インフレ・ターゲット(4):約束だけならサルでも出来る
さて、前回、いわゆる「本家の」インフレターゲット(イギリス他で採用されてたり、アメリカで採用すべきかどうかが議論されていたりするあれである)は日本では使用不能である、と書いた。そして、「今」金融政策が出来ないのだから、代わりに「将来の」金融政策(利下げ)を約束することで、期待インフレ率上昇→今のインフレ率回復(景気回復!)を狙うという「もうひとつの」インフレターゲットがあるということも説明した。
今回はこの「もうひとつの」インフレターゲットについて少し詳しく説明したい。これについての理解がないと、「日銀が今までやってきた政策(量的緩和)が正しかったのかどうか」を判断できない。そうなると、量的緩和解除が正しかったのかどうかも判断できなくなってしまう。そんなわけで、当初はこのエントリーの前に速報的に量的緩和解除関連のエントリーを書こうと思っていたのだが、まずこのエントリーを先に書き上げてしまうことにした。今回の量的緩和解除ネタは極力数日中に書くつもりなので、それでお許し願いたい。
リフレターゲットとは何か(クルーグマン・モデル)
さて、もうひとつの、と何度もタイプするのもいい加減疲れたので、以下ではこの「もうひとつの」ターゲットのことをリフレターゲットと呼ぶことにしたい(日本でしか使わないので和式インタゲという案もあったのだが、臭そうなので熟慮の末に没とした)。インフレターゲットはインフレ抑制のためのものなので、その逆、ということで。ただし、筆者の適当なネーミングで、このブログ以外では通用しないので注意(注1)。
このリフレターゲットの議論で中心となっているのがクルーグマンのモデルだ。筆者が昔何度か紹介したスヴェンソンの論文はこのクルーグマンのモデルの反論として書かれた物だし(もちろん、反論のためだけでは無いだろうが)、エガートソン・ウッドフォードのモデルはクルーグマンモデルの発展形。リフレターゲットの議論はクルーグマンの主張抜きには成り立たないのだ。そこで、以下で簡単にクルーグマンの主張を説明したい。
まず、モデルが想定する状況を整理しておこう。不景気でデフレが続いている。金融政策でなんとかデフレから脱出したいのだが、金利がゼロになってしまってこれ以上利下げが出来ない。この状況ではいくら量的緩和をやってもインフレは起こらない。こんな状況で中央銀行はどうすればいいんでしょうね、というのが問題だ。
*脱線するが、この説明でクルーグマンは「<今>量的緩和することに意味は全く無い」と断言していることに注意して欲しい。なぜか昔クルーグマンの名前を持ち出して量的緩和を主張する人が結構いたような気がするのだが、それは多くの場合勘違いである(注2)。
こんな状況下でクルーグマンが提案したのが、中央銀行が民間に「今は何も出来ないけど、放っといてもいつか景気が回復して金利がゼロで無くなる日が来る。だから、そのときに必要の無い利下げをやってインフレを起こすよ。」と約束すべきだ、というものだ。もしこの約束を民間が信じるなら、将来のインフレを予想した民間は期待インフレ率を引き上げる。そして、期待インフレ率の上昇は今の「実際の」インフレ率の上昇に繋がり、見事デフレから脱出できるはず、というわけだ(注3)。
約束だけならサルでも出来る
クルーグマンモデルの問題点は、「日銀が将来(不要な)利下げをしてインフレを起こします」と宣言したとき、民間が無条件でそれを信じると仮定されている点にある。実のところ、これはかなり都合のいい仮定である。別に金融政策に限らず、約束するのは簡単でもそれを信じてもらうことは百倍難しい。このエントリーなどで筆者が繰り返し書いてきた通り。
そして、民間の側には日銀の約束を信じる理由がない。なにしろ、今日銀が約束した「将来の高いインフレ率」は日銀が適正だと信じている水準よりも高いのだ。いざその「将来」が来たところで、日銀には積極的に約束を果たす動機は全く無い。むしろ、とりあえず今約束だけしておいて、民間が信じたところで(期待インフレ率上昇→デフレ脱出)約束を反故にするのが一番いいということになる。
そして、民間は当然のことながらこんな日銀の約束を信じない。信じられない約束が期待インフレ率に影響を与えることも無い。結局、この日銀の空手形は完全に不発に終わることになる。ちなみに、クルーグマン自身も当然そのことは認識しており、論文では民間が日銀を信じない可能性(=日銀がコミットメントできない)についても何度か言及されている。ただ、筆者の知る限りこの部分の記述は都合よく、かつ丁重に無視されることが多かったように思うが。
このクルーグマンのスタンスは、第2、3回で説明したインフレターゲットの考え方とまるで逆になっていることに注意していただきたい。インフレターゲットは民間が中央銀行に対して疑心暗鬼になるような状況を想定して、それにどう対処するかを考えたものだ。それに対して、クルーグマンのリフレターゲットは民間が中央銀行の約束を全面的に信じることを前提にして議論が組み立てられている。筆者が第1回で2つのインフレターゲットを分けて考えなければならない、と書いたのはそういうことだ。意地の悪い言い方をするなら、インフレターゲットとリフレターゲットを両方支持するのは論理的に矛盾している、とも言える。
日銀の「信頼性」を高めることは出来るのか?
