り組む姿勢が評価された。
中国在住の中国人がノーベル賞を受けるのは、自然科学系も含めて劉氏が初。その授賞決定は、経済大国として国際社会での存在感を増す中国に対し、民主化と人権改善を強く促したものだ。ノルウェーでの報道によると、中国政府は、劉氏ら反体制派への授与が「中国とノルウェーの関係に影響を及ぼす」と委員会側に事前に圧力をかけていたとされる。今後、中国の猛烈な反発を招くのは必至だ。
同委員会は授賞理由の中で「中国は世界第2位の経済大国になったが、基本的人権の分野において責任を果たす必要がある」とした。
授賞式は12月10日にオスロである。賞金は、1千万スウェーデンクローナ(約1億2千万円)。
劉氏は民主化を求める学生らが抑え込まれた89年の天安門事件の指導的知識人として脚光を浴び、その後、何度も逮捕されながら民主化運動を続けてきた。09年春、08憲章を起草したとして国家政権転覆扇動の疑いで逮捕され、今年2月に懲役11年と政治的権利剥奪(はくだつ)2年の実刑判決が確定し、服役中。このため、劉氏は自身の受賞すら知らされない恐れもある。
「08憲章」は08年12月、世界人権宣言の採択60周年を機に、インターネット上で発表された。中国共産党の一党独裁を終わらせ、三権分立を保障する民主的憲政の下での中華連邦共和国の設立を主張。著名な作家や人権活動家ら303人が署名、その後中国全土で8千人以上に広がった。