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【ノーベル化学賞】「私は受験地獄の支持者だ」「若者よ、海外に出よ」根岸さんが会見
【ウェストラファイエット(米インディアナ州)=松尾理也】「たぶん、今日から人生が変わる」。ノーベル化学賞を受賞した米パデュー大特別教授の根岸英一氏(75)は6日、同大で会見に臨み、受賞の喜びを語った。
「前日、家内に『百に一つくらいの確率で(受賞が)あるかもしれないぞ)』と話していたんです」。そう述べた根岸氏は、「実は数年前に(ノーベル賞受賞者でもある)恩師のハーバード・ブラウン教授に『ノーベル賞に推薦しておいたぞ』と言われていた。候補に上っていることはわかっていたので、まったくの驚きだったというわけではない」と、内幕を明かした。
「ノーベル賞をとるという、50年来の夢が現実になった。これからの人生、喜びも責任も含めて、違ったものになると覚悟しています」
「頭脳流出組」の先駆けとして、米国に活躍の場を求めた根岸氏。喜びにまじって、祖国日本への思いがところどころに顔をのぞかせた。会見の冒頭。「私は日本の(悪名高い)受験地獄の支持者だ」。理由は、高度な研究になればなるほど、「基本が大事になるから」。それをたたきこんでくれたのが、日本の教育だった、というわけだ。
だが、日本に対しては賛美だけではない。日本を飛び出すことになったきっかけは、フルブライト留学制度を利用した米ペンシルベニア大への留学だったが、「いざ博士号を取得して日本に帰ってみると、日本には私を受け入れる余地はまったくなかった」と、日本の高等教育の閉鎖性を暗に批判した。
「日本はもっとノーベル賞をとっていい」。そう考えている根岸氏は、日本の若者たちの「科学離れ」にも強い危機感を抱いている。最近、日本からの優秀な留学生をパデュー大でみかけることがめっきり少なくなったという。
「日本はすごく居心地がいい社会なんでしょうけれど、若者よ、海外に出よ、と言いたい。たとえ海外で成功しなくとも、一定期間、日本を外側からみるという体験は、何にもまして重要なはず」と、奮起を促した。