おそらく、ここまで読み進まれた読者の中には、「だったら日銀が約束を守らざるを得ないような仕組みを作ればいいじゃん」と思った方もおられるだろう。筆者自身も第2回でそう書いているし。しかし、結論から書くと、このリフレターゲットを日銀に強制する仕組みを作るのは恐らく非常に難しい。
手っ取り早い方法は「将来日銀が約束を破って(過剰な)インフレを起こすことを拒んだら、その分処罰を加えればよい」というものだ。処罰は日銀総裁をクビにするとか、罰金を取るとか、甘っちょろいところだと国会に呼んで吊るし上げるとか、まぁ色々ある。だが、恐らくこれは現実的には極めて実行困難だ。
そもそも、日銀が「過剰なインフレを嫌う」のはかなり心理的な要素が大きい。その心理的な抵抗を罰金で押さえつけるとして、一体どの程度の罰金が有効なのかを判断するのは不可能に近い(注4)。そもそも、人によって有効な罰金の額も全く違うだろう。総裁をクビにする、というのも同様で、クビになることのコストとインフレを嫌う心理的なコストなど、判断できるのは当の本人だけだ。
だったら、誰でも約束を守りたくなるくらい罰則を厳しくすればいい、と思う人もいるかもしれない。まぁ、ターゲットを守れなければ打ち首、だったら皆必死で約束を守ろうとするだろう。ただし、処罰が厳しくなると今度は総裁を引き受ける人間がいなくなる。それなりに有能な人間を雇うことが出来、その人間に約束を守らせることが出来るような絶妙な処罰メカニズムが存在する可能性はかなり低い。だからこそ、インフレターゲットの処罰メカニズムの大家であるカール・ウォルシュ(カリフォルニア大教授)自身が、処罰メカニズムは”useful fiction”に過ぎないと書いているのだ。
では、間接的に日銀の評判に頼る方法はどうだろうか。つまり、「もし日銀が約束を反故にしたら、その後民間は日銀の約束を信用しなくなる。それを恐れて日銀は約束を守る」という考え方だ。この評判メカニズムはインフレターゲットには適用可能だが、リフレターゲットには無理だ。なぜなら、リフレターゲットの約束を破っても「その後」などは無いからだ。
過剰なインフレを起こすという約束を反故にされた民間は怒るだろう。「もし日銀がまた『今度こそインフレを起こします』と言ってきても、2度と信じてやるものか」と。しかし、世界的に見て日本のようなケースは特異だ。そうそう頻繁に起こるものではない。むしろ、この裏切りは日銀の強いインフレ抑制の意思の表れであり、日銀のインフレターゲットへの信頼を高める結果になる可能性のほうが高い。そうなれば、日銀は自らの物価の番人としての評判を高めるために、リフレターゲットの約束を反故にすることになる。
最後に、一番現実味があるのが「日銀総裁をインフレOKな人間にすげ替えてしまう」こと。例えば、今日銀は「日本のインフレ率は1%が適正」と信じていたとする。彼らが「将来3%までインフレ率を高めます」と言ったところで、その約束には全く信頼性が無い。しかし、ここで「インフレ率は3%くらいが適正だ!」と信じる総裁が着任したら、日銀は放っておいても嬉々として3%のインフレ率を達成しようとするはずだ。これならば日銀の約束は民間に受け入れられる。
この方法の問題は、候補者が信じる「適正インフレ率」は本人にしか分からないということ。福井総裁にしたって当初はこれほどのインフレ馬鹿(第1回参照)だとは思われていなかったわけだし。また、福井総裁の任期は2008年まであるので、この方法を使うにはそれまで待たなければならない。とっととクビにしてしまえばいい?これは逆効果だ。クビにしてしまえば、「民間が日銀の約束を信じて期待インフレ率を上昇させ、デフレから脱出したところでもう一度総裁をクビにし、またインフレ馬鹿な総裁を据えて約束を反故にするかも」という疑念を呼ぶからだ。そんなわけで、この方法も当面は使用不能だ。
