2010年10月7日10時1分
電話で会談する鈴木章さん=6日午後9時13分、札幌市北区の北海道大、杉本康弘撮影
電話で会談する益川敏英さん=6日午後9時6分、名古屋市昭和区、小川智撮影
電話で話す立花隆さん=6日午後9時18分、東京都中央区、竹谷俊之撮影
■「本が一生を決める大きなものに」鈴木・北大名誉教授
――今回は根岸英一、リチャード・ヘック両氏と共同受賞ですが、皆さんはライバル関係にあるのでしょうか。
鈴木 そんなことはないですよ。私は2人とも昔からよく知っています。競争するような関係ではなく、少し違った立場です。3人一緒に受賞できたことは、うれしいことだと思っています。
――みなさんの研究は、私たちの生活にかかわりのあることだと思いますが、具体的な成果はどんなことですか。
鈴木 他の方のことは存じ上げておりませんが、私たちのクロスカップリングは、ホウ素化合物を使った技術なんです。ここが、他の人たちと違うところです。有機化合物を使ったクロスカップリングは、利用される範囲が非常に広い、毒性がない、反応が温和に進む、など、いろんな長所があります。私たちがやったホウ素化合物を使ったものは、医薬とか農薬とか、大学の特殊な化合物を作るなど、用途は非常に広いと思います。
――益川さんが物理に進まれたのは、お父さんの影響と聞きましたが、鈴木さんはどうでしょうか。
鈴木 私は子どものころ、数学が好きで、数学を勉強したいと思っていました。ただ、北海道大学の教養部に入った時にハーバード大学の先生が書いた有機化学の本を読んで、面白いと思ったのがきっかけです。化学には物理化学のように数学に近い分野もあります。有機化学は数学に一番遠いところにあると思いますが、(進路が)急に変わってしまいました。この教科書と、私の恩師、米パデュー大のブラウン先生の本を読んだことが、私の一生を決める大きなものになりました。
――益川さんは、子どもの頃の影響が大きいですか。
益川 自分が科学に関心を持ってどう活躍したいか、あこがれからロマンに至るプロセスで、そのカギを開けてくれたのは、私の場合はおやじでした。