2010年8月13日 0時39分 更新:8月13日 8時11分
15年ぶりの高値水準となる円高と、株安進行に危機感を強めた政府・日銀は12日、菅直人首相や日銀の白川方明総裁らが為替介入や追加の金融緩和の可能性をちらつかせる「口先介入」を展開、市場をけん制した。ただ、米国が景気下支えを狙ってドル安容認に傾く中、円高阻止の円売り・ドル買い介入はハードルが高い。追加緩和も利下げ余地が乏しく、円高に歯止めをかけられるか分からない。口先介入に躍起な政府・日銀の姿は政策の手詰まり感を印象づけた。【坂井隆之、清水憲司】
「為替動向を重大な関心を持って極めて注意深く見守っている」。野田佳彦財務相は12日夕、夏休みを返上し急きょ財務省内で会見、急激な円高・ドル安に動く市場を強くけん制した。これに先立ち、菅首相は静養先の軽井沢から仙谷由人官房長官に「為替の動きが急すぎる」と懸念を伝達。さらに、玉木林太郎財務官は日銀を訪れ、中曽宏理事(国際担当)と、これ見よがしに対応策を協議した。
白川日銀総裁も同日夕「円高の日本経済への影響を注視する」との談話を発表。市場に円高の行き過ぎを警告しようと、「政府・日銀一体」姿勢をアピールした。
外国為替市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)の追加緩和などを材料に11日、円相場が約15年ぶりの円高・ドル安水準となる1ドル=84円台を記録。米景気減速懸念の拡大を背景に「1ドル=80円突破もあり得る」と一段の円高観測も出ている。輸出企業の業績圧迫懸念が高まり、12日は日経平均株価が一時、年初来安値を更新。対応を迫られた政府・日銀はオールスターキャストで口先介入に打って出た形だ。
日銀は同日、大手銀行に為替取引の水準を問い合わせる「レートチェック」も実施。昨年11月のドバイ・ショック後の円高進行時以来で、市場に為替介入の可能性を意識させる狙いだった。
政府・日銀は04年3月までデフレ脱却を名目に円高是正の為替介入を繰り返してきたが、それ以降は封印。為替介入再開には、欧米などの理解が不可欠だが、米欧もドル安やユーロ安による輸出拡大で景気下支えを図ろうとする中、協調介入はおろか、日本単独での介入も困難なのが現実だ。
このため、今後の対応は、日銀の追加緩和策が焦点となる。ただ、日銀内には「景気が回復しているとの判断を維持しながら、追加緩和を行うのは理屈に合わない」と追加緩和への慎重論も根強い。また、仮に、新型オペ拡充や超低金利政策の長期化を約束するなど追加緩和策を講じても、金利低下余地は乏しく、円高に歯止めをかける効果は読み切れない。
12日の外為市場では「野田財務相が緊急会見を開く」との報道を受け、介入などへの警戒感から一時、ドルが買い戻される場面もあった。しかし、その後、対応が具体策に踏み込まない口先だけだと分かると、市場の警戒感は雲散霧消した。政府・日銀の手詰まりぶりが一段の円高を誘発しかねない状況だ。