こう考えると、リフレターゲットの実効性はかなり低いと言わざるを得ない。それに対してスヴェンソンらが提案した方法については、次回。
本日のまとめ
リフレターゲットは日銀の「将来の金融緩和」の約束を信じてもらえなければ無効になる。
リフレターゲットで、「この約束を民間が信じる」とあらかじめ仮定されている点が、「民間は疑心暗鬼になる」と仮定するインフレターゲットと決定的に違う点。
「将来の金融緩和」の約束を信じてもらうために、「約束を破ったらクビ」といった処罰を課す手はある。しかし、これらの強制方法はどれも現実的ではない。
注1:念のためと思って検索したら何件か引っかかった。ただ、ざっと眺めるとこちらのリフレターゲットは「デフレバイアス」の存在を仮定し、動学的不整合性の解消という意味で本質的にインフレターゲットと同じ構造を前提にしているようで、ここでの定義とは全く異なるので注意。デフレバイアスは常識的には存在を仮定しづらいことは前回の最後で述べた(つまり、そこに動学的不整合性(疑心暗鬼)は発生しない)。
また、リフレターゲットで念頭においているのはクルーグマンやエガートソン=ウッドフォードのモデルである。正直スヴェンソンやバーナンキの主張は本質的なところでクルーグマンのモデルとはだいぶ異なるので、あまり同じカテゴリーに置きたくない。
注2:思うに、クルーグマンの「今マネーサプライを増やすのは無意味だが、均衡マネーサプライを増やすことは必要である」という主張が誤解を招いたのだろう。均衡マネーサプライというのはある意味概念上の存在であって、マネーサプライ(以下MS)の増加が均衡MSの増加かどうかを判断するには「MSが将来にわたってずっと高いままである」ことを確認しなければならない。つまり、将来MSが減ってしまったらそれは均衡MSの増加ではなかった、と判断されるわけだ。よって、均衡MSを増やすこととは「将来MSを増やすと約束し、それが信じられること」と同義になる。後は本文の説明と同じだ。
注3:つまり、「(クルーグマンの意味での)リフレターゲット政策を採用しなければ、日本経済はデフレから脱出できない」という議論は矛盾している。クルーグマンの議論は「ほっぽらかしておいても日本経済はいつか健全な状態に戻るさ」という前提で成立しているので(この辺りは1年以上前にコメント欄で色々と教えていただいた)。専門用語を使えば、均衡実質金利がマイナスに落ち込んでいるのはあくまでも一時的な現象であり、それがいつかプラスに回復することを仮定した政策なわけだ。
注4:要するに、utility unitとmoney unitは次元が違うので大小を比較しようがないという話である。
Comments
なるほど。結局、リフレターゲットの最大の問題点というのは、日銀が「インフレバカ」としての名声を確立してしまっていることなわけですね。
リフレ(インフレにしても同じ)ターゲットの動作原理はコミット戦略、つまり「信用」なわけですから、「将来裏切るに違いない」と相手に確信させる現在までの日銀では、リフレターゲットが成立しない、ということは理解できます。
結局、速見の後の総裁に半インタゲ論者であった福井を選んだ時点で、リフレターゲットの可能性はまったく無くなったわけですね。
逆に言うと、あの時元々インタゲ派であった対立候補(名前はもう失念しました)を選んだ場合はうまくいく可能性はあったのでしょうか?
