藤原彰『餓死した英霊たち』青木書店
太平洋戦争での日本の軍人の死者は、「名誉の戦死」だとおもっている人も多いだろう。
しかし、大半は「飢え死に」なのである。
いや、正確には、せまい意味での「餓死」と、飢餓的状況のなかで死んでいった「病死」などをふくめるのだが。
230万の戦没者のうち、なんと140万前後だと筆者は推計している。
筆者はおもな作戦を検証し、おおくの兵がどのように「飢え死」においこまれていったかをしらべた。
最大のものは、補給=兵站のひどい軽視であった。
いま日本では、イージス艦をだす、ださないが、やかましく議論されている。しかしすでに給油艦がインド洋にでかけ、そこで補給された爆撃機が、イラクの北を空爆している。そしてすでに子どもや民間人が犠牲になっている。
日本は、アメリカの「後方支援国家」の役割をになおうとしているのだ。たなざらしになっている有事法案もまさにそれだ。
本書をよんでもわかるとおり、後方支援=兵站とは、戦争にとっては、欠くべからざる役目である。戦争の死命を制するほどのものだ。
そしてまた、「名誉の戦死」といわれている人たちが、実は「敵」国の弾丸ではなく、自国の無謀な作戦によって殺されていたのだという事実に慄然とする。