北九州市の北九州八幡東病院を舞台にした「つめ切り事件」。無罪判決を法廷で聞きながら、2年前に取材した福島県立大野病院事件を思い出した。
帝王切開手術を受けた女性が死亡し、担当の産婦人科医が業務上過失致死罪などで起訴され、無罪となった事件。捜査の端緒は、県の事故調査委員会が医師の過失を認め、各メディアが大きく報道したことだった。
一方のつめ切り事件は、病院側が記者会見で「虐待」と認めたことで表面化。わずか7日後、異例のスピードで看護師が逮捕された。市の第三者委員会も「虐待」と判断した。
共通するのは内部調査や報道をきっかけに捜査が始まった点だ。医療、看護行為が違法かどうかを拙速に判断する怖さを二つの「事件」は物語っている。
〔福岡都市圏版〕
毎日新聞 2010年10月8日 地方版