Posted by: 鳳天 | March 13, 2006 at 12:56 AM
上記書き込みでの、「半インタゲ論者」は「反インタゲ論者」の誤りです。
どうも失礼しました。
Posted by: 鳳天 | March 13, 2006 at 12:57 AM
鳳天さん、コメントありがとうございます。
今回は体調がイマイチだったこともあって「分かりやすく書く」ことに神経が届かず、結構読みにくかったのではないかと思います。そんな長文をご覧頂き恐縮です。
まさにおっしゃるとおりで、そのわりには日銀が(ネガティブな意味で)高い信頼を得ていることこそが致命的な問題であることを指摘している人はあまりいないような気がします。
ちなみに、もしインフレOKな総裁が着任した場合、リフレターゲットを採用せずとも期待インフレ率は上昇するため、やっぱりリフレターゲットは不要になる可能性が大です(理論的にも、インフレターゲットとインフレファイター型総裁の採用は同じ効果を持つことが確かめられています)。
インフレターゲット支持の候補は私も全く記憶に無いのですが、もし本当の意味でのインフレターゲット支持であればリフレターゲットにはコミットできない可能性が大ではないかと思います。もちろん、当のご本人がインフレターゲットの理屈を理解していれば、の話ですが・・・。
Posted by: 馬車馬 | March 13, 2006 at 08:59 AM
はじめまして。
50年前の頭しかない老人ですw。馬車馬さんの主張わかりやんしたです。
元々日銀総裁(政策審議委員も含む)は公募でもなく、日銀内部からの推薦のようですので、「インフレターゲット支持の候補」は、戦後過去、候補にすら選ばれたことがないと思います。
それと、インフレOKな総裁が選ばれた場合、インフレターゲット政策をとらずとも、期待インフレ率は上昇するでしょうね。この実験がまさにいまの米国のFRBと米国経済ではないのでしょうか。
Posted by: 胡桃 | March 15, 2006 at 08:29 PM
胡桃さん、コメントありがとうございます。
すみません、50年云々という表現に他意はありません。ご気分を害されたのであればお詫びします。
胡桃さんのご指摘はごもっともだと思いますが、実はそれはより深刻な事態を示唆しているとも言えると思います。つまり、エントリーで書いた「インフレ馬鹿」なのは総裁ではなく、日銀という組織それ自体である、という理解につながるからです。この場合、日銀をインフレ馬鹿から改心させるのは極めて困難になると思います。総裁の首を挿げ替えても意味がない、ということになりますので。
とりあえず、企画局あたりの頭がそれなりに柔軟であることを期待したいところですが・・・。
Posted by: 馬車馬 | March 17, 2006 at 02:27 AM
金融政策でインフレ率や名目金利を動かすことが可能だ、と
思うのですが、それに対して
金融政策で「物価連動国債の(実質)利率」を動かせるので
しょうか?
