植木は高校3年生の時、日体大ライフセービング部のコーチと出会い、この競技に魅了された。その後、日体大に進学しライフセービング部に入り、海での合宿でダウン症の子どもに泳ぎ方を教える機会を持った。その子の母親が安心して子どもを任せてくれたことを知った植木は、ライフセーバーが増えれば、誰もが安心して海を楽しめる、と強く感じた。卒業後、人の役に立ちたいと養護学校の教師になり、ライフセービングの普及を目指し、本格的に競技に取り組んでいく。24歳で全日本選手権に初優勝。競技に夢中になったが、その後は成績不振に苦しんだ。「競技者として勝つことだけに価値を見いだしていた」と、その時を振り返る。勝ち負けの前に、ビーチの小石ひとつを拾うことが事故を防ぐ救命行為。ライフセービングはただの旗獲りではなく、その先に救える命があると思わなければならない。
今年10月、二度目の世界選手権に出場する。期待されるのは日本初の金メダル。しかし、今の植木は、勝つことよりも大切なことがあることを知っている。命を救うスキルを極限まで高めることができれば、自然とメダルはついてくる。
番組では、人命救助を念頭に生まれた競技・ライフセービングを通して、命の尊さを見つめながら競技の普及に力を尽くす植木将人の姿を追う。
語り:山本太郎