2010年8月15日 20時36分 更新:8月15日 21時3分
【ソウル大澤文護】韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は15日、「光復(日本の植民統治からの解放)65周年」記念演説で、「平和」「経済」「民族」の3段階の共同体を経て南北統一を実現し、統一費用を準備するため「統一税」などの検討開始を提案した。金正日(キム・ジョンイル)総書記の健康悪化や権力継承により北朝鮮情勢が急変することを前提にした提案であり、北朝鮮の強い反発が予想される。
李大統領は演説の中で、統一への道筋として(1)朝鮮半島非核化を前提にした南北の「平和共同体」(2)北朝鮮経済を発展させたうえでの「経済共同体」(3)民族全体の自由や生活の基本権を保障する「民族共同体」--を順次構築すべきだとの3段階統一ビジョンを提案した。さらに北朝鮮復興など、統一にかかる莫大(ばくだい)な費用を準備するため「統一税」導入について国民的な論議を開始するよう訴えた。
李大統領の提案の背景にあるのは、08年夏以来、明らかになってきた金総書記の健康悪化だ。さらに北朝鮮が来月開催を予告している「労働党代表者会」で、金総書記の三男、正銀(ジョンウン)氏への権力継承準備が表面化すれば、北朝鮮は不安定な体制移行期に入り、朝鮮半島情勢は緊張が続く。一方、韓国政府は今年3月、黄海で起きた海軍哨戒艦天安(チョンアン)沈没事件を北朝鮮潜水艇による魚雷攻撃と断定し、国連安保理での非難決議採択などを求めた。しかし、中国やロシアの慎重姿勢で思い通りの成果は得られなかった。
こうした情勢の中、李大統領が北朝鮮問題について提案したのは、南北統一のビジョンや「統一税」検討開始を示すことで、国際社会での韓国の存在感を高めようとの狙いがある。同時に国民に団結を求め、政権の求心力を高めることも期待しているとみられる。