Posted by: 質問 | August 14, 2006 at 03:44 PM
コメントありがとうございます。リプライが遅れてごめんなさい。
物価連動債の実質利回はいわゆる実質金利そのものですから、金融政策によって短期的にはコントロール可能です。入門理論に従うなら、物価は短期的には変化しないため、マネーサプライの変化は名目金利と実質金利を同時に変化させることになります。長期的には、物価が完全に伸縮的になるため、マネーサプライをどう変化させてもインフレ率が変化するばかりで、名目金利は変化しても実質金利は均衡金利水準で不変となるわけです。
Posted by: 馬車馬 | August 25, 2006 at 06:55 AM
馬車馬さん
ご回答、ありがとうございます。
インフレ率は短期的には変動しない、というのは
金利市場に比べ財市場の調整が遅い、ということ
ですね。
短期の利回りに関しては金融政策が影響を与える。
その「短期」というのは「財市場の調整期間」で
ある、ということですね。
Posted by: 糞場 | August 31, 2006 at 10:44 PM
すみません、続きです。
短期的な実質金利を下げるために低金利政策を続ける
(だろうという予想)があると、長期金利とインフレ
率が下がる、ということになって所謂、「(金融政策
のみの)リフレ政策」に矛盾があるような気がします。
Posted by: 馬糞 | August 31, 2006 at 10:53 PM
エントリーと少しずれますけれど
「物価水準の財政理論」なんて、
どうなんでしょう
政府の貨幣価値コミットメントと金融政策の限界*
-金本位制から現代まで
http://www.fri.fujitsu.com/jp/modules/report/list_04.php?list_id=3336
http://www.fri.fujitsu.com/jp/modules/COMMON_LIST_VIEW/uploads/3336/review03.pdf
新しい物価理論
―物価水準の財政理論と金融政策の役割
出版社: 岩波書店 (2004/02)
ASIN: 4000097288
Posted by: 馬糞 | September 01, 2006 at 01:54 AM
馬糞さん、コメントありがとうございます。
価格の短期的な硬直性をどう説明するかは今でもミステリーな部分があるのだと思います。最近の「お約束」は独占的競争を仮定するやりかたでしょうか←よく分かってませんが。
2つ目のコメントは良く分かりませんでした。低金利政策を続けるとインフレ率が下がるというのはなぜですか?
FTPLについては興味を持ってはいるのですが、サーベイペーパーをダウンロードしたら40ページもあったので放置中です。まぁ、また不景気になったら考えればいいかな、と(笑)。
Posted by: 馬車馬 | September 09, 2006 at 10:43 AM
馬車馬さん
ご返答、ありがとうございます
>2つ目のコメントは良く分かりませんでした。
短期金利が低落傾向が続くと市場が予想する
⇒長期金利が低下する⇒期待インフレ率が低下する
2番目の矢印では
『長期金利-期待インフレ率』は金融政策に依存は
しない
と考えています。
>長期的には、物価が完全に伸縮的になるため、
>マネーサプライをどう変化させてもインフレ
>率が変化するばかりで、名目金利は変化しても
>実質金利は均衡金利水準で不変となるわけです。
あるいは、
短期金利が実際に低い水準で『長期的に』推移する
⇒『長期的には』インフレ率は低く推移する。
Posted by: 馬糞 | September 11, 2006 at 08:50 PM
馬糞さん、コメントありがとうございます。
むむむ、それはつまりneutrality of moneyが成立している状況を議論しているということですか?それだとそもそも金融政策を論じる意味がなくなってしまいそうな気がします。
後半部ですが、中央銀行が短期金利を長期的に低めの水準に誘導する、ということであるならば、それは均衡マネーサプライを増加させることにコミットするということであり、それによって均衡インフレ率はむしろあがるように思います。
Posted by: 馬車馬 | September 20, 2006 at 09:55 PM
馬車馬さま
レス、どうもありがとうございます。
>neutrality of moneyが成立している
そうですね、長期の問題を考えているので。
長期の物価水準を問題にすると課税や財出などの
財政が問題であり、狭義の金融政策は関係ないの
では?、ということであります。とは言え、国債
買いオペによって将来の増税がないことのアナウ
ンス効果という面があるので金融政策が全く関係
ないこともないでしょう
後半部ですが、短期金利が『長期』的に低く推移
すると、(高く推移したときと比較して)マネー
サプライは減るのではないでしょうか。短期金利
の低下によって一時的にマネーサプライが伸びる
のはその低下にサプライズがあることが必要、と
思います
Posted by: 馬糞 | October 23, 2006 at 05:05 AM
すみません。少し補足をば
日本銀行が国債買いオペをして(償還まで持ち越すと)
国家債務が減るので、将来の減税や財出のアナウンスに
なるので物価が上がるという期待が産まれるので、金融
政策も長期の期待形成に無関係ではないという考えです
短期金利を低く誘導する、というときの誘導の意味が、
もし「市場が予想していたものよりも低く誘導する」と
いう意味でしたらサプライズですね。私はサプライズの
無い金融政策を主に念頭においてますので、そのような
状況は考えていません。サプライズが無いのがインフレ
ターゲット?
