2010年8月12日 2時0分 更新:8月12日 10時57分
猿人が石器で傷をつけたとみられる340万年前の動物の骨の化石が、エチオピアで出土した。人類による石器の使用開始が80万~90万年早まる可能性があるという。米独の研究チームが12日付の英科学誌ネイチャーに発表した。【斎藤広子】
化石は、エチオピア北東部のディキカ地区で発掘された。ウシほどの大きさの草食獣のあばら骨と、ヤギの大きさの草食獣の大腿(だいたい)骨(いずれも長さ約10センチ)で、鋭利な石でつけたとみられる複数の傷や、たたき割ったような跡が残っていた。地層の年代測定の結果、342万~324万年前と分かった。
傷のある骨の化石は末期の猿人の化石とともに見つかった250万年前のものがこれまでの最古。前後して石器を本格的に使う初期の原人(ホモ属)が現れたとされる。今回の化石は猿人のみが生きていた時代で、猿人も石器を使った証拠とみなせるという。
発掘現場のすぐ近くでは、約330万年前の猿人の女児の化石が見つかっていることから、チームは猿人が石器を使って動物の死骸(しがい)から肉をはぎ取ったり、骨を砕いて骨髄を食べていたとみている。
国立科学博物館人類研究部の河野礼子研究員の話 「本格的な石器使用」がホモ属の特徴の一つと考えられてきたが、今回発見された骨の傷が本当に石器によるものなら、猿人も道具を使っていたことになる。猿人とホモ属の違いについて再考を促す発見だ。