2010年10月7日0時14分
日本は9月に2兆1千億円の円売り介入を実施した。「日本経済は1ドル=85円の円高には耐えられない」との政府、財務省の認識が背景にある。
しかし、この為替介入も菅政権の続投が決まった9月15日に東京やロンドンで行ったと見られる以後、ドル円が介入前の円高水準に迫ってもこれを放置した。
どうやら、この介入でドルを押し上げている間に、輸出企業は期末のドル売りを終了させたようで、その後までドルを押し上げておく必要は無かったようだ。つまり、約2兆円の介入資金は、輸出企業への円高補助金として使われたことになる。
ところでこのお金、最終的には外国為替特別会計が外国為替証券を発行してドルを買い取る。いわば国民からの借金、そして最後は税金で賄うものだ。結果的に一部の輸出企業のために回したことになる。日本経済が輸出依存で、円高で輸出が出来なくなると、経済全体が打撃を受けるから、との説明だが、これが怪しい。
9月29日発表の日銀「短観」によると、製造業の業況判断は、円高が進んでいた9月の調査時点で予想以上の改善を示した。9月期の収益が想定より上方修正されたためだが、その原因は国内要因でなく、輸出の大幅上方修正による。そして下期の売上高予想も、国内の小幅下方修正に対して、輸出は1.9%の上方修正だ。
政府、財務省の認識と違い、輸出企業は85円の円高でも予想以上に輸出を大きく伸ばしている。「円高危機」は政府の認識違いか、財務省が財政(利払い)負担軽減のために日銀に量的緩和をさせるための方便か。検察、外交のみならず、政府、官僚の信頼が危機に瀕(ひん)している。(千)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。