Posted by: 馬糞 | October 23, 2006 at 05:24 AM
馬糞さん、リプライが遅れてごめんなさい。
価格の中立性が成立してしまうということはGDPが潜在GDP(NAIRU的な)に一致してしまうということですから、財政政策もGDPの内訳を変化させるだけで景気対策としての意味がなくなってしまうように思います。
後半部のメカニズムはどういったものでしょうか?金利が低くなるのは貨幣供給が増えたときか、逆に貨幣需要が減ったときです。実現値としてのマネーサプライが増えるか減るかはこのどちらが起こったかに依存しますので、これだけだと議論がしづらいように思います。
なお、国債を買い切れば減税期待、というのは、将来にわたって購入国債をrolloverし続けるという期待が前提として存在せねばならないため、単純に「国債を買えば期待が変わる」という議論はしづらいように思います(そういう議論は多かったと記憶していますが)。インフレターゲットはサプライズを抑止する、というか、サプライズインフレを予想する消費者の疑心暗鬼を抑止するためにあるものです。その意味では馬糞さんの理解でも特に問題ないように思います。
Posted by: 馬車馬 | October 30, 2006 at 07:36 AM
馬車馬さん、どうもありがとうございます。
>金利が低くなるのは貨幣供給が増えたときか、
>逆に貨幣需要が減ったときです。
短期的な変動はそうかと思うのですが、
短期金利の長期的な水準はそれとは別の
メカニズムではないでしょうか。
思考実験としてマネーサプライが増え続けたと
しますね。そうすると、市場に流通する現在の
名目貨幣量と将来の名目貨幣量では、将来での
貨幣量が多いので、インフレ率の長期的水準が
高くなりますので、金利の長期的な水準も高く
なる、と思います。
短期的な変動は今さっきマネーサプライが瞬間
的に増えたので、次はマネーサプライが減って
長期的にはマネーサプライがバランスする、と
いうメカニズムと整合的になっているだけだと
思います。
短期金利が長期的に低い水準で推移すると貨幣
供給の長期的水準もインフレ率の長期的水準も
低くなるのではないでしょうか。
>価格の中立性が成立してしまうということは
>GDPが潜在GDP(NAIRU的な)に一致してしま
>うということですから、財政政策もGDPの内訳
>を変化させるだけで景気対策としての意味が
>なくなってしまうように思います。
まず、長期では中立性が成り立つのでインフレ
率の長期的水準に対する期待は、それを前提に
するのが合理的ではないでしょうか。
『(中立性を前提にした)長期の期待』が短期
的景況に影響を及ぼす、ということだと考えて
います。
Posted by: 馬糞 | November 08, 2006 at 09:33 PM
>インフレ率の長期的水準は長期的な現象であるため、それを
>予想した「長期の期待インフレ率」は、主として長期的視点
>から求められるものである
http://www.bewaad.com/20061115.html#c02
>長期的展望が変わればそれに応じて長期期待は
>すぐに反応する。一方、調節が遅いものとして
>賃金などがある訳です。
>ところが、もし
>
>実質金利+期待インフレ率 < 0
>
>のとき流動性トラップで、これを解消しようと
>すれば期待インフレ率を上げる、つまり長期の
>世界でのインフレ率を上げればよい。これには
>例えば端的にはバーナンキ背理におけるような
>状況(シニョレッジ使っちゃうよ♪www)を
>政府が市場に対してコミットできればいいのだ。
>これが『本流リフレ派』ではないかと思います。
http://www.bewaad.com/20061115.html#c12
>一方で、流動性トラップを抜け出した状態では名目金利は
>正であるため、将来において流動性トラップから抜けると
>いう期待は、必然的に将来において名目金利が正になると
>いう期待を伴う。逆に言えば、将来においてもゼロ金利が
>続くと期待することは、必然的に流動性トラップから抜け
>ないと期待することである。(日本は、これに近い状態を
>続けているように見える。)
>であるならば、本流リフレ派の主張の通り、トラップから
>抜けるには、シニョレッジが使われる(減税?財出?)と
>いう期待を市場が抱く必要性がある。もちろん、あまりに
>多く使われると期待されると、今度は高インフレになって
>しまうけれど。本流リフレ派の認識はFTPLと親和的である。
http://www.bewaad.com/20061115.html#c17
Posted by: あほなコピペ | November 18, 2006 at 02:20 PM
政府インフレ率?
