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スポーツ報知>コラム>城田憲子の「フィギュアの世界」

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エキシビション&ショー 魅せる為に、強くなるために(その2)

 真壁(株式会社CIC社長)「私たちのショーに現役の日本人選手も出てもらって…というこの流れの中で、ソルトレーククシティー五輪直前ですね。「GET A CHANCE 2002」という壮行会をやることになったんです」

 城田(本紙評論家)「代表選手は決まったけれど、本田も村主もその年、必ずしも絶好調とは言えなかった。このままじゃ、五輪で良い演技で滑れない、何とかしなきゃ、と」

 真壁「本番直前、もう一度お客さんの前で滑らすべきだ、というわけで(2002年)1月の四大陸選手権後、代々木第一体育館を押さえて、本当に急きょの開催でしたね」

 ―それが現在のドリームオンアイスやメダリストオンアイスなど、日本代表エキシビションにつながっていく最初の壮行会ですね。まだ野辺山のサマーフェスティバルもなければ、プリンスアイスワールドに現役選手が出ることもなかった。もちろん、今、各地で行われているアイスショーも何もなかった時代

 真壁「これ、思い出すでしょう。その時のパンフレット! 本田、村主から当時ノービスの真央ちゃん、無良崇人君まで、すべて日本人。全選手の写真が載ってはいるけれど、実は1枚の紙を折りたたんだだけのものなんです。記念すべきもの、ちゃんととってありますよ」

 城田「プログラムを作るお金も時間もないから、なんとかして安く作ってもらったんですよね。準備の時間もないから、徹夜作業で、スタッフの皆さんは体育館の床にゴザと毛布を敷いて寝てもらってました(笑)。まあ急なことだから、1万人の会場に1000人集まればいいかな、と。会場を確保する資金はCICさんと、当時、全日本選手権&世界選手権の放映権を持っていたTBSさんに協賛して貰って、赤字覚悟で…」

 真壁「ところがこの時、実際には2500人もお客さんが集まった! そしてこの壮行会で、当時のエースの本田が、完璧な演技のショートプログラム(SP)を見せたんです。実は五輪直前だから出場したくないと、彼は嫌がったんですね。男子はスケジュールが早くて、もう2週間後には試合スタートだったから、その気持ちもよくわかる。それを城田さんが無理矢理出したんです(笑)。それでも滑ってみたら、完璧な演技だった! その時に得たいいイメージを持って五輪会場のソルトレークに行ったらSPで、彼は2番だったんですよ」

 城田「こんなことなら、フリーも滑らせればよかった(笑)と」

 真壁「残念ながらフリー4位、総合4位でメダルには届かなかったけれど、それにしてもSP2位は、この時代を考えれば大変なことだったでしょう」

 城田「『武史もやればできるじゃん!』ってみんなに言われましたよ(笑)」

 真壁「今でも本田は、選手時代の印象深い演技のひとつに、必ずこの五輪でのSPを入れてますね」 

 城田「あれはドラマチックでしたよ。シーズン前半、あまり良くなくて、無理に出た壮行会でパーフェクトで、そのまま本番も、と」

 真壁「それほど目立ちはしなかったけれど、女子では村主も総合5位。これも素晴らしかった」

 城田「ソルトレークシティー五輪、北米に追い風が吹く雰囲気の中で、ISU(国際スケート連盟)にも当時の日本女子が認められた最初ですよね。5番だけどエキシビションにも呼んでもらえて。章枝ちゃんも直前の壮行会で、自信をつけたんじゃないかな。そんなふうに、本当に強い選手を育てるためになんとかしよう、ショーやエキシビションを活用して、もっと競技での力を向上させよう、と思ったところに、真壁さんのCICが協力してくれたんです。でも私たちと真壁さんの目的は、それぞれ違ったんですよ。スケート連盟は、選手たちを強くしよう、と。真壁さんはショービジネスの世界に夢があり、真のエンターテイメントを氷の上で見せることを目指していたんですから」(続く)

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(2010年10月5日16時55分  スポーツ報知)

著者略歴 城田 憲子(しろた・のりこ)

 1946年7月4日、東京都生まれ。立大卒。選手時代はシングルとアイスダンスで活躍し、全日本選手権ダンス部門2連覇。現役引退後は日本スケート連盟で選手強化を手掛け、長野五輪からトリノ五輪までフィギュア強化部長を歴任。また、国際審判員とレフェリー資格を持ち、五輪をはじめ多くの国際試合でレフェリー&ジャッジも務める。

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