2010年10月7日22時37分
他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙による健康被害を防ぐため、福岡県は県庁など約90施設の建物内を禁煙にする方針を固めた。公共施設などの全面禁煙を求める厚生労働省の通知を受けた対応で、県議会などにも禁煙を求めるが、愛煙家の県議は「多額のたばこ税を納めている喫煙者を尊重すべきだ」と反発する。
麻生渡知事は9月下旬の県議会で「官公庁、医療機関の建物内の禁煙を徹底していきたい」と明言した。県の調査では、建物内が禁煙になっている県内の官公庁は約66%。県は近く県庁や出先機関の建物内禁煙に向けた具体的なスケジュールを決め、県議会や県警、市町村などにも禁煙化を呼びかける。
大和浩・産業医大教授(健康開発科学)の調査では、本庁舎の建物内を禁煙にしているのは山口、佐賀など22道府県。ほかの20都県は禁煙を検討中だが、熊本、宮崎などは未検討。議会棟はさらに対応が遅く、建物内禁煙は兵庫、沖縄など5県。ほかは大半が分煙も徹底されていない。
中でも、福岡県議会は1階の喫煙室のほかに委員会室やエレベーター前、食堂などにも灰皿があり、禁煙場所は本会議場などごく一部だ。受動喫煙対策を扱う厚生労働環境委員会では、議員が紫煙を上げながら審議している。
全国初の女性議長になった田中秀子議長は就任当初、議会棟の禁煙化に意欲を見せたが、最大会派の自民党県議団(42人)は約15人が喫煙者。いまだ禁煙化は議題に上らない。
喫煙派の反論材料は、たばこ税だ。昨年度は県税収入の約2%を占めたが、増税でさらに割合が高まる可能性もある。あるベテラン議員は「我々がどれだけ財政難の県に貢献していると思っているのか」と語気を強める。
これに対して大和教授は、受動喫煙が原因の肺がんや虚血性心疾患で年約6800人が死亡しているという厚労省研究班の推計を挙げ、「医療費や喫煙室の維持費などを考えれば、国全体では、たばこ税を上回る支出がある。禁煙化を進めるべきだ」と話している。(小林豪)