http://blogs.yahoo.co.jp/fumadayo/8836336.html
Posted by: フマ | December 16, 2006 at 12:27 AM
馬糞 さん、コメントが遅れがちで申し訳ありません。
均衡マネーサプライが増えたときに均衡インフレ率および均衡名目金利が上昇する、というのはおっしゃるとおりだと思います。
ただし、
>短期的な変動は今さっきマネーサプライが瞬間的に増えたので、次はマネーサプライが減って長期的にはマネーサプライがバランスする、というメカニズムと整合的になっているだけ
という点がやはりよく分かりません。均衡名目マネーサプライが増加し続けるという政策が突然発表されたとき、短期的にはインフレ率が上昇しませんので、名目金利と実質金利が両方低下します。そして物価が次第に上昇するにつれ、実質マネーサプライは以前の数値に復帰し(MとPは同率で増加し続け、実質M/Pは変化しない)、実質金利もまた元の水準まで上昇します。ただし、名目マネーサプライは継続的に上昇することが仮定されているので、期待インフレ率も同率となり、名目金利は以前よりも高い水準で安定することになります。
出来れば、名目と実質の使い分けを明確にしていただけると助かります。その辺りで齟齬が生じやすいように思いますので。
ただ、この辺りのダイナミックな期待の変化を考えるのであれば、real rigidityあたりの話を一度ちゃんと勉強してしまったほうが早いかもしれません。私も随分前に勉強したきりなのであまり覚えていないのですが。
Posted by: 馬車馬 | December 18, 2006 at 06:59 AM
お返事、どうもありがとうございます。
馬車馬さんがお答えくださったケースでは、
>期待インフレ率も同率となり、名目金利は以前よりも高い水準で
>安定することになります。
これは理解しました。一時的には、短期名目金利と短期実質金利は
低下します。長期名目金利は上がりますし、長期実質金利はあまり
変わらない。
私の考えたケースは、名目マネーサプライの時間平均的な増加率は
変わらずに、日銀が買いオペをしたので一時的に増加率が上がった。
また、いずれ反対売買で売りオペをするときには一時的に増加率が
下がるというようなケースです。このケースでは、短期金利が一時
的に下がり、また元に戻る。逆に売りオペすると、短期金利が一時
的に上がり、また元に戻る。
多分、私が一番よく分からないのは、「名目マネーサプライの時間
平均的な増加率の決まるメカニズム」です。
Posted by: 馬糞 | December 19, 2006 at 12:02 AM
馬車馬さんが考えたケースこそが、「デフレ→インフレ」の経路
なので「ゼロ金利政策を続ける」ことはこれに全く反する訳です
「名目長期金利(インフレ率)を上げます。ですんで、一時的に
短期金利は下がります」という政策が「デフレ→インフレ政策」
ずーと名目短期金利が低いこと=デフレ政策です
Posted by: フマ | December 20, 2006 at 09:07 AM
市場が「名目短期金利が下がり、名目長期金利が上がる」という
形で反応すれば、市場は「デフレ→インフレ政策」と受け取った。
つまり、期待インフレ率が上がったということです。
市場が「名目短期金利が下がり、名目長期金利そのまま」という
形で反応すれば、市場は「マネーサプライの増加率の上昇は一時
的なものであり、デフレは継続する」と受け取ったということに
なります。つまり、期待インフレ率は低いままであるということ。
期待インフレ率増加政策=名目長期金利増加政策ということです。
Posted by: フマ | December 20, 2006 at 09:21 AM
連投失礼します
1.流動性の罠経済では:
期待インフレ率が上昇すると、名目長期金利が少し上昇する。
この差の分だけ、実質長期金利が低下する
2.通常の経済では:
期待インフレ率が上昇すると、名目長期金利もその分、上昇。
実質長期金利は変わらない
実際の日本経済はこれらの中間ですが、いずれにしても期待
インフレ率の上昇は名目長期金利の上昇として現れる。
Posted by: フマ | December 20, 2006 at 09:44 AM
Help the homeless down the street and persuade them to look for work
Posted by: antique auto glass | August 27, 2007 at 04:59 AM