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●吉田さんを中心とした制作・宣伝部をこの5年で作り上げて、今は完全に花開いたような状態なのでしょうか?
吉田:レーベルや組織の統廃合をしましたし、スタッフも若返らせました。
●ワーナーはすごく変わりましたよね。
吉田:そういっていただけると嬉しいですね。自分が描く青写真を実行するときに、それをサポートしてくれるスタッフは非常に重要ですので、自分の構想といいますか、例えば「A&Rとは?」とか「ヒットとは?」とか何度も説明しながら組織を進化させる中で、今はだいぶ完成系に近いかなと感じています。
●CEOになられても制作・宣伝のTOPの立場はキープされるんですか?
吉田:そうですね。経営だけをして、ずっと会議室にいてというタイプの経営者もいると思うんですが、やはり僕の持ち味は自分でユニフォームを着て、グラウンドに降りてスタッフと一緒にプレーをすることだと思うので、今後も二足のわらじを履いて行きます。
●まさにプレイング・マネージャーですね。でも、それをやると忙しいと5年前には仰っていましたが、今もお忙しそうですよね。
吉田:そうですね(笑)。できればもう少し会社全体を俯瞰で見られればいいなとも思うんですが、人脈のような部分は簡単には継承できないので難しいところです。ただ、難しいながらも継承させていかなくてはいけないと思っていますし、距離はどうであれ、現場が僕の持ち味だと思っていますので、今後も関わっていくと思います。
5年前のワーナーはヒットが出るような状況ではなく、「自分で動いてヒットを作らないと潰れてしまう」という強迫観念というか、ケツに火がついた状況でした。幸いコブクロのヒットが出てからは上手く回り出して、それを見ているスタッフも「自分もやらなきゃ」という良い連鎖反応が起こりました。
●そしてコブクロ、絢香とミリオンを立て続けに出されたわけですから素晴らしいですね。その結果、ワーナーのドメスティックの割合もすごく増えましたよね。
吉田:僕が来たときはドメスティックの割合が洋楽の半分だったんですが、今はその3倍くらいあります。ワーナーミュージック・グループの中でもドメスティックがここまで大きい国は他にないと思います。5年前のワーナーは邦楽を潰さなくてはいけないというところまで来ていましたから、僕の最大の使命は邦楽の立て直しでした。そのためにはアルバムが売れるアーティストを育てる必要がありました。シングル・ヒットは出るけどアルバムは売れないというアーティストが10組いるよりも、アルバムが売れるアーティストが2〜3組いる方が売り上げの構築としては大きいので、初めからそういうアーティストを作ろうと思っていました。
●確かにコブクロも絢香もアルバムが売れるアーティストですね。
吉田:そうですね。どちらもアルバム型のアーティストです。コブクロのベスト盤は350万枚売れましたし、オリジナルアルバムも170万枚売れました。
●そこまでアルバムが売れると達成感がありますよね(笑)。
吉田:最高ですね(笑)。でも、それは一人ではできませんし、アーティストに恵まれたのが一番大きいと思います。ダイヤモンドの原石に恵まれても、なかなか花開かないで宝の持ち腐れになってしまうケースもあれば、人脈やバイタリティーはあるのに原石に恵まれないケースもあるでしょうし、本当に組み合わせの妙と言いますか、タイミングもあると思いますね。
●また、邦楽だけでなく洋楽もバランスよく売れていますね。
吉田:近年、洋楽が苦戦している中でもワーナーは善戦していると思います。ワーナーの洋楽はカタログが充実しているのに加え、新作もキャッチーでハイクオリティのアーティストや作品が次々と届きます。洋楽の作品でもテレビドラマの挿入歌にしたり、音楽番組に出したり、ワイドショーで扱ってもらったりと「邦楽の手法で育てていく」という方針で、一昨年にはダニエル・パウダー、ジェイムス・ブラントと洋楽の新人がブレイクしました。ただ、今年は苦戦しているので、今はそこを色々と検証しているところです。
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