【ジャカルタ佐藤賢二郎】南極海で今年1月、日本の調査捕鯨船団の調査船と衝突、沈没した反捕鯨団体「シー・シェパード」(SS)の抗議船「アディ・ギル号」のピーター・ベスーン元船長は7日、「ポール・ワトソンSS代表の指示で故意に沈没させた」と述べ、沈没は自作自演だったと発言した。ラジオ・ニュージーランドの取材に答えた。SSは「ギル号はえい航する途中で浸水し沈没した」と主張している。
ベスーン氏は「(ギル号の)エンジン室は無事で救出可能だった」とし、代表のワトソン容疑者=傷害容疑などで国際手配中=から「一般の人々から共感を集めるため」に沈没させるよう指示があったと証言。SSを「道徳的に破綻(はたん)している」と批判した。
一方、ワトソン容疑者は「けん引できない状態で、判断は船長であるベスーン氏が下した」と否定した。
日本の調査捕鯨船の調査船への艦船侵入罪などに問われたベスーン氏は今年7月、東京地裁で執行猶予付きの有罪判決を受け、ニュージーランドに強制送還されていた。
豪紙シドニー・モーニング・ヘラルド(電子版)によると、ベスーン氏は南極海での反捕鯨活動への復帰をSSに求めたが、活動への不参加が執行猶予の理由の一つだったため、SS側は拒否。同氏が日本の捜査当局に対し、「妨害行為はすべてワトソン代表の指示」と「うその証言」をしたとして、6日までに一切の関係を絶った。
ワトソン容疑者は「(ベスーン氏は)SSと不仲になったことを恨んでいる」と述べ、沈没を巡る発言は組織への報復と反論した。
毎日新聞 2010年10月7日 21時34分(最終更新 10月7日 23時32分)